熱唱するのは、91歳の女性。若い頃は歌手に憧れ、今は長野市で一人暮らしをしている。歌声に聴きほれた作詞家たちから、このほどオリジナルの「演歌」を贈られた。長年の夢がかなったようだと張り切って歌っている。

3人を育て、86歳まで働き…それでも続けた「歌うこと」

♪ なせば成る なせねば成らぬ 何事も

伸びやかな歌声を披露する、長野市の小布施実子(おぶせ・じつこ)さん、91歳。歌っているのは、小布施さんのために作詞・作曲された「オリジナル曲」だ。

小布施実子さん(91):
歌手になりたかったけれど、昔だからできなかった。そしたら(作詞の)先生が詞を書かせてくれと、こういうふうになっちゃって大変だ

小さい頃から憧れていた歌手のようだと、小布施さんは喜んでいる。

自宅で歌う小布施さん
自宅で歌う小布施さん
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「演歌」を歌うのが日課だと話す小布施さん。

小布施実子さん(91):
朝、歌ったり、昼間ちょっと時間があるときは。歌は長年歌ってて、好きだったからね

提供・小布施さん
提供・小布施さん

小布施さんは昭和6(1931)年、旧戸隠村に生まれた。歌手に憧れ、戦後間もない頃はバンドを組んで歌っていたそうだ。ひそかに上京も考えていたが…。

小布施実子さん(91):
できたら歌手になりたいな、でも東京行かなくては、こっちではだめだと思って話したら、みんなに「何言ってるの」と反対されたから、それが頭にずっとあった

提供・小布施さん
提供・小布施さん

周囲の反対で歌手になる夢を諦め、25歳で結婚。農業をしながら3人の子を育て上げた。子どもたちが独立してからは布団店に勤め、86歳まで働いた。
忙しい毎日を送る中でも、やめなかったことがある。それは、歌うこと。

小布施実子さん(91):
嫁に来てもカラオケ好きだったからいろいろな所に行ってて、全国カラオケ指導協会ができたから入ろうってことで北は飯山、南は松本まで

夫・勇さん(享年69)、長男・喜庸さん(享年52)が若くして病気で亡くなり、2016年から一人暮らしをしている。

小布施実子さん(91):
今は全部、自分がやるから、逆にこれも健康の源だと思う

元気に歌うため健康でいようと、体操や、頭の体操「ナンプレ」をしている。

小布施実子さん(91):
ナンプレ好きなんですよ、ただ家にいたってしょうがないから。何にもやる仕事がないから

自転車でカラオケ教室へ
自転車でカラオケ教室へ

この日は、カラオケ教室に向かった小布施さん。軽快に、自動車のペダルをこぐ。

小布施実子さん(91):
雨とか雪が降らないときは自転車で行きます。自分でも驚いてる。よくみんなに「自転車で行くの?」って。「はい、自転車で行きます」って

今も二つの教室に通い、仲間と歌っている。

カラオケ教室の講師:
自分なりに感情をつけて、リズム感持って歌っているから、聴いている人も聴きやすい

教室の仲間(79):
(小布施さんには)いつも言うけどお手本、100歳、120歳まで元気に歌ってくださいって。すごく気持ちのいい人だから楽しいです、一緒にやってて

小布施実子さん(91):
元気の秘けつ、ここへ来るのもそうだけど、歌を歌ってるのが元気の源、私には

小布施さんに贈られたオリジナル曲 「媼の人生一路」

歌を支えに暮らしてきた小布施さんに、うれしいプレゼントがあった。

作詞家の松宮忠さん(左)と作曲家・堀内泰彦さん(中央)
作詞家の松宮忠さん(左)と作曲家・堀内泰彦さん(中央)

小布施さんが訪れたのは、千曲市の作曲家・堀内泰彦さん(69)の家。作詞家の松宮忠さん(74)も一緒だ。2人は、小布施さんに曲を贈った。2022年4月のカラオケ大会で、小布施さんの歌声を聴いたのがきっかけだ。

作詞家・松宮忠さん(74):
歌ったときは上手で、最後に年を聞いてびっくり。年齢を重ねてきただけあって(声に)深みがあるんだよな

作曲家・堀内泰彦さん(69):
音程、リズム、感情の出し方が、「おっ」と思わせるものを持った方ですね

作曲家・堀内泰彦さん(69):
この着物も自分で着られたの?

小布施実子さん(91):
着物は踊りやってたから全部、自分で

作曲家・堀内泰彦さん(69):
髪も自分で?

小布施実子さん(91):
美容院、一切行きません

2人は人生の先輩に敬意を込めて、曲を作った。それが、小布施さんの半生と性格を歌詞に織り込んだ演歌「媼の人生一路(おうなのじんせいいちろ)」だ。

♪「媼の人生一路」
乙女 時代に 歌手目指し 故郷をはなれて 師匠の元へ なせば成る なさねば成らぬ 何事も こんな台詞を 胸に秘め 今日も 歌うよ 演歌節

小布施実子さん(91):
うれしいです。私の人生の歌だからいいかな、全面的に

作曲家・堀内泰彦さん(69):
(曲調のイメージは)小布施さんのキャラクター。明るいキャラクター、元気なキャラクター

作詞家・松宮忠さん(74):
一日一日を精いっぱい生きるってことだね。小布施さんの(人生)そのものだと思いますよ

♪「媼の人生一路」
一度 限りの 人生を 無駄に する程 阿呆じゃない

91歳でオリジナル曲。

12月にはホテルで発表会を開く予定で、小布施さんはそれまでに歌い込んで、晴れ舞台にしたいと張り切っている。

小布施実子さん(91):
生きがいは、私には歌。健康そのものも歌だなと思うし、皆さんとのつながりも歌でつながっているから。元気でいる間は歌っていきたい。健康でいる間は、年はしても声が出る限りは歌っていければいいね

(長野放送)