3歳の息子を虐待の末に死亡させた事件の裁判。福岡地裁小倉支部は11月5日、20代の元夫婦に懲役12年の判決を言い渡した。

仕事をしていて暑くて、ずっとイライラしていた

保育園の発表会で元気な姿を見せるのは、2020年8月に亡くなった末益愛翔ちゃん。

亡くなった末益愛翔ちゃん
亡くなった末益愛翔ちゃん
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その母親の歩被告(23)と元夫で愛翔ちゃんの義理の父親である末益涼雅被告(24)は、福岡県中間市の自宅などで、当時3歳だった愛翔ちゃんを暴行し死亡させたとして傷害致死などの罪に問われていた。

そして、11月5日午後3時、福岡地裁小倉支部が判決を言い渡した。

福岡地裁小倉支部・井野憲司裁判長:
主文、涼雅被告、歩被告両名を懲役12年とする

11月2日、判決を前にした涼雅被告は拘置所で記者の接見に応じている。

記者:
なぜ死ぬまで虐待しなければならなかった?

末益涼雅被告:
分からない。仕事をしていて。暑くて。ずっとイライラしていた。自分でもコントロールできなくなっていた

涼雅被告は記者の目をじっと見て、淡々と質問に答えた。

元妻について「理解できない」 174カ所の傷痕は…

検察側の冒頭陳述によると、涼雅被告と歩被告はインターネットで知り合って交際を始めたという。2020年4月頃には、歩被告は愛翔ちゃんを連れて涼雅被告と同居を始め、2人は結婚。そのあとすぐ、愛翔ちゃんに対する暴行が始まったとされている。

記者:
愛翔ちゃんへの暴力は、しつけだと思っていた?

末益涼雅被告:
はい。けど今は、たたいたらもう虐待だと思う。口で言えばよかった

裁判で起訴内容を認めている涼雅被告。一方で、歩被告は「私自身手は加えておらず、共謀の事実はありません」と一部を否認している。

末益涼雅被告(左)と歩被告(右)
末益涼雅被告(左)と歩被告(右)

記者:
歩被告は執行猶予を求めている

末益涼雅被告:
愛翔に申し訳ないと思っていたら、そんなこと言えないはずです。理解できない

末益涼雅被告:
あの人(歩被告)は、涙を流して同情してもらおうとしている。僕だって泣きたかった。けど堪えます。自分はやられた方ではなくて、やった方だから

また検察側は司法解剖の結果、愛翔ちゃんには245カ所の傷痕があり、そのうち174カ所がタバコの火かスタンガンによるものである可能性が高いと指摘。2人の「暴力と虐待が日常化していた」と強調している。

この174カ所の傷痕について、涼雅被告は「歩被告がやったと思う」と主張した。

末益涼雅被告:
僕がしたのではない。遺体の写真も見ましたが、根性焼きの痕が細い。僕は太いタバコを吸っている。あれは女物です。歩がやったと思う

涼雅被告は174カ所の傷痕について「歩被告がやった」と主張
涼雅被告は174カ所の傷痕について「歩被告がやった」と主張

記者:
なぜ歩被告がやったと思う?

末益涼雅被告:
楽しんでいたように見えたから

記者:
やっていない?

末益涼雅被告:
やっていないです。スタンガンも持っていないし。自分がしたみたいに思われたくない

「家庭内の序列はペットが上」耳を疑う言葉

裁判では、歩被告の虐待報告などが記された「LINEの内容」も明らかにされている。

【LINEの内容(2020年7月19日)】
歩被告:

アバラのとこ蹴ったら吹っ飛んだ(笑)

【LINEの内容(2020年7月31日)】
歩被告:

ももちゃん(ペットのフェレット)の砂食わせてみた。おいしくないってさ

【LINEの内容(2020年8月10日)】
歩被告:

うごききらんのか。痛いみたい

末益涼雅被告:
でしょーね。思い知れてね♡

このLINEのやり取りについて、涼雅被告は「虐待は楽しんでいない」と否定した。

記者:
LINEのやりとりでは、虐待を楽しんでいるように見えた

末益涼雅被告:
それはないです。怒らなくちゃいけないと思っていただけ

「虐待は楽しんでいない」と否定した涼雅被告
「虐待は楽しんでいない」と否定した涼雅被告

しかし、記者が次にした質問に涼雅被告は信じられない言葉を発した。

記者:
ペットのフェレットは、いつ飼い始めた?

末益涼雅被告:
歩被告と一緒に住み始めてからです

記者:
フェレットのモモちゃんを飼ってから、愛情はモモちゃんに移っていったということはない?

末益涼雅被告:
…そうかもしれない

記者:
家庭内での序列は、愛翔ちゃんよりモモちゃんの方が上だった?

末益涼雅被告:
…はい。上だったです。モモちゃんへの愛が上だったかもしれません

歩被告は精神的なDVを受けたと主張

検察側は「2人は互いに暴行を容認し助長していった」として、それぞれに懲役13年を求刑していた。

これに対し、涼雅被告の弁護側は懲役7年が相当と主張し、歩被告の弁護側は涼雅被告の心理的DV下にあったとして、執行猶予付きの判決を求めていた。

記者:
裁判の中で、歩被告は精神的なDVを受けてきたと言っている

末益涼雅被告:
別に部屋に閉じ込めていたとかでもないし。精神的なDVをしていたとは思っていない。精神的なDVは言い訳。歩被告には、ある程度したいことをさせていた

記者:
涼雅さんは束縛が強い方?

末益涼雅被告:
別にそんなことないと思います。これまでの彼女にも言われたことないですし。実際、歩被告は浮気してたでしょ。刑事さんから(聞きました)。愛翔が病院に行った時も、他県に彼氏に会いに行っていたらしいです。あり得ない。実の子が重体なのに男のところに行くのは、分かりません

記者:
捕まってから離婚したのは、それが原因?

末益涼雅被告:
そうです。信じてきたのに裏切られた

記者:
愛翔ちゃんを殺してしまったことが離婚の原因ではない?

末益涼雅被告:
はい。捕まったことも要因としてありますが、一番大きかったのは浮気をしていたこと

そして迎えた判決公判。福岡地裁小倉支部の井野憲司裁判長は「傷害致死事件にかかる暴行は、それまでの暴力の延長線上にある」と2人の共謀関係を認定した。

2人の共謀関係を認定
2人の共謀関係を認定

福岡地裁小倉支部・井野憲司裁判長:
思いのままにいかないことで行った身勝手で理不尽な犯行。むごいの一言に尽きる

福岡地裁小倉支部・井野憲司裁判長
福岡地裁小倉支部・井野憲司裁判長

「尊い命を奪い去った」と2人を断罪し、いずれも懲役12年の判決を言い渡した。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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