静岡県内では、新型コロナウイルスの新規感染者数が1カ月以上10人未満となっている。
第6波の到来が懸念される中、なぜこれほどまでに感染者が激減しているのか。
ウイルスの研究者と感染症の専門医に、それぞれの視点から話を聞いた。
人出が増え、徐々に日常を取り戻す

猛威をふるった新型コロナウイルス。県内でも一時は1日の新規感染者数が600人を超えるなど感染拡大が続いていた。
しかし9月以降徐々に減り始め、現在では一桁台が続く落ち着いた状況だ。

緊急事態宣言の解除から1カ月あまり。静岡市の中心市街地の人出も徐々に増えてきた。
街の人たちの生活はどう変わっているのか。
女性:
なんとなく安心して出れるような感じ
男性:
ちょっと出かけれられるようになった気がするので、これから旅行とか考えようと思ってますけど、ちょっとまだ怖いですね
高校生:
部活が前までできなかったけれど、できるようになってきています
男性:
ワクチンを打って気が緩んだと言ったら変ですけど、外に出る機会は増えたと思います
静岡市葵区呉服町にある居酒屋では...
ハマーカーン・吉原健太店長:
緊急事態宣言が明けてから、徐々に増えてきた感じはありますね。(売り上げが)3倍くらいですかね

しかし新型コロナ前の売り上げにはまだ届いておらず、忘年会シーズンを万全の感染対策を取りながら迎えたいと話している。
ハマーカーン・吉原健太店長:
料理を小分けにしたり、要望があれば席を離して案内したり、個室の需要もあります。お客様にいっぱい来てもらった方が楽しみがあるので、来てほしいですね
第6波への不安も残るが、徐々に日常を取り戻しつつある。

ウイルス研究者が指摘「感染力失っている」
なぜ感染者数がここまで急激に減少しているのか。
静岡・三島市にある国立遺伝学研究所。ここでゲノム医学の研究をしている井ノ上逸朗教授に見解を聞いた。
井ノ上逸朗教授:
ワクチン接種が普及したとか、みなさんが意識したというのもありますし、人流がどうというのもありますけど、そもそもウイルスが感染力を失ってると思う

井ノ上教授は、日本でいま「ウイルスの死滅」が起きていると説明している。
アジア・オセアニアの人が持つ“活発な酵素”が影響か
井ノ上逸朗教授:
「NSP14」は修復酵素になります

井ノ上教授によると、ウイルスが増殖する際にゲノムをコピーすると、ミスで変異が起きることがある。
ウイルスにはこの変異を修復する酵素があるが、この修復酵素の機能が低下するとウイルスに変異が蓄積されていく。
変異が蓄積されたウイルスは増殖できなくなり、死滅するということだ。
修復酵素の機能低下について井ノ上教授は、人間がもつ「APOBEC(アポベック)」という酵素が影響している可能性があるとしている。
特に アジアやオセアニアの地域の人が持つこの酵素は、働きが活発といわれていて、日本のウイルス減少との関係が研究されている。

一方で、今回死滅しているデルタ株とは別の変異株の存在を懸念している。
井ノ上逸朗教授:
アルファ株はまだ元気だと思ってください。
(Q.アルファ株がまた流行する可能性があるのか?)
可能性としてあります。それを心配しています

現在、感染が再拡大している海外からのウイルスの持ち込みにも警戒が必要だ。
井ノ上逸朗教授:
東アジアは患者さん減っているが、まだまだヨーロッパやアメリカではそういう状況ではないと思いますので、入国管理、検疫はしっかりしてほしいなと思います
感染症の専門医「3回目接種のあとはマスクなしの生活が」

感染者の減少には、ウイルスに要因があるとする井ノ上教授の見解。
この見解について、浜松医療センターの矢野邦夫医師に話を聞いた。
矢野邦夫医師:
多分デルタ株はあちらこちらの国から入り込んできたと思うので、一つのウイルスが日本に入り込んで、一斉に消えていくというのはちょっと考えにくいのかなと思います
矢野医師は、感染者の減少には社会的な感染対策が大きいと話す。

矢野邦夫医師:
やはりマスクとワクチンの効果が大きいと思っています。ひとつはワクチンが急速に接種され70%を超え、しかも日本ではみなさんマスクきっちりはめていると。この2つの面で、ほとんど説明できると思います
矢野医師はワクチンを接種していない子供たちの間で感染が広がる不安はあるものの、3回目の接種後にはマスクのない生活が戻ってくると予想している。
矢野邦夫医師:
ブースター接種を皆さんが打って、年に1回か2回接種を続けていくならば、マスクのない生活に戻れるんじゃないかと思ってます。時期は来年(2022年)の7月・8月かと思っています

2人の専門家の指摘のとおり、新型コロナが収束に向かい、1年後にはマスクをしなくてもいいようなこれまでの日常が戻ってくることが期待される。
(テレビ静岡)