BPO=放送倫理・番組向上機構の放送人権委員会は、宮崎県で起きた住宅火災の続報についてのNHK宮崎放送局のニュース放送について、「人権侵害も放送倫理上の問題もない」とする見解をまとめた。
このニュースは、2020年3月に宮崎市内で男性2人が死亡した住宅火災の続報として、2020年11月に放送されたもので、放火殺人事件の疑いが強くなり、容疑者がガソリンをまいて火をつけ、被害者を殺害し自分も死亡した可能性があり、死亡した2人の間に「何らかの金銭的なトラブル」があったかのように伝えたものだ。
これに対し、死亡した被害者の弟が「兄にも何らかの原因があったのではないかとの印象を抱かせ、兄の尊厳を傷つけた」などとして、NHKに対し、謝罪を求める申立てを行っていた。
BPOの放送人権委員会は、18日「全体として兄の社会的評価を明らかに低下させるわけではない」とするとともに、当事者である兄と容疑者がすでに死亡し背景がつかみにくい状況で、複数の捜査関係者への取材で一定の裏付けをとったうえで、警察の見方として伝えているなどとし、人権侵害はないと判断した。
また、「何らかの金銭的なトラブル」という表現をめぐる放送倫理上の問題の有無についても「兄に非があったとはっきり伝えているわけでも、強く示唆しているわけでもない」などとして、問題があるとはいえないとした。
ただし、見解には少数意見がつけられた。このなかでは、「何らかの金銭的なトラブル」という表現について、「申立人の兄の側に犯罪に巻き込まれる何らかの落ち度があったのではないかという印象を抱いた視聴者も相当数いた可能性がある」としているほか、「社会的評価を低下させる可能性のある表現の使用は控えるのが妥当だったのではないだろうか」などと指摘されている。