日本を取り巻く国際情勢や国内状況が大きく変わる一方、日本国憲法は制定以来、約74年間そのままであり続けてきた。憲法改正議論が活発になる中、衆議院憲法審査会で各党が意見を述べる自由討議が繰り広げられた。

BSフジLIVE「プライムニュース」では、与野党の憲法審査会メンバーをゲストに迎え、今後の姿勢と展望をうかがった。

憲法審査会での議論は活発に テーマ別分科会設置の是非は?

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長野美郷キャスター:
憲法改正をめぐるこれまでの経緯。2000年、衆参両院に憲法調査会が設置されました。2007年の国民投票法成立を受け、衆参両院に憲法審査会が設置。2021年に改正国民投票法が成立。12月16日には憲法審査会で自由討議が行われました。新藤さん、与党の筆頭幹事として各党の姿勢の受け止めは?

新藤義孝 衆院憲法審査会与党筆頭幹事 自民党憲法改正実現本部事務総長:
2週続けて2回審査会が円満に開催され、自由討議が活発に行われた。非常に喜ばしいこと。どんどん議論を深めていけば、自ずと結論は収斂されてくる。とても有意義な審議審査会だった。

反町理キャスター:
中川さんは審査会で「論憲」とおっしゃった。かつての民主党もずっと使ってきた言葉ですよね。

中川正春 衆院憲法審査会委員 立憲民主党憲法調査会長:
民主党だけではなく、憲法調査会の頃から憲法をとことん論じようという精神があった。それを受け継いだのが論憲。議論の結果、現状自体が憲法違反だとなる可能性も、法律の中で解決をしていける課題だとなるものもある。しかし、時代の変遷の中で、憲法自体を変えるべきとなる可能性があるケースもある。改憲を前提にした決めつけは違うと私たちは言っている。

長野美郷キャスター:
玉木さんは、審査会では論点を絞った分科会方式を検討すべきと述べられています。この狙いは。

玉木雄一郎 衆院憲法審査会委員 国民民主党代表:
一口に憲法改正論議といっても、まず手続きの話、国民投票法の話。そして憲法の改正本体の話も多岐に渡る。テーマごとに分科会方式にして議論を深めていく方が、生産的な議論が行われるのではないかと。

馬場伸幸 日本維新の会共同代表
馬場伸幸 日本維新の会共同代表

馬場伸幸 衆院憲法審査会幹事 日本維新の会共同代表:
10年前から、憲法の前文から全条項・条目をレビューすることを2回やりました。次は憲法改正項目をなぜ、どのように変えるのかということを各党内でまとめる段階。それを仕分けして、分科会に委ねていく。つまり分科会にする前に一つ作業がいる。

反町理キャスター:
赤嶺さんは憲法審査会で、今は憲法をいじるべきタイミングではないと主張されていましたが。

赤嶺政賢 衆院憲法審査会委員 日本共産党衆議院議員:
主権そのものが日米地位協定によって侵されている点、憲法と現実が乖離している。それを解決しないで改憲するのはおかしいと申し上げた。また、自民党の安倍改憲4項目に反対してきた立場がある。憲法審査会そのものは改憲草案を発議するための審査会。動かすべきではない。今憲法9条を変える必要はない。

新藤義孝 自民党憲法改正実現本部事務総長:
それは憲法審査会の自由討議でどんどんおっしゃればいい。その声に説得力があれば、「まだ改正しなくてよい」となりますよ。だけど審査会を開かない、動かさないというのは、国民に対する責任を果たしていると言えるのか。

国民民主党が与党・協力会派に参加。改憲の動きは加速するか

長野美郷キャスター:
憲法改正をめぐる議論の構図の変化について。与党・協力会派連絡懇談会は、これまでの自民・公明・維新の3会派に国民・有志の会が加わりました。野党幹事懇談会は立憲と共産。玉木さん、今回参加された理由は。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
我々は審査会を開かないことに一生懸命になる勢力ではなく、中身は分かれても議論はしましょうという側にいるので。

反町理キャスター:
今まで野党では維新だけが協力会派だったが。

馬場伸幸 日本維新の会共同代表:
改憲をしようという側と絶対護憲だという側でゴールが全く違うから、全会一致となるわけはない。だがこれは分断ではない。日本は民主主義。議論を尽くし、最後はやはり採決するというのが当たり前。

中川正春 立憲民主党憲法調査会長
中川正春 立憲民主党憲法調査会長

中川正春 立憲民主党憲法調査会長:
護憲だ改憲だと、色をつけて分けるから分断になっていく。議論の結果、選択肢の中に改憲があるかもしれないということ。

赤嶺政賢 日本共産党衆議院議員:
我々は審査会を動かすなと言っているが、審議には常に積極的に参加し発言している。また決めるのは国民。国民の大多数が、今憲法を変えるなという草の根の署名運動なんかにも取り組んでいますから。

反町理キャスター:
でも、憲法改正についての世論調査では、賛成が55.5%で反対が33.9%というのがFNNの11月の世論調査。憲法に対しての国民の気持ちが盛り上がっていないということはないのでは。

新藤義孝 自民党憲法改正実現本部事務総長:
招いてはいけないのは、国会の分断ではなくて国民の分断。議論もせず、全員が参加しないまま出来上がったものの良し悪しの話になれば、当然分断が起きてしまう。国民主権の発露の最大の場である国民投票を一度もやったことがないのは、国民の主権を奪うことになっていないか。最後は国民が正しい判断をしてくれるはずで、そのために私たちは議論を深める必要がある。

自民・国民が挙げる緊急事態条項 「緊急事態」の定義が重要

長野美郷キャスター:
自民・維新・国民の改憲案。自民のポイントは自衛隊の明記、緊急事態対応、合区解消・地方公共団体、教育充実の4項目。維新は教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置の3項目。国民は緊急事態条項の創設。

新藤義孝 自民党憲法改正実現本部事務総長:
今の安保体制を変えずに国民を守る実力組織を文民統制の下に置く、その名前を自衛隊と明記するということ。緊急事態は、70年前当時の日本政府が入れるべきだと言ってアメリカに却下されたもの。合区の解消と地方公共団体は、国民の法の下での平等と地域の民意への反映をバランスさせるため。教育充実は、生涯教育、経済的な要因で教育の機会が奪われることへの対応、教育をデジタル化するなどの教育理念を入れるということ。

新藤義孝 自民党憲法改正実現本部事務総長
新藤義孝 自民党憲法改正実現本部事務総長

馬場伸幸 日本維新の会共同代表:
喫緊の課題は教育無償化。貧困の連鎖を解消し、最終的には社会に一度出てからまた学び直すという、リカレント教育も憲法に位置づけていく。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
緊急事態条項について、与野党ともに危機感が足りない。感染症や大地震で選挙ができない状況において、会期の特例が定められていない。それで国会が、立法府としての行政への監視機能を維持できるのか。

赤嶺政賢 日本共産党衆議院議員
赤嶺政賢 日本共産党衆議院議員

赤嶺政賢 日本共産党衆議院議員:
緊急事態条項に我々が反対するのは、内閣が権限を持ち、勝手にやりだすから。その権限を強化すれば、余計に国民の協力は得られない。日本国憲法の中に緊急事態条項がないのは、それが軍事と結びついてるからなんですよ。あの戦争を二度と繰り返してはいけないという国民の気持ちが平和憲法を作り上げたんですよ。

新藤義孝 自民党憲法改正実現本部事務総長:
日本国憲法制定時のGHQとの折衝は、現実に記録が残っている。日本政府は緊急政令制度を主張したがGHQに完全拒否された。その占領下における枠組みが今残っている。当時は軍事などなく、結びつけること自体が間違っている。そして、占領が終わっているのに、いつまでもその同じ概念を持ち続けることが間違っている。

玉木雄一郎 国民民主党代表
玉木雄一郎 国民民主党代表

玉木雄一郎 国民民主党代表:
大切なのは緊急事態の定義。国民民主党としては、我が国への外部からの武力攻撃、内乱テロ等による社会秩序の混乱、大規模な自然災害、感染症の大規模な蔓延の4つを挙げています。自民は大規模災害だけを例示していますが、恣意的な運用を避けることも考慮し、ここは変えた方がいいと思います。

新藤義孝 自民党憲法改正実現本部事務総長:
そうした議論は大歓迎。みんなで作り上げていくのが審査会の作業。4項目を押し付けるといったことではない。

今後のスケジュールは 維新・馬場氏「3年おきの国民投票も一案」

長野美郷キャスター:
憲法改正議論の今後のスケジュールについて。憲法審査会で馬場さんは、参院選で憲法改正の国民投票を実施するといった具体的なスケジュールを明示すべきと述べられました。 

新藤義孝 自民党憲法改正実現本部事務総長:
維新からご提案があることはとてもいいこと。速やかに進めたいが、改正ありきの議論には慎重にならねばならず、まずは議論が必要。与野党間で話し合いの場を持つための合意形成を図ることが、私たちの最大の役割。

玉木雄一郎 国民民主党代表:
スケジュール感は大事。だが冷静な議論のために、国政選挙と国民投票は重複しないようにすべきと思っています。

中川正春 立憲民主党憲法調査会長:
改憲を前提にした議論ではなく、という新藤さんのご発言は評価したい。まず国民投票法の決着。特にコマーシャル規制やネット規制という課題から固めていくということ。

赤嶺政賢 日本共産党衆議院議員:
憲法を守れという国民の声を大きくして、参議院選挙で改憲の条件をなくすために頑張っていきたい。

馬場伸幸 日本維新の会共同代表:
このペースでは国民投票はまだまだ先になる。きちっとスケジュールを決めないと。また、政権にとっては憲法改正の国民投票にはかなりのリスクがある。例えば3年ごと、参議院選挙ごとに国民投票をするというルーティンを定着させれば、リスクはかなりヘッジされる。さらに常日頃から国民も憲法について興味を持つようになり、民主主義が成熟していくと思います。

BSフジLIVE「プライムニュース」12月16日放送