富山市の酒屋に、父親の娘への愛情と叶わなかった願いが込められた、20年保管されていた日本酒がある。
その日本酒が、20年の時を経て、娘へ届けられた。

「祝い酒」を20年間保管 …今は亡きある男性の思いとは

富山市緑町に店を構える寺島酒店。日本酒を中心に取り扱い、県内の飲食店などに卸している。

20年間保管されてきたお酒
20年間保管されてきたお酒
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この店の倉庫に、送り出されるその日が来るまで、20年間にわたり保管されてきたお酒があった。
実は、今は亡き ある男性の思いがこもったもので、先日ついに発送の日を迎えた。

寺島酒店 妻 真美子さん:
本当に思い出がある、このお酒には

寺島酒店 寺嶌圭吾さん:
自分も子どもがいる。孫もいるし

寺島酒店 妻 真美子さん:
いとおしい。これ、本当に

20年前に、この酒を注文した佐藤年哉さん。
佐藤さんは、富山と高岡、それぞれの商工会議所の弁理士を2004年まで務め、月に1度は自宅のある東京から富山を訪れていた。

2002年に娘を授かったお酒好きの佐藤さんは、ゆかりの地・富山で、「娘が成人したら一緒に飲みたい」と、友人である寺嶌さんに、娘の誕生日につくられた酒を注文していた。

寺島酒店 寺嶌圭吾さん:
3月29日につくったお酒をとっておいてくれと言われた。お酒もその日に生まれているし、娘もその日に生まれた

注文を受けた寺嶌さんは、県内の酒造メーカーに手当たり次第に連絡を取り、娘の誕生日である3月29日につくられた日本酒を探し、「満寿泉」24本を用意。

しかし佐藤さんは、娘が1歳の時に脳出血で入院し、その後は寝たきり。話をすることができないまま、2021年1月に59歳の若さでこの世を去った。

成人した娘と、あのお酒を一緒に飲むという佐藤さんの願いは叶わなかったものの、その願いを知る寺嶌さんは、ずっと店の倉庫でお酒を保管し、先日 娘に向けて発送した。

寺島酒店 寺嶌圭吾さん:
お酒を売っているという感じじゃない

寺島酒店 妻 真美子さん:
いろんなものが、このお酒を通してつながっている。思い出がある、このお酒には。いとおしい

20年の時を経て…娘に届けられた祝い酒

2022年に成人を迎える佐藤さんの娘・舞桜さん(19)。
寺嶌さんの手によって、父からの祝い酒が届けられた。

届いた酒をあける舞桜さん
届いた酒をあける舞桜さん

佐藤年哉さんの娘 佐藤舞桜さん(19):
「成人おめでとう」って。平成14年(2002年)3月29日。わたしが生まれた時に作ったお酒なんだ!

母 順子さん:
パパ、注文してくれてたものなんだね

佐藤年哉さんの娘 佐藤舞桜さん(19):
すごい、お酒、かっこいい

母 順子さん:
早く、飲んでみたいね

佐藤年哉さんの娘 佐藤舞桜さん(19):
うん

佐藤年哉さんの娘 佐藤舞桜さん(19):
わたしが生まれたことを、すごく喜んでくれていたのかなと。20年後に一緒にお酒を飲めたらいいなと思っていてくれたのかな

「たかがお酒だけど、普通のお酒ではない」

2022年3月に20歳の誕生日を迎える舞桜さん。
娘への愛を橋渡しすることになった寺嶌さんは…

寺島酒店 寺嶌圭吾さん:
娘さんは、すごく愛されていた

寺島酒店 寺嶌圭吾さん(左)・妻 真美子さん(右)
寺島酒店 寺嶌圭吾さん(左)・妻 真美子さん(右)

寺島酒店 妻 真美子さん:
それを伝えてあげたい。どんなにあなたは愛されて、望まれて生まれてきたのかということを伝えてあげたい

寺島酒店 妻 真美子さん
寺島酒店 妻 真美子さん

寺島酒店 妻 真美子さん:
たかがお酒だけど、普通のお酒ではない

佐藤年哉さんの娘 佐藤舞桜さん(19):
健康に20歳を迎えられてうれしい。父がもういないのは残念なことだけど、このお酒を通じて父の思いを知れたのはうれしい

舞桜さんが1歳の時に佐藤さんが脳出血を患い、父と会話をすることもできなかった。
20年の時を経て、父と酌み交わす特別なお酒。
きっと天国で、一緒に味わうのを楽しみにしているのではないだろうか。

(富山テレビ)

富山テレビ
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