12月特集は「現代の孤独」。高齢化社会の深刻化、生涯未婚率の上昇、そしてコロナ禍。今はひとりになりやすい環境にあるのではないだろうか。
そんな中で「日本の中高年男性は世界一孤独なのでは―。」と警鐘を鳴らす女性がいる。コミュニケーションの専門家として活動する傍ら、おじさんの孤独問題も研究する、岡本純子さんだ。
岡本さんによると、日本の中高年男性は孤独を抱えやすく、そこには文化や社会的な側面も影響しているという。中高年ともなれば、家庭や会社で人間関係はできていそうなイメージだが、なぜ孤独を抱えるのか。家族がいて働いているうちにできることはあるのか。
実情と対処法を岡本さんに聞いた。
日本のおじさんは世界一孤独ではないか
ーーおじさんの孤独研究を始めた経緯を教えて。
以前から仕事でおじさまと接する機会は多かったのですが、きっかけは7年前(2014年)に海外に渡ったことです。海外では当時から「孤独は現代の伝染病である」と言われていて、メンタルや健康面などにまで影響があると言われていました。
その後に帰国して、コミュニケーションと孤独は表裏一体だなと思い、取材して記事を執筆したのが原点です。日本の中高年の男性が抱える孤独は特に深刻な気がしています。
ーー日本のおじさんの孤独が深刻なのはなぜ?
まず、基本的に男性は女性よりも孤独だと思います。女性は理由がなくても対面でコミュニケーションをとりますが、男性は仕事といった「何か」が間にないと難しい。働いているうちに地域とのつながりも薄れて、居場所もできにくいです。

さらに、日本の中高年男性は文化的・社会的な要因でこうした傾向が特に強い気がします。文化的要因は「孤独をよし」とする風潮がみられることです。孤独=カッコいい、男性は一人でも強くいなければいけない…といった意識に縛られているところがあると思います。
英語では、孤独を指す言葉が2つあります。一人でも楽しいことを指す「ソリチュード」。一人で寂しい状況を指す「ロンリネス」。日本はこの2つをどちらも「孤独」と表現するため、混同されやすく、肯定的にとらえられやすい。「ロンリネス」の負の側面はあまり論じられません。
ーー社会的要因はどんなところにある?
日本企業のシステムです。終身雇用や年功序列が当たり前で、多くの人はあまり社外とのつながりは持ちませんし、社内では上下関係ありきのコミュニケーションになりがちです。相手の肩書と自分との関係を気にしてしまい、心が通じ合えない。そうした企業に長年いると“人とつながる筋肉”が衰えてしまう。籠の鳥のように、羽ばたけなくなります。海外に比べると新しいつながりを作る場も少なく、コミュニケーションを学ぶ教育の場もありません。
日本人はまじめなだけに寂しさを抱える
ーー日本のおじさんはどんな孤独を抱えている?実際の声を教えて。
孤独を開示しない。恥ずかしいと捉える印象が強いですね。取材で話を聞くと、女性は趣味などの集まりにも行きますが、男性は家や図書館にいることが多い。その状態を楽しいと思う人がいる一方で、物足りなさを感じ、抑え込んでいる人もいます。
退職された方だと、社会で活躍した自分の孤独に「なぜ」と憤る方もいます。学校で先生だったある男性は、子どもたちのために何かをしたいがその場がないと悩んでいました。ある時、たまたまマンション内で見かけた、障害のある子どもの母親に何かお手伝いできることはないかと声をかけたところ、マンションの管理組合から、知らない人に話しかけないでくれと通達が来たそうです。

日本人はまじめなので社会や人の役に立ちたい、認められたい思いが強い。ただ、ボランティアなどができる仕組みがない印象です。誰かとつながりたい、認められたいという、人間の根本的な欲求が満たされず、寂しさとなっていると思います。夫婦だと奥さんは生きているうちはよくても、亡くなった後に強い孤独感に苛まれるケースも多いです。
ーー現役世代のおじさんは孤独をどう捉えている?
孤独を現実的に捉えている人は少ないですね。仕事が生きがいだったり、拘束されている分、自由に憧れる人もいます。仕事やお金が幸せに直結すると考える人が多いですが、人とのつながりが幸せにつながると考える人は少ない印象です。
ーー孤独なおじさんとなりやすい環境はある?
社会での競争は悪いことではありませんが、マウントを取るようなことを続けていると、人間関係を犠牲にしてしまう気質が残ることもあると思います。地域活動の場なのに、会社の名刺を持ち歩くなど、肩書でのコミュニケーションから抜け出せない方もいます。
個人的には地方出身の、都市在住サラリーマンは要注意だと思います。学生時代の友人とは違い、会社の同僚は競争相手でもあるので完全には打ち解けにくい。地元の友人とつながる機会も少なく、趣味もない、という人も少なくないです。
自分の居場所を見つけてほしい…お勧めは意外な場所
ーー孤独なおじさんができることはあるの?
一人でいいやと思う方も多いかもしれませんが、何かあったときに頼れる人はいるのか、話を聞いてくれる場があるのか。会社や家庭以外に居場所はあるのか。一人で頑張らなきゃと思いこまないで、弱みを見せる場があってよいのではと思います。
個人的にお勧めしたいのは「スナック」のような場所です。中高年の男性にコミュニケーションを勧めても「そんなの無理」と言われるのですが、スナックはどうですか?と聞くと「それならできる」と答える人が多いです。なぜスナックかというと、仕事が男性のコミュニケーションの媒介となるように、ママが進行役になる。「○○さんと話しなさいよ」といった差配をしてくれるのです。コロナ禍だと難しいですが、そういう雨宿りができる場所。

若い人に抱え込まないでと言いますが、実はおじさんも抱え込んでない?と思います。話を聞いてもらえて存在を認めてもらえる場所。そんなつながりも重要だと思います。
ーー家族に支えてもらうのはどうなの?
家族仲がよいのはいいことです。反面、支えてもらえるのは奥さんだけという人も少なくない印象です。孤独だからこそ何かに依存しやすい面もあります。個人的な考えですが、筋子ではなく蜘蛛の巣のように生きてはいかがでしょうか。筋子のようにぺったりと何かにしがみつくと、はがれたときに「実は一人だったんだ…」と感じてしまう。
それよりは蜘蛛の巣のように薄くてもよいので、複数の関係性を築いていくことが今の時代にマッチしている気がしています。会社や家庭はもちろん、地域、趣味、ボランティア。スナック、喫茶店、バーでもいいです。自分が心地よい場所ですね。
ーー海外の中高年男性も孤独を抱えているの?
過去にイギリスで取材をしたのですが、男性はやはり孤独を開示しません。カミングアウトを恥と捉えていて、集まりませんかといっても大体来ません。そうした人たちのために電話相談窓口もあるのですが、ここでは男女の違いがあります。
女性は「寂しい。誰かと会いたい」と電話してくるのに対して、男性は「チキンを買ったけどどう料理すればいい?」「今日のサッカーの結果は?」などと始まるらしいのです。孤独であると認めない、でもやっぱり誰かと話したいことが分かります。

ーー海外の孤独対策はどうなっている?
イギリスには孤独対策で「男の小屋」という場所があります。DIYの工具や材料があり机や椅子を自由に作れるのですが、そこには男性は行くのです。人に会うためじゃなくて物を作るためとしていて、行くとみんなと話せる。後は誰もができるよう、歩きながら行うサッカーもあります。「私はサッカーに行くんだ」といって、仲間を作ったりしますね。
迷惑をかけると思わずに「お互いさま」を大切にしてほしい
ーー日本で孤独を感じている人に伝えたいことは?
人生100年時代と言われ、60年でリタイアしても約30年間あります。5~10年なら自分のやりたいことを楽しく過ごすのもよいでしょうが、30年間ひとりはつらくないですか。ですが、だから結婚すべき、会社で関係を作るべきとは言いません。
必要なのは自分が心地よい、縛りのない関係性で良いと思うのです。例えば、近くのお風呂屋さんに行って何気ない話をする。それだけでも幸福度はあがります。ちょっと話せる方との人間関係を切り捨てていくのではなく、大切にしていくべきではないかと思います。

思うのは「迷惑」という言葉です。世間では「迷惑をかけてはいけない」とよく聞きますが、その裏には迷惑をかけられるのも嫌、関わってこないで…と遠ざけている風潮も感じます。人は一人では生きていけないという前提を忘れている気がします。
自分で棺桶に入る人は誰一人いないのですから。誰かに迷惑をかけるから、迷惑をかけられてもしょうがない、お互いさまだよね。じゃあ今のうちに人の話を聞いてあげよう、何かをしてあげようといった、人間関係を大切にしてほしいですね。
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