2022年初回のBSフジLIVE「プライムニュース」では、政権発足から3カ月を迎えた岸田文雄首相をスタジオに迎えた。
市中感染が広がり始めているオミクロン株の対策、経済再生への道筋は。また東アジア情勢の緊張が高まる中、米中対立の激化を見据え、岸田首相は日本をどう導こうとしているのか。参議院選挙も行われる2022年の展望をうかがった。
感染急拡大「従来対策を進めた上で、陽性者全員の入院見直しも」
この記事の画像(11枚)新美有加キャスター:
新型コロナウイルス感染者が急増。2021年末から増え始め、全国でも3カ月ぶりに1000人を超えました。
反町理キャスター:
感染拡大地域では、陽性者全員の入院措置は見直すとの発言があった。
岸田文雄 内閣総理大臣:
まずは厳しい水際対策の骨格は維持しつつ、国内対策として、ワクチン3回目の接種・無料検査・経口治療薬の3つを強化していく。オミクロン株に2021年夏の2倍の感染力が示されても対応できる病床、医療人材を用意する。その上で、感染が急拡大した場合には、自治体の首長の判断で、今は陽性者全員の入院・濃厚接触者全員の宿泊待機措置を見直すことも可能とする。自宅療養者について、訪問医療・パルオキシメーター・経口治療薬といった医療にアクセスできる体制を確保することが前提。
反町理キャスター:
沖縄では大変な規模で新規感染者が拡大。陽性者全員の入院見直しは喫緊の措置となるのでは?
岸田文雄 内閣総理大臣:
報告では沖縄の病床使用率は1月4日現在で19%。先を考え色々な準備をしなければならない。玉城知事もそういった思いで会見したと思う。
反町理キャスター:
急増のテンポはどう見ている? 緊急事態宣言や重点措置の発出基準はデルタ株同様で良いか。オミクロン株では重症者が少ないと言われるが、脅威認識は同じか。
岸田文雄 内閣総理大臣:
オミクロン株の拡大スピードは速いと言われている。状況を見極めた上で、対策をしっかり実施。特に経口治療薬は新しい要素で、すでに5000程の医療機関・薬局に届けている。これを活用しながら、医療逼迫を引き起こさないことが第一。順を追って対策を進める。ワクチンも治療薬も、オミクロン株に対して有効だという判断が出てきており、まずは従来の対策を進めることが重要。
「車座対話」を積極的に進めた岸田首相 ジョークも上達?
新美有加キャスター:
様々な場で様々な方と「車座対話」を続けてきた。成果は?
岸田文雄 内閣総理大臣:
発足後20回以上、いろんな方と話して、学び、気づかせてもらった。観光分野の方との意見交換では、地域の観光資源維持のための予算の必要性。保育士や看護師、最前線の皆さんの給与を国が責任を持って引き上げること。災害対策、大規模接種センター、アフガニスタンの邦人救出に従事した自衛官の皆さんの声も、国家安全保障戦略の見直し議論の中で受け止めていく。
反町理キャスター:
対話については、首相になってからジョークも交えたしゃべりも上手になったのでは。
岸田文雄 内閣総理大臣:
もともと話が下手だったんでしょうが、最近はうける話を少しはできるようになって、少し成長したということじゃないですか(笑)。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
岸田さんは立場によって自分の役割を考え発言している。政調会長時代には、上司たる安倍元首相がいて、それをないがしろにせず支える。だが今はトップに立つ中で、ジョークなども出るようになったのだと思います。
反町理キャスター:
そういうことでいいでしょうか。
岸田文雄 内閣総理大臣:
いいんじゃないでしょうか(笑)。勉強しなければその場に合わせた会話ができませんから、少しはネタを集めています。
経済格差の解消は、民主主義の基盤のためにも重要
反町理キャスター:
年頭所感では「新しい資本主義」の成長エンジンとして、デジタル化、気候変動、経済安全保障、イノベーション・科学技術の4本の柱を提示。
岸田文雄 内閣総理大臣:
従来の資本主義、特に1980年代からの新自由主義には様々な弊害があった。格差の広がりや気候変動問題など。経済を持続可能にするためには、課題に向き合った上での成長が要る。その危機感から新しい経済モデルを考えている。日本経済の弱点といわれてきた部分をエンジンに変えていく。バイデン大統領はじめ世界の首脳とも話し、これからのあるべき資本主義のきっかけになればと思う。
反町理キャスター:
新自由主義における、過度の競争に対するアンチテーゼと理解してよい?
岸田文雄 内閣総理大臣:
いや、新自由主義にも成長のエンジンとしてのいい点はあった。ただ、格差の広がりは経済的問題というだけではなく、健全な中間層によって支えられるという民主主義の基盤を損なってしまう。民主主義の危機にもつながる。
反町理キャスター:
気候変動問題、カーボンニュートラルに関連して。日本で原発は多いとき52基稼働しており、エネルギー基本計画ではそのシェアは25%と示していた。今、全部稼働しているわけでないが、稼働できる数が13基。だが、基本計画で22%を目標にしている。無理では?
岸田文雄 内閣総理大臣:
日本は技術を持つ人材をしっかり維持しなければいけない。これを将来、小型原子炉など様々な技術につなげる大きな可能性を見ている。数字の辻褄が合うかは今後の技術革新にもよる。いきなりというのは難しいかもしれないが、可能性があるから議論が行われている。安全を大前提として。
対中国では「したたかに冷徹な外交」を
新美有加キャスター:
外交政策について。韓国では大統領選があるが、関係改善の突破口は。
岸田文雄 内閣総理大臣:
新しい大統領になったから改善するとは言えないが、日韓関係は外交、経済、安全保障において重要な関係。対話は大事にしたいが、国と国との約束、条約、国際法は守るように言っていかなければいけない。
反町理キャスター:
中国との関係は。
岸田文雄 内閣総理大臣:
日中関係は、隣国であるがゆえに難しい問題。東シナ海、南シナ海における力による現状変更の試みは、決して許してはならない。人権等の価値観を考えても、言うべきことは言わないといけない。日中関係の安定は、地域や国際社会の平和や安定にもかかわる。対話は維持しないといけない。対話の中で、建設的な関係を築くことができれば。
反町理キャスター:
垂秀夫駐中国大使は、かなりのタフネゴシエーターとされる。会っていたようだが、今後の日中関係のカギは?
岸田文雄 内閣総理大臣:
垂大使が課長時代からの付き合い。私もかつて外務大臣を務めていた。限られた時間だが、率直な意見交換をした。中身は言えないが、アメリカもヨーロッパも、対中関係ではしたたかに色々な工夫をしている。日本もしたたかに冷徹な外交をしなければ。
反町理キャスター:
核保有5カ国(米・中・露・英・仏)が、共同声明で核戦争に関しての警鐘を出した。我々はどう考えるべきか。総理はNPT(核拡散防止条約)再検討会議には参加するが、核兵器禁止条約についてはオブザーバー参加にすらも慎重。
岸田文雄 内閣総理大臣:
外務大臣時代に痛感したのは、核兵器のない世界を目指すには、核保有国を変えなければ現実は変わらないこと。核保有5カ国はNPTには参加しているが、核兵器禁止条約には参加していない。核兵器禁止条約は最終的な出口として重要。唯一の戦争被爆国として、そこに引っ張っていく努力をしないといけない。信頼関係を作らずに核兵器禁止条約にいってしまうと、核兵器保有国がついてこない。
反町理キャスター:
2023年の日本開催のG7サミットは、地元の広島で行いたい?
岸田文雄 内閣総理大臣:
広島含め手を挙げている都市が3つある。だが、アメリカに加えイギリスやフランス、核保有国のリーダーが被爆地に足を運ぶことには議論がある。いずれにせよ、これから各都市のアピールを比べて判断したい。
2022年の展望と若者へのメッセージ「だから人生は面白い」
反町理キャスター:
2022年には参院選がある。岸田政権にとっての位置付けは。
政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏:
一定の成果を収めれば、その後の政権運営をかなり強気にできる。ただその場合の基準は、自公で改選議席の過半数を取ること、と考えてよろしいですか?
岸田文雄 内閣総理大臣:
参院選は政権選択選挙ではない。まだ半年先なので考えていないが、コロナ対応や経済対策など、目に見える結果をひとつずつ積み上げることが、選挙に勝つ道につながると信じている。
新美有加キャスター:
高校生からのメール。「総理は3回、東大に不合格だったと著書で読んだ。挫折したときにどう乗り越えるか、コロナ禍を生きる若者・学生にメッセージを」。
岸田文雄 内閣総理大臣:
大学受験に失敗した時も、そこまで深刻に考えていなかった(笑)。人生いろんな道がある、と割り切っていたからこそ、これまで生きてこられた。若い頃は「失敗したら終わり」と思いがちだが、人生ってどこに青い鳥がいるか分からない。色んな人生がある。だから人生は面白いと思う。
BSフジLIVE「プライムニュース」1月4日放送