この1年はコロナによる緊急事態宣言下の期間が長く、また現在も外出自粛やテレワークなどを続けている人もいることだろう。

そのような状況の中、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)がコロナ禍のメンタルヘルスについて調査し、研究成果を発表した。

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研究は企業や大学と共同で、コロナ禍直前の2019年12月からパンデミック(世界的大流行)の最中となる2020年8月、12月、2021年4月の計4回の調査を実施。20代~60代の男女3935人(うち2274人が全調査に参加)から回答を得て、さまざまな精神症状の要素となる4成分を約1年半にわたって調べていた。

その結果、9種類(うつ病・不安・社会恐怖・社交回避・強迫性障害・アルコール依存・ネット依存・自閉症・ADHD)の精神症状を分析すると、コロナ禍の精神的影響は、大きく分けて以下の成分が関係していることがわかった。

・精神症状共通成分
・社会からの隔絶成分
・アルコール関連の成分
・不安・うつ気分の成分


そしてこの4成分が、それぞれ異なる時間経過のタイミングで「重症度」の変動が起きていたというのだ。

提供:国際電気通信基礎技術研究所(ATR)

最も懸念していたという「不安」や「うつ」を中心とした成分は、コロナ初期(2020年8月の追跡調査1まで)で悪化のピークを迎えた後は、快方に向かっている。

一方で、社会不安やインターネット依存に関係する「社会からの隔絶(孤立)」は1年半にわたって、基本的には徐々に悪化し続けており、最も重症度が高い結果になった。

提供:国際電気通信基礎技術研究所(ATR)

同研究所によると、コロナ初期にピークを迎えた「精神症状共通成分」と「不安・うつ気分の成分」はコロナによる収入の減少が大きく影響。また、徐々に悪化し続ける「社会からの隔絶成分」は、雇用者や自営業などの職種では悪化しにくいことがわかった。

なお「社会からの隔絶成分」においては、テレワークなどの勤務形態や同僚との繋がり方といった職場環境・人間関係の影響が大きいようだ。

また男女で比べると、コロナ禍で悪化した3つの成分すべてが、男性より女性の方が悪化しやすかったという。

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そして、コロナ禍で我々の精神状態にどのような影響があったのか、様々な精神症状を繰り返し観測することで、その全体像が明らかとなってきたとし、研究グループの一員である熊本大学病院の朴秀賢准教授が「コロナ禍が長引くにつれ、社交不安やインターネット依存の問題が出てくることが分かりました」とコメントした。

生活環境の変化が精神状態に影響

調査で、コロナ禍の社会からの隔絶(孤立)が時間の経過とともに徐々に悪化していることがわかったが、なぜなのだろうか? また、改善するにはどうすればよいのだろうか?

調査・研究を行った国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の担当者に話を聞いた。

ーー「社会からの隔絶」や「不安を感じる」のはなぜ?

我々のデータでは、不安など(不安・抑うつの成分)は経済的な影響(収入の減少)が大きく関係してました。社会からの孤立・隔絶はコミュニケーションの量や職種が大きく関係していました。

「不安」は(特に経済面での)先行きのみえない将来への漠然とした不安を、社会隔絶はコロナ禍による生活環境の変化による影響を反映したものかもしれません。


ーーなぜ「社会からの隔絶成分」が悪化し続けた?

悪化し続けている理由は明らかではありません。しかし、コミュニケーション量の変化や職種が「社会からの隔絶成分」の悪化と関係していました。このことから、コロナ禍が及ぼす人との交流や職場環境への影響は、簡単に慣れるものではなく、じわじわと精神状態を悪化させていくものなのかもしれません。

提供:国際電気通信基礎技術研究所(ATR)

テレビ電話などで社会との繋がりの維持して

ーー女性の方が悪化しやすい理由は?

一般に、女性の方がストレス反応性の精神的な問題が生じやすいということが知られていますが、コロナ禍においてなぜ女性が悪化しやすかったのかは不明です。

しかしながら、コロナ禍で自殺数の増加は男性と比較し女性でより顕著であったという報告もあり、女性の身体的・精神的な負担を軽減することが重要であるといえそうです。コロナ禍で女性に降りかかる身体的・精神的な負担の軽減が急務であるといえそうです。

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ーーでは、今後「社会からの隔絶」をなくすには、どうすればいい?

熊本大学病院神経精神科の朴准教授は、テレワーク中もオンラインで顔合わせする機会を増やす、会う機会が減った家族とは定期的にテレビ電話をするなど、社会との繋がりを維持するなどが重要であると指摘しています。


ーーコロナ前とこれからで、精神状態が悪化する人が増えると思う?

これまでの一般的な災害やストレス体験では、災害やストレス体験が終わって時間が経過してから精神状態が悪化する人がいることが分かっています。

コロナ禍においても同様に、コロナ禍が終息した後で精神状態を悪化させる人の存在が懸念されます。私たちの研究グループでは、長期的な影響も含めて引き続き調査していきたいと考えております。

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今回の研究で分かった、コロナ禍の精神症状を引き起こす要因の一つの「社会からの隔絶(孤立)」の悪化。
担当者も「じわじわと精神状態を悪化させていくものなのかもしれません」と語っており、感染者数が少なくなってきた今も安心しない方がいいのかもしれない。