“生きづらさ”に光を与えたい

宇宙飛行士の野口聡一さんが先月から特任教授を務める東京大学先端科学技術研究センターで記者会見を行い、「当事者研究」という新分野の研究への意気込みを語った。

5日午後 東大駒場キャンパス
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「当事者研究」とは、障害者やトップアスリートなど特殊な経験を持つ人が自らを研究対象にするというもの。去年、3度目の宇宙滞在から期間した野口さんは、「当事者の立場から社会問題を考え、なぜ我々は生きづらいのかと考える人たちに対して光を与えたい」と意気込みを語った。野口さんは、自らが体験した宇宙での極限状態が心にもたらす変化などの研究に取り組んでいる。

すべてのことには終わりがある

会見で野口さんは、宇宙飛行士という職業について次のように語った。

野口宇宙飛行士は、経験をいかに社会に還元させるか突きつけられるという。

野口宇宙飛行士:特殊な経験をさせていただき、いかにそれを社会に還元するかつきつけられる職業。宇宙を目指し、宇宙に行けて、得がたい体験をしたのがターニングポイント。しかし、すべてのことには終わりがある。引退し宇宙飛行士としてのライフサイクルが終わるというのもそうで、終わりが来るときにいかにソフトランディングするか。自分自身におりあいをつけてうまく幕引きできるか、いままさに自分もその渦中にある。その中でこの研究に出会えたことは幸せ。

地球に戻ったときがターニングポイント

2010年にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗した宇宙飛行士の山崎直子さんも開催されたシンポジウムに参加し、自身の経験を語った。

山崎直子氏:いざ地球に戻ると、地球のほうが特別だと考えられるような瞬間だった。宇宙に行く前に遺書のようなものを書き、気持ちの整理をする。それを経た後に戻ってくると、残りの人生が活かされたような感覚になる。

宇宙飛行士だった山崎直子氏も、シンポジウムで自身の体験を語った

野口さんと共同研究を進める東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎准教授は、脳性麻痺の当事者でもある。熊谷准教授は、多様なバックグラウンドをもった宇宙飛行士が生活を共にする宇宙ステーションの組織運営には、障害者の就労環境や現代社会へのヒントがあると考え、「現代のインクルージョンを考えるヒントを見いだしたい」と語った。

熊谷氏によると、ISSの組織運営には、現代社会へのヒントがあるという