寒天と砂糖でつくる菓子の琥珀糖は、見た目の美しさから「食べる宝石」と呼ばれている。この琥珀糖の新商品を静岡・清水町の商業高校生が開発した。地元の商店に協力してもらい、商品企画・仕入れ・販売などを体験するビジネス実践学習の一環だ。高校生の取り組みを取材した。
商業高生がビジネス学ぶ“沼商屋”
高校生:
いらっしゃいませ、沼商屋(ヌマショップ)です。ところてん、あんみつ、プリンもあります。どうですか

11月中旬、清水町のショッピングモールで開かれた販売会。
運営しているのは、清水町にある沼津商業高校の生徒たちだ。
沼津商業高校では毎年、販売実習を通して実際の経営や商売を体感する「沼商屋(ヌマショップ)」を開催している。

地元の商店に協力してもらい、1店舗を生徒3~4人が担当。商品の仕入れから販売までを経験させてもらう。商品選びや仕入れ先との値段交渉、宣伝、販売価格の決定、売上管理まですべて高校生たちが行う。
さらに商品開発のノウハウも学べるようにと、毎年1店舗で新商品を開発している。
21回目となった2021年は清水町の町おこしを進める団体「清水町ゆうすい未来機構」などの協力のもと、総合ビジネス科経営コースの3年生35人が参加。地元の商店も16店が協力してくれた。
新商品を高校生のプレゼンで決定
清水町ゆうすい未来機構担当者:
どんな商品作るか、きょうここで決めていきたいと思います。(プレゼンテーション)頑張ってください
2021年度は、ところてんなどの製造や販売を行う地元の栗原商店で、食べる宝石と呼ばれて女性に人気の「琥珀糖」を使った新商品を開発することになった。
プレゼンテーションは8チームが行った。

Aチーム:
私たちが考案した商品は「氷彩花」です。サファイアのように美しい見た目にして、味は子供でも食べることができるラムネ味にしようと考えています
Bチーム:
私たちが提案する琥珀糖の商品名は「シュクルコロン」です。商品コンセプトは、「日頃から一所懸命に頑張っている自分への贈り物として、モチベーションをあげる」です

栗原商店で仕入れや販売を担当する生徒3人と栗原商店の社長との話し合いで、香水をイメージして宝石に見立てた琥珀糖に、6種類のフルーツの味や香りをつけた「シュクルコロン」を作ることに決定した。

栗原商店・栗原康浩社長:
企業として新商品を作るとなると、なかなかアイデアが浮かばないですけど、高校生の柔軟なアイデアは非常に参考になる
生徒も開発担当 試作品に意見ズバリ
沼商屋の開催1カ月前、生徒が試作品の確認を行った。

栗原社長:
シロップで色づけしたけど、どうしても均一には混ざらない。その方がいいのかもしれない
生徒:
その方がきれい
(Q.予想と比べてどう?)
生徒:
思ったよりデカイ

社長:
デカイ? 半分の大きさにする?
沼商屋では生徒は企業の手伝いではなく、開発者の一員だ。
新商品の開発イメージに合わせ、「宝石の原石のように、さらに小さな形にしたい」と、妥協せず試行錯誤を続けた。
宣伝は高校生が得意なSNSで
そして迎えた沼商屋、初日の朝。2日前に出来上がったばかりのシュクルコロンを大事そうに並べる。

生徒:
緊張しているけど、すべていい商品なので食べてもらいたい
別の生徒:
今回の売りはシュクルコロンなので、完売めざしてがんばります
集客のための準備も万端だ。商品の魅力が一目でわかる段ボールのポップは、感染防止のため大きな声での呼び込みが難しいとして今回から取り入れた。さらにSNSの活用にも力をいれた。

生徒:
沼商屋のインスタに載せてもらう写真を撮ってます。私たちと同じ年代層が、母親や祖父母を巻き込んで来てくれると嬉しいなと思います

いよいよ販売…売れ行きは?
先生:きょう1日がんばるぞ~
生徒:オー!
午前9時半のオープン直後から、沼商屋目当ての買い物客で大盛況。
シュクルコロンの仕入れ量は150個。栗原商店の名物のところてんやあんみつを求めて訪れた買い物客へ、開発したシュクルコロンをアピールする。
生徒:
自分たちで開発したんです。琥珀糖といって、外はカリっとして中は柔らかいです。砂糖でできていて、原料が粉寒天で

客:
(栗原商店は)寒天屋さんだもんね、おすすめの味はなんですか?
シュクルコロンは飛ぶように売れていった。

生徒:
シュクルコロン、完売でーす!
1日目の目標の60個は昼頃に完売。2日目はさらに好調で、1日目より多い90個を午前中に売り切った。
(Q.高校生の頑張りはどうですか?)
別の客:
毎回楽しみにしています
沼津商OBの客:
毎年来ていますが、今年の生徒も頑張っていていきいきしている。どれも買いたいと思い、たくさん買っちゃった

別の客:
一生懸命に声をかけて説明してくれて、とてもわかりやすくて、ついつい買ってしまいました
生徒:
最初は不安が多かったですけど、想像以上に早く売れて頑張って売ってよかった
別の生徒:
自分たちの商品みたいな感じがして、売るのに誠意が伝わったかな

ビジネスノウハウ以外の収穫も
2日間に渡った沼商屋(ヌマショップ)。生徒たちが沼商屋を通して得たのは、販売のノウハウだけではない。
生徒:
(地元の店でも)知らないお店も多くて、沼商屋になってから行って知ったお店もあった。魅力的なたくさんの店を知ることができてよかった

SNSの活用など高校生らしい販売戦略は、参加した地元企業にとっても新しい消費者とつながるきっかけになった。
栗原商店・栗原康浩社長:
うちの商品は年齢層が高いお客さんが多かったけど、今回をきっかけに若い年代にも知ってもらい食べてもらったらうれしい。地元の食材「伊豆の天草」で新商品を作ったので、高校生に地元の特産品を知ってもらったことも良かった

生徒にとっては地元の店を知るきかっけに、また商店にとっては若い世代にも販路を広げるきっかけになったようだ。

地元の商店と消費者をつなげる高校生の取り組み「沼商屋(ヌマショップ)」。
この経験は、将来に向けて大きな糧になったはずだ。
(テレビ静岡)