コロナ禍で高齢者の健康を見守る新しいサービスが、島根県雲南市で産声を上げている。全国でも珍しいという、医療人材による地域の見守りサービスとはどのようなものなのか。
コロナで“見守りサービス”の需要増加
雲南市三刀屋町で一人暮らしの高齢者のお宅を訪問した、看護師の宮本裕司さん。

看護師・宮本裕司さん:
こんにちは!ナスくるです。じゃあ、お熱の方を測らせていただきます
1カ月に2回この家を訪問し、体温や血圧、血中の酸素濃度の測定など体調のチェックをしている。

一通り終わると機器をしまって、なにやら談笑ムード。体調チェックは最初の5分だけ。訪問時間30分のほとんどはお話の時間だ。これはいわゆる訪問看護ではなく、コロナ禍で生まれた新サービス。コミュニティナースが来る「ナスくる」と名付けた。
ナスくるを利用する 古山冏さん:
人の名字が出てこない…
看護師・宮本裕司さん:
私も一緒ですよ!あの人誰だったかなって

「ナスくる」を手掛けるのは、雲南市のコミュニティナースカンパニー。2020年10月にサービスを開始し、看護師など5人が活動している。きっかけはコロナ禍で生まれたあるニーズだった。
コミュニティナースカンパニー・青山美千子さん:
コロナが流行する中で、ご家族と高齢者が頻繁に会えなくなり、不安に思う方がいると知りました

一般的な訪問看護は保険が適用されるため比較的安くサービスを受けられるが、医者の診断が必要。また、病気で通院が困難な患者などに対象が絞られる。

一方、ナスくるは保険適用外なため高くなるが、対象者の制限はなく誰でも看護師による見守りサービスを受けることができる。
体調や話した内容などを家族に共有
サービスを受ける古山冏(あきら)さんは、コロナワクチンを接種後、埼玉で暮らす息子から経過観察をしてほしいと要望があり、ナスクルの利用を始めた。
89歳の古山さんは元中学校教師で、お話が大好き。しかし、3年前に妻を亡くし話す機会が激減していたため、ナスクルが心の支えになっているという。

古山冏さん:
人と話す生活だったから、1人暮らしというのは苦しい。やっぱり人と話すとほっとします

冏さんの息子・古山徹さん:
あの年にしてはすごくしっかりしている人なんですが、一人になったのと高齢になったことで少し弱気になっている。そういう意味でも、話ができるということは本人も喜んでいる

訪問後、事務所に戻った宮本さんはその日のレポートを打ち込み始めた。毎回作成して家族に送っている。
看護師・宮本裕司さん:
きょうのご本人さんの様子や血圧の値、楽しかったことだったり、ご家族が安心してもらえるように丁寧にお伝えできれば

利用者は雲南市を中心に10世帯と始まったばかり。カンパニーは今後、県外にも拠点を作りサービスの拡大を目指している。
(TSKさんいん中央テレビ)