コンビニ最大手のセブンーイレブン・ジャパンは、売れ残った商品を加盟店の判断で自由に値引きできるシステムを導入した。ローソン、ファミリーマートに追随し、ついに大手3チェーンで値引きが実質「自由化」された形だ。

「コンビニ商品の値引きは一気に広がるのか?」
「どんな商品が安くなりそうなのか?」
「値引き商品を買うためのコツは?」
「これでオーナーと本部とお客さんは『仲良く』なれるのか?」

ローソンに店長やバイヤーとして22年勤務、今もコンビニのバイトに不定期に入って全チェーンのレジを打ちこなすという、流通アナリストの渡辺広明氏に聞いた。

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「コンビニ値引き」は一気に広がる?

セブン-イレブンでは、従来から値引きするシステムはあった。しかし実際に店舗で値引きをするためには、加盟店が本部に事前申請するなど、煩雑な手続きがあった。今回、値引きの手続きが加盟店側の作業だけで完結するシステムに変更されたのだ。

セブン‐イレブンも値引き“自由化”に踏み切った

ーー今回のセブン-イレブンの「値引き」、現場オーナーは「よし!きた!」と思っているのですか?

流通アナリスト・渡辺広明氏:
思っていますよ。「値引きが良いか悪いか?」という話も当然あるのですが、前提としてやはり、フランチャイズオーナーは、本部の方が圧倒的に大きいので、本部の言った施策を粛々とこなすことが多くなってしまうのですが、オーナーが自ら選べる権限ができたら商売の幅が広がりますよね。なのでオーナーとしてはうれしいと思います。

ーーオーナーが自由に値引きできると「お弁当のタイムセール」みたいな割引が期待できる?

流通アナリスト・渡辺広明氏:
うーん。もともとコンビニの本部やオーナーは「値引きは悪だ」という考え方を持っている人が多いんですよ。教育として。「適正な価格で商品を買ってもらって利益を得るんだ」という考え方なんですね。だからたぶん「タイムセール」みたいな発想をしている人はまだ今はあまりいないと思います。

例えば1000円の商品がありました。仕入れ値が700円だとします。利益の300円を半分ずつ分け合うんですよ。オーナーと本部で150円ずつ。その分け合った利益から、本部は販促に使ったり、システム投資したり、商品部の人間を雇ったりして使っていく。オーナーの方は人件費と廃棄を引くと、自分の利益になるんですね。

利益を配分する仕組みになっているから薄利にできないんですよ。先ほど「300円儲けて150円・150円で分けますよ」と言ったのですが、それを値下げして「50円の利益」だけにしたら「25円と25円」になっちゃうんですよ。だからあまりそれは得策じゃないなと。フランチャイズの「値引き合戦」とか「タイムセール合戦」ってちょっと難しいんですよね。

ーー本部側がわざと値引きするのを面倒臭くしていたってことは?

流通アナリスト・渡辺広明氏:
多分ないとは思うのですが、現実そうなってしまっている仕組みはあるんじゃないかなと思います。システム投資って結構多額な金がかかるので、“意地悪”という意識はなくても、そこまでお金をかけて投資しなくてもいいんじゃないかなと思っているところはあるかもしれないですね。

やっぱり適正な価格で売っていかないと、「利益が減る」ということは、お店が運営できなくなるかもしれないですし、本部側から見ると商品の単価を上げなきゃいけなくなったりするかもしれないので。

「コンビニ問題」が噴出してきた理由

消費期限が切れた商品は廃棄しなければならない。その「廃棄コスト」が加盟店のオーナーの大きな負担となっていた。

ーー廃棄費用が大きい商品は何ですか?

流通アナリスト・渡辺広明氏:
お弁当とかサンドイッチとか惣菜とかファーストフードとか「中食」と言われる、あまり日持ちしないものが廃棄が多くなってしまいますよね。

おにぎりのある棚が結構廃棄が出やすい。コンビニが農水省や環境省などと一緒にやっている「手前取り運動」が実は廃棄なくす一番の形かなと思っています。でも「牛乳は新しいやつを後ろから手を伸ばして買ってきなさい」というみたいな“教育”が根強くあって、なかなか進まない面も。

「手前取り運動」を進めているが…

当然廃棄が出やすいおにぎりとかを食べてほしいと思うんですけど、でもお客さんに「強引におにぎりを食べなさい」みたいなことは言えないですよね。

ーー「廃棄」はオーナー側にとって大きなリスクだったんですね。

流通アナリスト・渡辺広明氏:
そうですね。お店が負担するのは「廃棄と人件費」なんですよ。

「本部が儲け過ぎなんじゃないか」というのは、本部の経常利益がずっとアップしていたのに、オーナーの収益がずっとマイナスになっていたから。それはなぜかというと、この15年ぐらい最低賃金が上がっていたんです。人件費が上がるじゃないですか。ここ数年の「コンビニ問題」というのは結構噴出してきた理由なんですね。

人件費は基本的に下げられないので、廃棄を避けるため値引き販売した方がいいんじゃないかと。コンビニ本部側もオーナー側も「適正な価格で品切れしないで売る」という考え方で47年やってきた中、“シフトチェンジ”しなきゃいけなくなったというのがあったのですが、なかなか。公正取引委員会の「価格はお店が自由にできるように仕組みも簡単にしなさい、独占禁止法に触れますから」いうのが、今回の仕組みを入れる大きなきっかけにはなっています。

ーー廃棄しないで、アルバイトの店員さんに配ってしまえばいいのでは?

流通アナリスト・渡辺広明氏:
あげているところもあるけどやっていない店が多いんですよ。2点理由があって、1点は消費期限ギリギリのものをアルバイトに渡して、食べて体の調子悪くなったら責任取れるのかという点。

もう1点は、廃棄をタダでもらえるようになると、一部のアルバイトは何でもタダでもらえるように感じてしまうんですね。だから欲しい物を棚の後ろに隠したりしだす、「これはタダでもらえるかな、タバコもいいんじゃないかとこっちもいいんじゃないか」みたいな、モラル的にうまくコントロールできないのというところがあるので。

「値引き商品」を買うためのコツは?

ーー「値引き商品」を狙いたいお客さんへアドバイスは?

流通アナリスト・渡辺広明氏:
値引きするオペレーションのタイミングは必ずあるんですよ、それぞれのお店で。A店・B店・C店で「何時ぐらいに値引きする」とか「朝はする」とか「夜はしない」とか、もうお店が価格を決定するのは自由なので、行きつけの店をちゃんと理解するということが大事。「消費期限の何時間前に値引きする」となるので消費期限が切れそうな時間を見ておいてもいいですよね。

常連さんになればいいんです。今でも皆さん通っているコンビニで「この時間帯に行くと品ぞろえないなとか豊富だとか」肌感覚でみんなわかっているじゃないですか。結局あれと同じなんです。昔だと「この時間行ったら『ジャンプ』入ってるな」みたいな。そこは個店で違うから、廃棄する時間をつかんでいくことだと思います。

ーー「前のめり」に『ジャンプ』を入れてくれるコンビニありますもんね。

1人で勤務をしてると、『ジャンプ』出すとずっと立ち読みする人がいるから、ちょっと後にするみたいなのあったりするじゃないですか。

とにかくコンビニエンスのオーナー、人件費あがってオーナーの収益自体が非常に厳しくなっているのでやっぱり接客とか廃棄とかシビアにはなってきてますよね。値引きはしたくなるんだけど、縮小傾向になると売り上げが伸びないから、超中長期的に見ると厳しくなっちゃう可能性も出てくるんじゃないかなと。

「オーナー・本部・お客さん」の三角関係はどうなる?

ーーこれで「オーナー」と「本部」と「お客さん」の関係は良くなりそうですか?

流通アナリスト・渡辺広明氏:
良くなるようにトライアンドエラーしていくしかないんじゃないですか。値引きについて、本部はうまく仕組み化してオーナーと一緒に歩んでいくしかないんじゃないですか。

少なくとも僕は「食品ロス」をなくすことは絶対した方がいいと、もったいないですよ。日本人の“贅沢の象徴”はやっぱりコンビニなので。だって、みたらし団子が24時間、夜、東京へ行っても、静岡で山奥の店行っても食べられるなんて店はないですよ、同じ品質のものが。贅沢の極みがコンビニなんです。

お客さんは我慢しなきゃいけない状況にはなるでしょうね。欠品していたら、怒るじゃないですか「この店なかった」みたいな。でも、これからは、欠品しだすんじゃないでしょうか。だって収益をあげないとお店を運営できないから。お客さんが喜ぶように欠品させないで、全部半額で売ったら、誰も儲からなくなるので。その一時期はいいかもしれないけれど、中長期的に見るとその店が無くなっていく、という形になってくるでしょう。

ーーお客さんも仕組みを理解すると、良い「お買い物関係」ができそうですね。

そうですね。あとはやっぱりこの“超贅沢”な状況はみんなで我慢していかなきゃいけないですね。

【渡辺広明氏・プロフィール】
流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。「やらまいかマーケティング」代表取締役。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長・スーパーバイザー・バイヤーを経験。約760品目の商品開発に携わる。フジテレビ「Live News α」など各メディアに出演中。静岡県浜松市の親善大使。

(取材:FNNプライムオンライン デスク 吉田寛生)