2021年の一年間で行ったオウム真理教の後継団体施設への立ち入り検査の回数が過去最多を更新した。公安調査庁によると、全国13都道府県、延べ46施設に対して合わせて41回の立ち入り検査を行った。

(直近5年の年間立ち入り検査回数と、延べ施設数)2017年:32回・33施設 2018 年:28回・70施設 2019年:21回・30施設 2020年:20回・21施設 2021年:41回・46施設

2021年、公安調査庁によるオウム後継団体に対する立ち入りは過去最多となった
2021年、公安調査庁によるオウム後継団体に対する立ち入りは過去最多となった
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2020年と比べても、2021年は立ち入り検査回数がおよそ2倍に急増。また松本智津夫元死刑囚の死刑執行で後継団体の活動が懸念された2018年でも28回だったことを考慮すると、2021年が明らかに回数が多いことがわかる。

なぜ公安調査庁は、これほどまで、頻繁に立ち入り検査を行ったのか。きっかけは後継団体の一つアレフの活動状況にあった。

アレフに対して ”初”再発防止処分請求

オウム真理教の後継団体アレフは団体規制法に基づき、公安調査庁に対して活動報告書の提出が義務づけられている。

この報告書には、アレフの資産、信者の氏名・住所、施設の場所、活動内容などが記載されていて、公安調査庁はアレフが提出してくる報告書の内容と、立ち入り検査などの調査で得た情報に齟齬がないかを常に注視している。つまり後継団体の動向を正確に把握するためには、アレフ側が報告書を提出することが鍵となっている。

アレフは3カ月ごとに、この活動報告書の提出が義務づけられているが、2021年の5月分と8月分の2回分を提出しなかった。公安調査庁は再三の是正・指導を続けたが、その後も提出しなかったため、10月25日に再発防止処分を公安審査委員会に請求した。

10月25日、公安調査庁は再発防止処分を請求した
10月25日、公安調査庁は再発防止処分を請求した

この再発防止処分は施設の使用を一時的に制限するなど、アレフの活動の一部を停止させることが出来るもので、団体規制法の施行以降、再発防止処分が請求されるのは今回が初めてだった。

処分逃れか やっとアレフが報告書を提出

その後11月中旬、アレフは未提出だった5月分と8月分の2回分と11月分の報告書をまとめて提出した。もちろん処分を逃れようとした狙いがあるとみられる。処分を受けると施設内で暮らす出家の信者だけでなく、施設に通う在家の信者にとって、お布施が出来なくなったり、施設の使用が制限されることは、事実上“組織の壊滅”に直結することになるからだ。

再発防止処分の請求は、報告書が提出されていないことに基づき請求されたものなので、アレフ側から報告書が提出されたことを受け、公安調査庁は請求していた再発防止処分を11月19日に取り下げた。

しかし提出された報告書は、関連事業の資産などが一部不記載となっていて、これまでおよそ12億円あったとされる総資産のうち、5億数千万円の資産しか記載されていなかった。つまり、残る6億円超の資産は不記載のままになっていたという。

祭壇には今なお写真が 残る松本元死刑囚への信仰

アレフ入谷施設にて撮影 2021年11月19日 提供:公安調査庁
アレフ入谷施設にて撮影 2021年11月19日 提供:公安調査庁

アレフは、地下鉄サリン事件の被害者らに対する10億2500万円の賠償を未だに済ませていない。公安調査庁は、こうした賠償をめぐる“資産隠し”の動きと見て、アレフに対して是正勧告を続けると共に、一部不記載など報告の不備が継続した場合には、今後再発防止処分を再度発令することも視野に検討を進めている。

アレフ入谷施設への立ち入り検査 11月19日
アレフ入谷施設への立ち入り検査 11月19日

また、立ち入り検査ではアレフが現在も松本元死刑囚の信仰を続けている状況を確認している。東京・足立区の入谷施設の祭壇には、現在もなお松本元死刑囚の写真が掲げられ、信者らが帰依しているという。

公安調査庁はこうした状況を立ち入り検査で確認していて、「依然として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を保持している」とみている。

ある公安関係者は、アレフをめぐる一連の状況についてこうも話す。「アレフは観察処分に基づく義務を履行しようとする姿勢が見られないなど極めて悪質な体質が認められ、より厳しい対応が求められる」

地下鉄サリン事件 1995年3月
地下鉄サリン事件 1995年3月

地下鉄サリン事件などオウム真理教が起こした事件を想起させる不安は、今も地域住民に根強く残っている。今後、正確な報告書が提出されるのか、また提出された報告内容と調査で把握している資産・活動実態に齟齬がないか、公安調査庁は2022年もアレフを始め後継団体への立ち入り検査を続けていく方針だ。

(フジテレビ社会部・司法クラブ 熊手隆一)