農業を学ぶ高校生たちが麦わらを使ったストローを作って、環境問題を考えるきっかけにしようと取り組んでいる。ストローは企業のカフェにも採用された。一人一人が実践できるSDGsだ。
育てた大麦から手作りストロー
静岡市葵区にある県立静岡農業高校。放課後、生徒が集まってある作業に取り組んでいた。

生徒:
節と節の間で切って、むいてストローの形を作っています

ストローの材料は六条大麦。2021年6月に刈った麦わらを使っている。麦わらのまっすぐな部分を利用し、特別な加工をせず簡単に作ることができる自然由来の次世代ストローだ。
切ったストローは熱湯で煮沸消毒し、乾燥させれば完成。

生徒:
煮沸乾燥前と後では全然色が違います。(加工後は)つやがあります
子供たちに環境保護を教える
この活動に取り組んでいるのは、高校の有志のグループ「いきものがかり」。子供たちの農業への関心を高めようと、科学館や児童クラブで教育活動をしている。

この麦わらストローは、生徒たちが海洋プラスチックごみの問題を考えるための教材として作ったものだ。地域や企業も巻き込んだ活動にしようと、2021年夏から「シズオカストロープロジェクト」として動き始めた。
2021年11月下旬、「いきものがかり」は静岡県が開催した地域活性化のイベントに参加した。

新型コロナウイルスの影響で約1年間、課外活動が制限されていた生徒たち。久しぶりのイベントに熱が入る。
生徒:
みんながよく使っているストロー、何からできてるかな?
子供:
プラスチック
生徒:
海でプラスチックごみが問題になっているのは知ってるかな?
子供:
エサだと間違えて食べて死んじゃう

この日のワークショップで生徒たちは子供たちと一緒に麦わらストローを作り、絵や写真を見せながらプラスチックごみの問題について説明した。
生徒:
これを外すともう完成。あとは消毒するだけで終わり
子供:
えー!

用意したブースは、参加を希望する子供や保護者で大盛況。子供たちが書いたメッセージカードにも「海にゴミをすてない」「プラスチックゴミを海や自然にすてずにリサイクルにだす」と、うれしい言葉が並んだ。

いきものがかりリーダー・杉山らいさん:
知ってもらうことが一番大事だと思っているので。特に子供たちがすごく楽しそうにやってもらってる時が、わかってもらえてるなという感じがします

いきものがかり・青木萌々伽さん:
真剣そうに聞いていて、とてもうれしかったです。忙しいですけどたくさんの人に来てもらって活動を知ってもらえて、とてもうれしいです
企業のカフェテリアが麦わらストローを採用

さらにこの麦わらストローの取り組みは、地元の企業にも広がっている。
店員:
アイスコーヒーになります。麦わらのストローをどうぞ

静岡銀行は、2021年11月から社内でのSDGsの取り組みの一環として、カフェテリアでこのストローの使用を開始。冷たい飲み物を購入した社員に、麦わらストローを提供している。
また、企業として「いきものがかり」の活動を支えようとストロー製作費の支援も始めた。担当者は、高校生が身近にあるものでSDGsの行動を起こした点を高く評価している。

静岡銀行経営企画部・今井友紀子さん:
静岡農業高校の生徒が取り組んでいる農業という分野で、麦わらからストローを作るという発想がとても魅力的だなと感じました。この静岡ストロープロジェクト自体が大変魅力的な企画なので、いろいろな分野で広がっていけばいいなと思います
実際に麦わらストローを使った人は…。

ストローを使った人:
麦から作ったとかはわからないくらい、普通のストローみたいな感じで飲めました。自分も何かSDGsに取り組めてるんだという感覚になります
麦わらストローは1ダース100円で、イベントやカフェなどで販売されている。製作は障がい者の就労支援施設でも始まっていて、高校生の活動からさらに地域の取り組みへと広がりつつある。

環境問題について学び、考えるきっかけを与えてくれる麦わらストローのプロジェクト。高校生たちのこの活動がさらに広がっていくことが期待されている。
(テレビ静岡)