新潟・三条市が、ふるさと納税の寄付額を増やそうと新たに採用したのは、マーケティングのプロ。その手腕を取材した。

目標寄付額“25億円”へ…新部署を設立

2021年10月に開かれた「燕三条ものづくりメッセ」。
ものづくりが盛んな燕市と三条市を中心に、100以上の企業や団体が自慢の製品をアピールした。

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そのオープニングで、滝沢三条市長が話したのは…

三条市・滝沢亮市長:
新型コロナウイルスで、燕三条地域のものづくり企業の強さや柔軟性を、日本や世界に発信できた

“ものづくりの街”として切磋琢磨してきた燕市と三条市だが、三条市が燕市に大きく引き離されたものがある。
「49億と7億円」
これは2020年度に、燕市と三条市がそれぞれふるさと納税で集めた金額。

三条市・滝沢亮市長:
これまで、三条市はふるさと納税に力を入れていなかった。燕市は昔から着実に、堅実にされてきたと聞いているので、同じ土俵に上がれるくらいにはなりたい

燕市の寄付額の、7分の1にとどまる三条市。
この状況を打開しようと、2021年10月、特別な部署が立ち上げられた。
目指すは、ふるさと納税の寄付額“25億円”。

三条市CMO・澤正史さん:
(昨年度7億円の)3倍以上。(25億円に向けて)とにかく全力でやるしかない

この部署の司令塔・チーフマーケティングオフィサーに就任したのは、2021年まで外資系のインターネット関連企業で主にセールスを担当していた、東京都出身の澤正史さん(41)。

三条市が、ふるさと納税の寄付額を増やすため、民間のアイデアや経験を取り入れようと行った公募で、約300人の中から選ばれた。

三条市CMO・澤正史さん:
正直お金の面で言うと東京のほうがいいかなとは思うけど、(新型コロナ禍で)人とのつながりが希薄になったところで、地域に入り、人とつながりながら仕事をすることを面白く感じた

大切なのはスピード「どんどんやっていく」

三条市でアウトドア用品を生産・販売する企業との打ち合わせに出向いた澤さん。
2008年に始まったふるさと納税は、応援したい自治体に寄付することで税金が優遇される制度だが、多くの場合、納税する自治体選びは、お礼として贈られる“返礼品”が決め手となっている。

三条市CMO・澤正史さん:
“三条はアウトドア”というブランディングを、ふるさと納税で植えつける

返礼品でタッグを組む企業も、期待を寄せている。

キャプテンスタッグ・高波洋介さん:
おもしろい。三条市が盛り上がる話だし、うれしい

打ち合わせで、澤さんは返礼として扱う商品の数量をその場で決断。
スマートフォンで撮影した写真をすぐに転送し、部署内で情報を共有。情報の発信につなげる。

三条市CMO・澤正史さん:
スピードを大切に。とにかくやっていく

企業との打ち合わせに同行していた三条市の職員も、そのスピードを実感していた。

三条市 営業戦略室・森田誠さん:
「もうちょっと丁寧にやったほうがいいんじゃないの」と思うときもあるけど、結果終わってみると、1番早くて効率的な方法だったなということが結構ある。教えていただくというか、見て、盗んで、自分たちの仕事に生かしたい

この日、澤さんが市長に提出したのは、返礼品を受け取った人のリピート率を上げるために制作したカタログ。
このカタログも、澤さんが就任してわずか2カ月ほどで完成させた。

燕市の半分、それでも三条市にとっては3倍となる“25億円”という目標を掲げた滝沢三条市長。

三条市・滝沢亮市長:
ふるさと納税の収入を、市民の皆さまに還元するのが最終的な目的。燕市と差がついているというのは、市長として、市民の皆さまに申し訳ないなというところもある

“三条のファン”獲得して地域を潤す

2021年11月に開かれたイベントで、職人の技を見つめる澤さん。

三条市CMO・澤正史さん:
世界的に見ると、すごいことをしている職人が三条市に大勢いる

そこで澤さんが聞いていたのは、深刻な職人事情だった。

金属加工業・斉藤和也さん:
どんどん職人が少なくなってきた…

だからこそ、ふるさと納税を通した情報発信への期待は大きいものがある。

金属加工業・斉藤和也さん:
返礼品を充実させて、手にとってくれる人が多くなるということは、作り手も意識が高まる。新しい世代が出てくるまでにしっかりと伝えて、この地域を育てることにつなげる

東京から三条に移住して数カ月。時間が許せば、三条の街中を歩くという澤さん。
街の人と積極的に関わることで、街に眠る情報を拾い集めていた。

商店街で働く人:
澤さんは三条に来たヒーローのような感じ

そして2022年1月、澤さんのもとをたずねると…

三条市CMO・澤正史さん:
2021年4月~12月までで、13億2,000万円の寄付が集まった。昨年度の同時期と比べると2倍になった

2022年度こそ、目標の25億円を目指して…

三条市CMO・澤正史さん:
この地域をよくすること、三条市民にとっていい街にすることが、すごく大事だと思う

ふるさと納税で三条のファンを増やし、地域を潤す。
地域の未来に、前向きな気持ちが広がる。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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