スイカ専用や雪だるま専用、そして編集部でも紹介した「水切り石専用鞄」など、いろいろな専用鞄を作っている土屋鞄製造所が、また新たな“専用の鞄”を発表した。
(参考記事:“水切り石”を運ぶためだけのバッグが登場!? 土屋鞄の遊び心と職人技が光るデザインにワクワクする)
その名も「鬼退治専用『カブト鞄』」。
この記事の画像(26枚)いつでも鬼退治に行けるよう、かぶると兜(カブト)になり、通常はショルダーバッグとして肩がけして使うことができる鞄なのだ。
これは、子どもの“理想の鞄”のアイデアを実現する企画「こんな鞄があったらいいな」の第2弾として作られたもの。
第1弾は、土屋鞄製造所社員の娘さん・なっちゃん(当時7歳)の「お花が好きなおばあちゃんに大きな花束を渡すための鞄が欲しい」という願いを叶えた製品「なっちゃんの花束専用カバン」だった。
小学生以下を対象にアイデアを募集し、今回の第2弾には応募総数128通の中から広島県在住のはるきくん(5歳)の「絵本に出てくる悪い鬼をやっつけたい!」「鬼退治に行くために、頭にかぶれるかぶとのような鞄が欲しい」というアイデアが選ばれた。
同社のデザイナーと職人が、はるきくんと打ち合わせをし、何度も試作を重ねてできた、世界にひとつだけの鞄となった。
「カブト鞄」は群を抜いてユニークなアイデア
通常はショルダーバッグとして“刀”なども収納でき、さらに兜となってもカッコいいデザインではないだろうか。
とても斬新なアイデアだが、なぜ同社は今回、はるきくんを選んだのだろうか?また鞄が完成したとき、はるきくんの反応はどうだったのだろうか? 株式会社土屋鞄製造所の広報担当者と、企画担当者や職人、デザイナーにも話を聞いた。
ーー「鬼退治専用『カブト鞄』」を選んだ経緯は?
広報担当者:
小学生以下のお子さまの理想の鞄のアイデアを募集する企画「こんな鞄があったらいいな」で、128点のアイデアが集まりました。たくさんご応募のあった作品のなかでも「悪い鬼をやっつけたい」という強い思いや、完成型が予想できないワクワク感、子どもならではの発想に共感をして、形にしたいと思い選ばせていただきました。
ーーはるきくんのアイデアを見たとき、どう思った?
企画担当者:
他の応募案はアイデアが被っているものも多かったのですが、群を抜いてユニークだったのと子どもならではの発想だなと思いました。また、完成形があまり予想できなかったので期待値も込めて。
職人:
とてもユニークなアイデアで、面白くなりそうと思いました。
デザイナー:
どうやって形にしよう、とアイデアを見た時から悩みましたが、同時にとてもワクワクしました。
ーーはるきくんとの会議はどうだった?
企画担当者:
工作が好きだということで、自分で作った作品やお絵かきなども積極的に見せてくれてこちらも創作意欲を刺激されました。いつもニコニコ笑顔でこちらの提案などにも答えてくれて嬉しかったです。
職人:
こちらの質問にもきちんと答えていて、カブト鞄のイメージがしっかりあるんだなあと感心しました。笑顔が可愛らしい子だなあと思っていました。
デザイナー:
自分の好きなものや作ったものを見せてくれたり、恥ずかしがりながらもカブト鞄を気に入ってくれてとても嬉しかったです。途中、「刀をしまうことができないかも」という場面になったとき、「それなら僕が作る!」と言っていてとても頼もしかったです。
ーー「鬼退治専用『カブト鞄』」について教えて
広報担当者:
普段は肩から掛けられるショルダーバッグでありながら、いつなんどき鬼が現れた場合にもカブトに変形して被ることもできる「帽子」でもある、「鞄」と「帽子」の機能を兼ね備えた2way仕様の鞄です。
ーーどうやって「カブト」→「ショルダーバッグ」にするの?
1:カブト吹き返し部分の金具とツノを外します。
2:ベルトの片方の金具を外し、二重から一重にして真ん中の金具に付け替えます。
(二重にしているときはカブトの顎部分、一重にすると長さも出てショルダーバッグのベルトに)
3:カブトを折り畳んで、両サイドの金具同士を留めて、鞄に変形、完成です
ーー刀を差す部分はどうなっている?
カブトを折りたたんだときにできる空洞のポケットに、刀を差し込むことができます。
いつでも“戦える”デザインと機能性
ーーこだわった部分はどこ?
広報担当者:
いつでも戦えるデザインと機能性がポイントです。スリムな見た目ですが、メイン収納部に加えて外ポケットも搭載。手裏剣はいざというときにすぐ取り出せ、冒険に必要な地図もすっぽり収まります。
素材はランドセルやバッグ製造過程で出た余り革をパッチワークのようにつなぎ合わせ、アクセントにはるきくんの好きな「星」をあしらっています。
つののパーツは両面どちらの色を表にしても良いです。 外から見える部分はカッコよくスエードを用いていますが、頭でかぶる部分は蒸れないようにナイロンを使用しています。
ーー大変だったことは?
職人:
鞄であり、カブトでもあったので、厚さをどうするか悩みました。 ショルダーをどうすれば簡単に短くできるかも悩みました。
デザイナー:
はるきくんのスケッチをできるだけ再現したくて、パッチワークのデザインにしました。可愛らしくなりすぎず、カッコよく強そうなカブトにデザインすることが難しかったです。刀の収納方法に一番悩みました。
ーー完成したとき、どう思った?
企画担当者:
職人とデザイナーって本当にすごいな!「はるきくん、本当にできたよー!」という気持ちでした。すごい。
職人:
なんとか形になって嬉しかったです。 はるきくんに喜んでもらえると良いなあと思いました。
デザイナー:
とても嬉しく、達成感がありました。はるきくんに被ってもらうのがとても楽しみでした。携わってくれた方々、形にしてくださった職人に大感謝です。
ーーはるきくんの反応はどうだった?
企画担当者:
とっても喜んでくれていて、刀を抜いたポーズなどもノリノリでキメてくれました。その後も「家でずっとかぶったり、鞄にしたりと肌身はなさずといった感じです」とお母様からご連絡いただいています。
デザイナー:
はるきくんの反応は写真でみましたが、すごく嬉しそうな笑顔で安心しました。カブトを被って凛々しくキメるはるきくん、とても似合っていてかっこ良かったです。
ーー社内ではどうだった?
企画担当者:
かっこいい!かわいい!と大評判でした。どうやって2wayにするんだろう?と鞄からカブトへ変形させながら「つのがリバーシブル仕様になってるね」「帽子の中が通気性がいいようにナイロン素材になってる!」などスタッフも職人とデザイナーの細部にわたるこだわりを発見して楽しんでいました。
また、大人も意外と似合うんじゃない?鞄として持つとき、結構普段着に似合いそう!とあててみたり、撮影するなど大変盛り上がりました。
職人:
鞄やランドセルを作っている中でのカブトだったので、皆気になっている様子でした。会長も興味を持ってくださったようで、「今の子は発想力が豊かで面白いなあ」とお話されていました。
デザイナー:
カブトのデザインはもちろん初めてだったのでどんな反応なのか不安でしたが、みなさん細かい点に気づいて褒めてくださりました。こだわってよかったです。
「カブト鞄」商品化と第3弾の予定は?
ーー販売する予定はあるの?
広報担当者:
大変ありがたいことに、販売してほしいというお声もいただいていますが、現在は予定はございません。ただ、昨年発表した「スイカ専用バッグ」は製品化を求めるお声を多くいただき、今年製品化した経緯もありますので、今後の反響次第では検討していきたいと思います。
ーー第3弾は決まっている?
広報担当者:
現状はまだ検討中ですが、今回続けてほしいというお声もいただいているため検討したいと思います。私たちもおこさまの理想を目にして刺激をいただいたため、ぜひ続けたいと思っています。
はるきくんのアイデアをしっかり再現し、さらに鞄として実用性も加わっている「カブト鞄」。11月29日まではランドセル専門店「童具店・広島」に展示されているので、実物を見たい人は訪れてほしい。