富士山に降り注ぐ流星を山梨県西湖から撮影

流れ星の多さから三大流星群のひとつに数えられる「ふたご座流星群」。12月13日夜から14日未明にかけて出現のピークを迎え、山梨県の西湖では富士山に向かって多くの流星が降り注いだ。

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毎年、12月初旬から観測することができるふたご座流星群。1月の「しぶんぎ座流星群」、8月の「ペルセウス座流星群」と並ぶ三大流星群のひとつだ。今回の撮影にあたり、星について調べてみると面白い発見や初めて知る情報が次々と見つかり、これまでは漠然としか見ることができなかったふたご座流星群をひと味違う視点で見ることができた。

星の色にも注目

その一つが「星の色」だ。

星の色は全部同じだと思っていたが、よく観察してみると、赤く輝く星や青く光る星、白い星など、星によって色が異なることがわかった。例えば、オリオン座の1等星ペテルギウスは赤色。おおいぬ座の1等星シリウスは白色に輝いている。ふたご座のβ星ポルックスはオレンジ色。α星カストルは白色に輝いている。

ふたご座
ふたご座

なぜ星によって色が異なるのか。国立天文台によると、星の表面温度が異なるからだという。表面温度が低い星は赤く、高い星は白く輝いて見えるそうだ。

ふたご座のポルックスとカストルの色が異なって見えるのは、ポルックスの表面温度が約4,700度のためオレンジ色、カストルは約10,000度のため白く見えているのだという。ちなみに、太陽は表面温度が約6,000度なので、黄色く見えている。星を肉眼で見ると、とても小さく見えるが実際の大きさはそんなものではない。

ふたご座のポルックスとカストルはどのくらいの大きさなのだろうか。国立天文台によると、カストルは太陽の2倍。ポルックスはさらに大きく、太陽の8.21倍の大きさだという。また、さらに大きい星もあり、太陽の1000倍以上の大きさを持つ星もあるという。いかに宇宙が壮大で、無限大かがこれによっても理解できる。

過去~現在 星の光の共演

星が大きいにも関わらず、小さく見えているのはそれだけ地球から離れているからである。そしてそれは、今見えている星の輝きがリアルタイムのものではないことを意味している。地球から太陽までの距離は1億5000万km離れている。そのため、私たちが見ている太陽の光でさえも約8分前のものだ。

ふたご座の場合はどうだろうか。国立天文台によると、ポルックスは地球から約35光年離れており、カストルは約50光年離れている。よって、私たちが見ている輝きは35年前と50年前の輝きということになる。35光年と50光年。さらに離れている星も存在するという。知れば知るほど宇宙のスケールの大きさに圧倒され、ロマンを感じるのは私だけではないだろう。

「ふたご座流星群で学んだ<知ること>の喜び」

過去の光であるふたご座と現在の光である流星。ふたご座流星群の観測で、私たちは地球から約100km上空でいま現在輝いている流星と何光年も離れているふたご座で輝く星々。輝いている時間が全く異なる光を現在の自分の目で見て楽しんでいるのだ。まさに時間を超越した不思議な感覚を覚える。

ふたご座流星群の撮影にあたって、いろいろと調べていくなか、私の星の見方は大きく変わっていった。知れば知るほど宇宙のスケールに圧倒され、その魅力にのめり込んでしまった。

「知れば知るほど」の大事さ、これは星に限った話ではない。普段、何気なく理解しているつもりになっていることも、より深く知れば知るほど、違った観点で物事を見ることができるようになるのだと思う。今回の撮影を通して、改めて「知ることの楽しさ」を実感できたことは、また別の収穫である。

2022年1月には三大流星群のひとつである、「しぶんぎ座流星群」が観測できる。国立天文台にしぶんぎ座流星群を観測するコツを聞いてみた。流星を観測するコツは、大きく3つある。
・観測場所は晴れの日の街明かりのない暗い場所を選ぶこと。
・15分ほど明かりを見ずに目を慣らすこと。
・そして、空を広く見ること。

この3つが流星群を観測するコツだという。

しぶんぎ流星群のピークは1月4日の明け方で、その日は月明かりがないため例年より見やすい環境になるということだ。寒さ対策をしっかりして観測を楽しんでいただきたい。

「撮影後記」

富士山に降り注ぐふたご座流星群を撮影するため、山梨県の西湖へ向かった。結論から言うと、そこには<映画のワンシーン>のような光景が広がっていた。13日は朝から天気は快晴。現地に向かう途中も雲一つなかった。前日にお参りした気象神社の効果だろうか。前回「ほぼ皆既月食」の撮影の際もお祈りした気象神社。その効果に期待が高まった。

「富士山でかい!!」

山梨県に入るといきなり、富士山が出迎えてくれた。富士山をこの大きさで見たのはいつぶりだろうか。興奮しながら写真に収め、富士山込みの流星群が撮れそうな予感に胸が高まった。

目的地、西湖に到着し、21時からのFNNプライムオンライン配信に向けて準備を開始した。
到着したときはまだ星は少ししか確認できなかったが、時間が経つにつれ、飛び交う星々の数が増え始め、圧巻の光景が広がっていく。

今回ふたご座流星群を初めて肉眼で見たが、言葉にできない美しさだった。気温マイナス2度という極寒とも言える状況だったが、そんなことはすっかり忘れてしまっていた。6時間半に及ぶ配信はあっという間に終わった。

今は見たい映像はすぐに見られる時代だ。また誰しもがスマートフォンで動画撮影が出来る。しかし、流星の場合は違って、そう簡単にはいかない。いつ流れるか、どんな速さで流れるかもわからない。四方八方飛び交う星を映像に収めるのには、それなりの時間と労力を要する。だからこそ、流星を捉えたときの達成感と感動はひとしおなのだ。

使用機材:
α7SⅢ
14mm 単焦点レンズ
28mm 単焦点レンズ
50mm 単焦点レンズ

(LIVESTUDIO撮影中継取材部 外薗学)

マイナス2度の寒さを忘れるほどの絶景

私の中にある星の記憶。地元近くの祖母の家で夏に見た天の川、そこに流れる数個の流れ星。夜空を彩る無数の星は今にも降り注いでくるのではないかと思ったのを今でも覚えている。忘れることのできない小学生の頃の記憶だ。

大人になり上京し、夜になっても街中が明るい東京では夜空を見上げてもあの頃のような星々を見ることは難しかった。夜空に輝く星々が良き思い出になった今、ふたご座流星群の撮影をすることになった。

当日、高速道路から見える富士山の圧倒的存在感を感じながら西湖での機材の準備、冷え込むことが予想されていたため機材の寒さ対策も入念に行った。

配信でふたご座をとっている際に富士山の上を尾の長い星が流れた。「あ!!」と言う声が自然にもれ、指をさしていた。<富士山と流れ星>という、ここでしか見ることのできない景色に感動こそしたが、その瞬間は撮影、配信することが出来なかった。

流れ星は事前にどこに流れるか分からないため、撮影が難しい。だからこそ、その瞬間が撮影できたときの喜びは大きく、それを生で配信することによって多くの人と感動を共有できることでその喜びは倍増するのだ。

久々にみた流れ星は願い事をすることも忘れ、一瞬で私の心を攫って行った。心惹かれるとは、こういうことを言うのだろう。−2度まで冷え込んだ夜だったが、我々が寒さも忘れてしまうほどの絶景を、生配信で見ていただけた方々が感動して頂けたら嬉しい。

(LIVESTUDIO撮影中継取材部 VE 岡果林)

撮影中継取材部
撮影中継取材部