衆議院が解散され、総選挙は10月19日に公示、31日に投開票となる。与野党各党は総選挙に向け、新型コロナや経済への対策などを柱とした公約を次々に発表している。
BSフジLIVE「プライムニュース」では、自民党の高市政調会長と立憲民主党の泉政調会長を迎え、両党が国民に訴える政権公約について伺った。
野党は与党のコロナ対策について、内容よりもタイミングに疑問
この記事の画像(9枚)新美有加キャスター:
喫緊の課題である新型コロナ対策。両党公約の主な政策は、自民党は非正規雇用者、子育て世代、学生などコロナ困窮者への経済的支援を挙げ、人流抑制や医療提供体制確保のために行政がより強い権限を持つための法改正などを掲げています。一方、立憲民主党は総額30兆円を超える補正予算の編成を掲げ、低所得者に12万円の現金給付を挙げています。大きな違いは?
泉健太 立憲民主党 政調会長:
自民党と立憲民主党の違いとしては、我々からすると「なぜ」という場面が今年は多かった。例えば、2021年3月や6月の緊急事態宣言解除のタイミング。また我々は、3月の時点で持続化給付金の再給付法案を出している。なぜ今年給付しなかったのか。
高市早苗 自民党政調会長:
自民党の政策にはその他、コロナ禍で大きな影響が出た事業者に対して、これまでと異なり業種や地域を限定しない形で、事業規模に応じた給付金を支給することも入っている。早くから30兆円規模という数字も出ていたが、きちっと積み上げた結果を選挙後の補正予算で速やかにお示ししたい。選挙前にあまり金額ありきで言ってしまうと引き上げ競争になってしまうので。
また、子育て世帯だけではなく非正規雇用で大変厳しい状況の方、学生さんや若い方でもお困りの方がいるので公約に盛り込んだ。
コロナ対策の強制力について高市氏「最悪の場合のための強い法律を用意すべき」
反町理キャスター:
自民党のコロナ対策公約にある、より強い権限を持つための法改正。岸田首相の発言に、欧米諸国のような厳しいロックダウンは馴染まないという話があったが。
高市早苗 自民党政調会長:
党の立場からあえて言えば、法律を作るには何カ月もかかる。新たな強い変異株やエボラ出血熱のようなものが入ってくる最悪の事態を想定し、最悪の場合に使う強い法律を1本用意しておくべき。これは憲法に関わる議論にもなるので、各党で合同チームを作った方がいい。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
もっと先にやるべきことがある。2020年4月の第1波では、学校も休校にして商業施設もストップさせたが、それもやらずに今年を過ごしている。出入国管理も厳しくするどころか今は緩くしている。
反町理キャスター:
危機管理として最悪の状態を想定した、備えとしての強制力の話を高市さんはされている。それ自体は否定される?
泉健太 立憲民主党 政調会長:
普通の感染症では使わないなど限定がかかれば安心材料になる。そこは単純に否定をするのではなく、各政党が可能性を探ることはあっていいと思う。
法人税への高市私案は「内部留保でなく現預金に課税、賃上げには優遇措置」
新美有加キャスター:
経済対策について。自民党は新しい資本主義として「分厚い中間層を再構築」をテーマに、労働分配率の向上に向けて賃上げに積極的な企業への税制支援。立憲民主党は「1億総中流社会の復活」を掲げ、具体的には時限的に年収1000万円程度まで所得税の実質免除、時限的な5%の消費税の減税。一方で法人税に累進税率を導入し、金融所得課税の強化なども挙げています。
反町理キャスター:
立憲民主党の減税の財源について。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
正直に言うと、金融所得課税や法人税の累進の税収は同時期には発生せず、後ずれする。赤字国債を発行してでもこの政策を行い、経済を回していく決断をした。
反町理キャスター:
岸田首相は、一時は課税の見直しなどで高額所得者が優遇される「1億円の壁」を破ろうと言っていたが、トーンが落ちてきているように見える。自民党としては。
高市早苗 自民党政調会長:
今やって投資市場を冷え込ませてもいいことはないという考えでしょう。自民党は年末の税調で法人税に手を突っ込む予定。まだ党の税調に申し上げていない私の案だが、現金として残っていない場合の多い内部留保ではなく、現預金に注目している。四半期ごとの数字を見ると、少なくとも230兆円を超えている。
反町理キャスター:
なるほど。
高市早苗 自民党政調会長:
内部留保は大した現金ではない。韓国も懲罰的な内部留保課税を行ったが、企業はそれを配当に回し、労働者にはお金が回らず失敗した。逆に現預金は結構たくさんある。これに課税をする代わりに、例えば賃金を上げたらその分は免除する方法もある。いずれにしても賃金が上がる環境を作りたい。
敵の攻撃無力化へ 電磁波・サイバー・宇宙の政策は与野党一致か
新美有加キャスター:
安全保障政策について。自民党の政権公約で、総裁選で出ていた「敵基地攻撃能力」という言葉が明記されていないのはなぜでしょうか。
高市早苗 自民党政調会長:
先制攻撃と混同されないように、「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力」という表現にした。他に手段がない場合は攻撃せざるを得ないが、これまで政府としてもこれは自衛権の範囲に含まれると答弁してきた。
新美有加キャスター:
立憲民主党は、この能力の保有については。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
ミサイルは移動式発射台がスタンダード。敵基地攻撃は簡単ではない。実現性を確かめてから賛否を判断しなければ。
高市早苗 自民党政調会長:
撃つ場所は必ずしも基地ではないため、公約には相手領域内と書いた。無力化としては例えば、衛星の管制システムを攻撃する方法、ジャミングで完全に位置情報を狂わせる方法などもある。相手の領域内で撃たせることを阻止、または飛んだとしても正確に飛ばない状況を作ることを想定しています。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
無力化の話と敵基地や中枢への攻撃は別の話。だが、敵の攻撃を妨害するというものであれば、議論していくべきことはある。我々も公約の中に電磁波・サイバー・宇宙といったものは入れており、国際ルールなど仕組みづくりをやるべきとは言っている。
高市早苗 自民党政調会長:
電磁波・サイバー・宇宙、一致するじゃないですか。国民を守るためにあらゆる備えをする。そのためにはやはり一定の防衛費、研究費も必要だという考え方。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
自民党のように、GDP比2パーセントを念頭にした防衛費とまでは我々は当然言わない。金額ありきではなく、本当に防衛的に必要な観点から必要なものを購入することを突き詰めていく。
高市早苗 自民党政調会長:
防衛費が令和4年度からいきなりGDPの2%、10兆円になるわけではない。衆議院の任期4年間で着手もしくは実現する。最初に金額ありきではないのはおっしゃる通り。ただ、EU並みのレベルにするならやはり2%ぐらいになる。人口で割るのが適切かわかりませんが、今の日本の1人あたりの国防費は4万円。アメリカは22万円、韓国は12万円。圧倒的に少ない。新しい装備を整えるとか研究開発予算を積もうとしても、とても足りない。
立憲民主党の公約は辺野古新基地建設「一旦中止」で「断念」ではない
反町理キャスター:
立憲民主党の公約で、辺野古新基地建設を中止。これは一体、何を根拠にどうやって中止するんですか。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
沖縄県民の民意を尊重することがまず1つ。そしてもう1つは、計画が組まれてからもう20年経ち、辺野古の軟弱地盤のことも含めて、非常に困難で高額な工事が続いていると懸念の声が出ている。日本政府が考え方を変えるなら、アメリカと真摯に議論をして抑止力を維持するという前提の中で、辺野古の基地がなくなることもあり得る。
反町理キャスター:
高市さんいかがですか。
高市早苗 自民党政調会長:
ずっと議論が続いてきて、辺野古移設を正式に閣議決定したのは2010年の民主党政権時。なぜ今こういう話になるのか。アメリカの共和党も民主党も移設については賛成し、この方法しかないと進んできた話。中止するなら代替案を。また、普天間基地周辺の方々の民意は、一刻も早くこの危険な基地をなくしてほしいというものだと思いますよ。
反町理キャスター:
鳩山由紀夫元首相は「最低でも県外」と言ったが、結局は「学べば学ぶほど(抑止力の重要性がわかった)」と閣議決定に至った。その流れをくむ政党が、総選挙で政権をとったらまたその状態に戻すと言っているように聞こえる。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
期限を切ってしまったところは外交的にも政治的にも意味がなかった。「最低でも県外」もマニフェストになく、演説でおっしゃった。党全体に共有されていた認識ではないところからスタートしていた。政権を取るまでに準備をしてこられなかったことが大きい。
反町理キャスター:
すると、今回はもう万全の準備をした上で辺野古移設の中止を言っているというんですか。かえって泥沼に落ちていくような話ですよ。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
新基地建設を中止という表現だが、我々はまず一旦工事を中止をすると言っている。そしてアメリカと協議する。基地建設を断念すると宣言しているわけではないです。
反町理キャスター:
沖縄県の方からのメール。「アメリカとの交渉がうまくいかなかったらまた工事を始めるつもりですか。その際、沖縄県民にはどのように説明するのですか」。
泉健太 立憲民主党 政調会長:
そうなれば当然、説明をしなければいけないと思います。
BSフジLIVE「プライムニュース」10月13日放送