昨シーズンの世界選手権で表彰台を独占したロシア勢を中心に、女子フィギュアスケート界は今、4回転ジャンプの時代へと突入している。

時代の流れはここ数年で大きく加速、トップの選手たちはジュニア時代から4回転を操り、もはや大技なしでは世界と戦うことは難しくなった。

これまで日本で4回転ジャンプを試合で成功させたのは、安藤美姫と、昨年の紀平梨花の2人のみ。

しかし、わずか12歳で4回転トゥループを成功させた少女がいる。

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ジュニアよりもさらに下、ノービスAカテゴリーに出場している島田麻央だ。年齢制限により北京五輪の出場資格を持たないが、2026年ミラノオリンピックでの活躍が期待される世代である。

目標はミラノ五輪での優勝

島田麻央が今年6月、ディレクターの手帳に書いた、将来の目標がある。

2021-22
・4回転2本を曲にいれること
2022-23
・3Aを完璧にしたい
・全日本ジュニアで優勝
・世界ジュニアで表彰台
2023-24
・4回転サルコウを習得
・世界ジュニアで優勝
2024-25
・4回転ルッツを習得
・全日本で優勝
2025-26
・オリンピックで金メダル

2026年にミラノで行われる冬季オリンピックで金メダルを取ることを最終目標に、毎シーズン達成すべきことを、12歳にしてすでに考えていたのだ。

浅田真央さんの大ファンだった母に、「麻央」と名付けられた少女が本格的にスケートを始めたのは5歳の時だった。

幼い頃からフィギュアスケートに親しみ、小学4年生で初めて出場した全国大会では5位。その翌年にはさらに大きく得点を伸ばし、初優勝。向上心は止まることなく、「もっともっとうまくなりたい」という一心で、練習拠点を東京から京都に変更することを決意した。

「(友達と離れることは)寂しいんですけど、夢があるからそこに向かって頑張ろうと思って」

濱田コーチと島田

東京に父を残し、母と妹と3人で関西へ移り住んだ島田。指導を仰いだのは、宮原知子や紀平梨花など世界のトップで戦う選手を数多く育て上げた、濱田美栄コーチだ。そして2020年4月に設立された濱田コーチがゼネラルマネージャーを務める日本初のスケートアカデミー「木下アカデミー」に籍を置くことになった。

環境の変化で進化したスケート

「同い年で上手い子がいるから、自分も頑張ろうと思う。成長できるから良いな」

島田がそう話したように、全国から有望選手が集まる木下アカデミーでは、氷上練習だけではなく陸上での筋力トレーニングや、表現力を磨くバレエやダンスのレッスンなども同じ施設内で取り組むことができる。

一般的にはリンクでスケートの練習をしてからジムに移動して筋力トレーニング、さらに移動してバレエやダンスのレッスンを行うなど、それぞれ別の施設で取り組む選手が多い中、フィギュアスケートに必要な全てに集中して取り組める環境が整っているのが大きな特徴だ。

少人数で行われる氷上練習も、選手たちにとってメリットが大きい。

「ジャンプは少々混んでいても部分部分で練習することができるが、スケーティングはきれいな氷で十分なスペースで練習するほうがエッジの伸びが良くなるので、基本的なスケートが伸びる」と濱田コーチは言う。

そして基礎的なスケーティング能力が伸びることで「体力を使わずにスピードが出るジャンプが跳びやすくなる」と続けた。

実際に島田も昨年11月に行ったインタビューで、環境の変化による効果を口にしていた。

「同い年で上手い子がいるから、みんなで練習は頑張っていて。こっちに来てからは1日3回とか曲をかけて練習ができるので、良いなと思いました。

(スケーティングもうまくなってきている?)少し思います。ジャンプを跳んだあとに流れたら、結構スピードが出てたなと」

20年の全日本ノービスAは歴代最高得点で優勝

ライバルたちと切磋琢磨する日々を過ごしながら、昨年10月に行われた全日本ノービス選手権で当時のノービスA歴代最高得点の108.42点で優勝すると、飛び級で全日本ジュニアに推薦出場。

20年全日本ジュニアで3位(右端が島田)

通常ノービスカテゴリではフリープログラムしか行われないため、ジュニアカテゴリ出場のためにショートプログラムも特訓した。その成果もありトータル173.44点を叩き出し、女子では安藤美姫以来20年ぶりとなる3位表彰台に登り、一躍脚光を浴びることとなった。

日本女子初の4回転トゥループ

 

そんな島田麻央にさらに大きな注目が集まったのは全日本ジュニアの4カ月後だった。
シーズンの最終盤、3月に行われた京都府スケート選手権で4回転トゥループを成功させたのだ。

4回転ジャンプは安藤美姫と紀平梨花以来の3人目。そしてその2人は4回転サルコウだったため、4回転トゥループを成功させたのは日本女子で初という快挙だ。冒頭に持ってきた4回転トゥループは2.61点の加点、その出来栄えも高く評価された。その後もミスなくスピードある演技を見せ、117.74点というノービスでは驚異の点数を叩き出した。

「試合の前日から調子が上がってきて、本番でこうやってきれいに決められたのはすごく嬉しいです。ハーネスで空中での感覚と降りる感覚を掴みました」

4回転ジャンプを成功させた昨シーズンが終わったタイミングで、これからの目標について聞いたところ、島田が書いたのが冒頭のミラノオリンピックまでの目標だ。

「1年毎じゃないんですけど、ミラノまでに何を習得したりするかは考えています」と、迷った様子も見せずにサラサラと書いた島田。

「今シーズンは4回転2本をプログラムに入れたいなと思います。それで来シーズンはトリプルアクセル」

近畿選手権での島田

その言葉の通り、オフシーズンは4回転トゥループに加え、4回転サルコウの習得や、恵まれた環境でのスケーティングに励んでいた。そしてその成果が現れたのが10月10日に行われた近畿選手権だ。ここでも冒頭の4回転トゥループに成功すると、その後の3回転ルッツ+3回転トゥループのコンビネーションなどノーミスの安定した演技を見せ、120.83点という圧倒的な優勝をしてみせた。

「前に4回転が入った時は117点だったんですけど、今日は120点だったので、4回転以外にも進歩したところがあったからだと思うので、そこが点数に表れて良かったです」

「(プログラムも大人っぽいものになったがスケート以外の練習も?)バレエを始めて、先生に振り付けをみてもらう機会が増えたので、そこが良かったんじゃないかと思います」

目指す世界と五輪の金メダル

島田が大切にしているものの一つに浅田真央のサインがある。憧れの選手を目の前にして「一緒の名前だね」と声をかけられたというが、自らを人見知りな性格という島田は、母がつけてくれた名前だと伝えられなかったという。

そんな島田は、中学生になる前のインタビューで、フィギュアスケート以外に頑張りたいことを聞くと、“英語”を挙げた。

その理由は「世界の大会に行った時に、世界の選手と喋れるようになりたい」からだ。控えめな性格の少女は、スケートを始めた頃の夢だというオリンピック優勝に向け、世界に羽ばたく準備を始めている。

島田が10月23日に出場する全日本ノービスで好成績を残せば、今年も全日本ジュニアへの道が見えてくる。どんなスケートを見せてくれるのか楽しみだ。