11月19日から行われる全日本ジュニアフィギュアスケート選手権。

未来の日本スケート界を担うジュニアたちの登竜門であるこの大会の注目選手を、2015年、2016年の四大陸選手権銅メダリストで、今年現役引退を発表した本郷理華さんに聞いた。

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本郷さんが注目した男子・女子それぞれの注目ポイントと、木下アカデミーの強さ、そして4回転ジャンプを武器にノービスからジュニアに挑む注目株・島田麻央選手の強みとは何なのだろうか。 

ジュニアの先を掴むための大事な試合

全日本選手権2020での本郷理華さん

2013年の全日本ジュニアで優勝した本郷さん。今年は名古屋市の日本ガイシアリーナで行われるこの大会を、ジュニアの先をも決める大切な大会と解説する。

――ご自身も2013年に優勝した全日本ジュニアは、日本のスケーターたちにとってどんな舞台ですか? 

当時思っていたのは、まず全日本ジュニアで結果を出して、全日本選手権の出場権、世界ジュニア選手権の代表を掴むための大事な試合でした。もちろん全日本ジュニアで表彰台に上りたいというのがジュニア時代の大きな目標だったし、それを経験してからシニアに上がりたいという気持ちがあったので、次に繋げるために「まずはここでしっかりやるぞ!」と意気込んだ大会でした。 
 

男子・全日本ジュニアには、各ブロックで行われた選手権を勝ち上がり、東日本ジュニア、西日本ジュニア、それぞれの大会で優秀な成績を収めた26人の選手、さらに全日本ノービスで優勝した中田璃士選手など、ノービスカテゴリからの推薦が4人と、総勢30人が参加する。

左:三浦佳生選手、右:壷井達也選手

その中の注目選手として、本郷さんは東日本ジュニアで優勝した三浦佳生選手と、西日本ジュニアの王者・壷井達也選手の2人の選手の名前を挙げた。

三浦選手は昨シーズンの全日本ジュニアで2位表彰台の好成績、一方の壷井選手は18年の全日本ジュニアで優勝している。

男子注目は東西王者の2人

――男子の試合では、どんな戦いを予想しますか?

三浦選手は4回転ジャンプを含め技術的に頭一つ抜けていて、難しいジャンプを跳べる上に、シニアで戦っているという経験もあり、そこで一つ抜けている印象はあります。

壷井選手は今は4回転という武器が無いかもしれないですが、トリプルアクセルまでは安定して跳べています。またそれ以外の3+3やルッツ、フリップなどすべてのジャンプのミスが圧倒的に少なく、大きく崩れることは無いと思います。どちらもシニアで戦えるレベルですね。

ジュニアではルール上ショートプログラムでの4回転は禁止されているので、ショートで壷井選手が勝つ可能性もあります。注目ポイントは、ジュニアの課題の中で三浦選手の強みをすべて生かしきれるか、という点になるかもしれません。

三浦佳生選手

――三浦選手はどんなスケーターですか?

ジャンプに関しては、どちらかというとふわっとしたジャンプよりも、一気に行く感じです。見ていて大きく感じるような、勢いのある男らしいダイナミックな力強いジャンプですね。
今4回転ジャンプを3種類飛べているので、5種類目指して練習していると思いますし、ダイナミックなジャンパータイプの選手になりそうな予感があります。

壷井達也選手

――一方の壷井選手についても教えて下さい。邦和スポーツランドの後輩ですよね?

壷井選手は本当に小さい頃から知っています。当時はルパン三世みたいな髪型をしていて、とても似合っていました。頭もいいし、すごく考えて演技をしていて、落ち着いて客観的に自分のことを見ている印象です。私とは180度違って(笑)。

テンションを一定に保てる落ち着いた感じで、それがスケートにも出ていて、調子の波がそこまでありません。本人が調子が悪いと感じていても、周りから見ると「それだけできていたらいいんじゃない」という感じです。波があまりないのでそこが強みだと思います。

――壷井選手は近畿選手権で脱臼していましたが、影響を感じましたか?

あまり感じませんでした。本人もそこまでといったような雰囲気で、「近畿ではそういうことがあったけど、西は西でやるし」といった感じで。特に引きずらずに、切り替えてやっている印象です。

――他に表彰台に食い込んできそうな選手はいますか?

吉岡希選手は4回転がハマったら凄いですし、片伊勢武選手の正統派タイプの演技も注目です。

大島光翔選手

大島光翔選手はショートもフリーも生き生きとしてエンターテイナーな感じで、トリプルアクセルも跳べ、4回転も挑戦していると聞きますし、表彰台争いを面白くしてほしいですね。
大島選手は壷井選手も含め一緒に合宿をした事があって、良く3人でジャンプ対決をしていました。そのメンバーが全日本ジュニアで表彰台争いをしているのを見ると、感慨深いです。

中田璃士選手

ノービスから出場する中田璃士選手はノービスで2連覇もしていて、どんな演技をするのかというワクワク感があります。ジュニアのお兄さんたちに混じって、どこまで食い込んでくるのか期待ですね。

女子で注目集まる木下アカデミー

――続いて女子はいかがですか?

木下アカデミー勢が優勝争いの中心にいると思います。その中に東日本ジュニアで優勝した住吉りをん選手や、千葉百音選手がどこまで食い込むかという印象ですね。

木下アカデミー濱田コーチと島田麻央選手

本郷さんが口にした木下アカデミーとは、2020年4月に設立された日本初のスケートアカデミー。宮原知子や紀平梨花など、世界のトップで戦う選手を数多く育て上げた、濱田美栄コーチがゼネラルマネージャーを務める。

今年のジュニア女子・近畿選手権では1位〜5位までを木下アカデミー勢が独占、西日本選手権でも6位までに所属選手5人が名を連ねた。

――木下アカデミーの凄さについて教えてください。

個性がありつつも、みんな総合的にバランス良く、ジャンプに力を置きすぎずに、それぞれの個性を活かしたプログラムだし、先生も生徒それぞれの個性を理解してやっている気がします。同じチームだけど選手それぞれの色があるから、見ていて面白いです。ジャンプやスピンなど技術力の高さはもちろんですが、次から次へと有望な選手が出てくるなという印象ですね。

それぞれの選手の個性を活かしながらも、同じ練習環境の中で、レベルが高いのが当たり前という中で切磋琢磨しているので、だからこそみんなうまくなっていくんだなと思いました。

吉田陽菜選手

――その中で表彰台に登りそうな選手は誰でしょうか?

一番注目しているのは吉田陽菜ちゃんです。ジュニアで昨季表彰台に上っていて実力はあるし、トリプルアクセルが2本決まったら相当大きいです。ジャンプ以外のところもすごく滑りもきれいでバランスも良く、スピードもあって、決まったジャンプは加点が付くと思いますし総合的にいい点数が出ると思います。

もともと元気いっぱいのイメージが有りましたけど、今シーズン見た感じすごく大人っぽくなってきて、一個一個の滑りが伸びていて、ジュニアだけどスピードもあり、元気もありつつ、スケーティングスキルやエッジの正確さもあった印象です。

島田麻央選手

また木下アカデミーからは、日本女子史上3人目となる、試合での4回転ジャンプを成功させた島田麻央が出場する。昨シーズンは全日本ノービスで優勝し、推薦で出場した全日本ジュニアで3位。今年は全日本ノービスでも4回転を成功させ、浅田真央以来となる2連覇を果たし、勢いを持って全日本ジュニアに挑戦する。

「島田選手は、優勝しそうな勢いがあると思います。ノービスとは思えない技術の高さを持っているし、スケーティングもジュニアの選手の中でも見劣りもしないくらいスピードがあり、表現も上手で丁寧な滑りだった。ノービス枠として考えずに、ジュニアのメンバーとして考えたほうがいいんじゃないかというくらいです」

島田麻央選手

本郷さんはそう話した後、「ただみな同じ練習環境なので、日頃の練習から戦いは始まっているんでしょうね。やっている方は大変だと思いますが、見ている方としては楽しみです」と注目ポイントを挙げた。

東日本勢の注目選手とアイスダンス

住吉りをん選手

――一方、東の女王住吉選手はいかがですか?

身長とか見た目も含めて大人になっているし、演技自体も大人っぽくなっています。ジャンプの質も、高さが出てきて、軸が一個になるという見本のようなジャンプになっています。一個一個の動きもバレエを見ているような、指先まで意識して、自分の体よりも大きく見えるような動かし方が上手だなと感じています。
ジュニアなのにジャンプ以外のところまでしっかり意識してやれている感じがするので、一つのプログラムとしての質が高いし、なによりスピンが早くて上手だから、加点も期待ができると思います。バランスが凄くいい万能型な印象ですね。

千葉百音選手

そして千葉選手は、ブロック大会の直前の1ヶ月が思うように練習できなかった(※千葉選手の練習リンクがコロナ禍で閉鎖)と思うし、その影響が大きい中で東日本も3位に入り、全日本ジュニアに進出するということで、大変な状況の中でもしっかり戦って来たのは自信にしてほしいです。
逆に今から全日本ジュニアに向けて練習できるなら、もっとできるんじゃないかという勝手な期待を持っています。充実した練習をして、東北勢のためにも頑張ってほしいと思います。

――全日本ジュニアはシングルだけではなく、アイスダンスにも5組のカップルが出場します。

アイスダンスは自分でもやってみたいとたまに思います。難しそうではありますけど、一人でできない演技がカップルだとできたり、表現の幅が広がって、試しにやってみたいというくらい興味はあります。

アイスダンスはエッジの深さやステップの正確さが大切ですし、最近ではリフトもダイナミックになってきていて、どんどん変わってきています。またシングルとは違う面白さとして、プログラムの完成度を見るのもいいと思いますし、2人の掛け合いを見るのもいいと思います。いろいろな楽しみ方が、アイスダンス、ペアも含めカップル競技にはあると感じています。
 

冒頭で本郷さんが口にしたとおり、この全日本ジュニアは日本一を決定する大会というだけの位置付けではなく、世界へとつながる大会でもある。

ロシア勢を筆頭に、若い年代から高難度ジャンプが見られる昨今のフィギュア界で、日本の若き世代も決して負けてはいない。2026年のミラノオリンピック、そしてその後のオリンピックで活躍する選手たちの躍動する姿に注目だ。 

全日本選手権2020での本郷理華さん

本郷理華 25歳
2015・2016四大陸選手権銅メダル。昨シーズン限りで現役を引退。
現在はアイスショーの出演や後進の育成、解説業など、幅広く活動を行う。