農業の付加価値を高めるために奮闘する女性が、新潟・小千谷市にいる。
なぜ今、女性が農業に求められているのか。6次産業化を通して、新たな農業のあり方を提案する女性を取材した。

農家に商品開発をアドバイス “6次産業化プランナー”

新規で農業を始める際、補助金などの支援を受けられる「認定新規就農者」の申請は現在、右肩上がりだ。中でも、女性の単独申請が増加傾向にある。

資料:農林水産省「認定新規就農者の認定状況」
資料:農林水産省「認定新規就農者の認定状況」
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さらに、女性が農業経営に関わるかどうかで、利益の増加率には71.4ポイントの差があることも明らかになっている。
そんな中、中学生につながりの輪の大切さを訴えるのは、小千谷市に住む新谷梨恵子さんだ。

新谷梨恵子さん:
出会いは財産だと思っている。誰かと手を組むことで、2本しかない手はどんどん広がっていく

中学生を前に講演する新谷梨恵子さん
中学生を前に講演する新谷梨恵子さん

実は新谷さんは、教師ではない。

サツマイモ農家・羽鳥求さん:
(サツマイモのツル)これも食べ物

新谷梨恵子さん:
欲しいです!

ーー何に使う?

サツマイモ農家・羽鳥求さん:
キンピラになる

畑でサツマイモのツルを手に、にっこりする新谷さん。だが、農家でもない。

新谷梨恵子さん:
(ツルを加工するのは)手間。でも、手間がお金になるのが6次産業

新谷さんの正体は、“6次産業化プランナー”だ。

新谷梨恵子さん:
「さつまいも農カフェきらら」の経営と、2015年に6次産業化プロデューサーという資格を取って、“6次産業化プランナー”という仕事をしている

生産・加工・販売の3つをかけ合わせ、農家の所得向上などを目指す6次産業化。そのプランナーとは?

新谷梨恵子さん:
農家に商品開発や販路拡大のアドバイスをしている

新谷さんは、サツマイモスイーツなどが自慢の飲食店の経営に加え、農作物の売り出し方や新たな加工方法を生産者に提案し、実現に導く手伝いをしている。

農プロデュース リッツ・新谷梨恵子さん
農プロデュース リッツ・新谷梨恵子さん

女性ならではの“消費者目線”を大切に

ある日、コメ農家の山口小百合さんが相談にやってきた。

新谷梨恵子さん:
(ネット販売のページに)読み逃しのないよう、「新米」と書いた方がいい。今、(ネット販売をする)農家が増えてきていて埋もれちゃう

自らホームページを開設し、インターネット販売を始めたいと話す山口さんに、新谷さんはどうすれば消費者の目にとまるかをアドバイスする。

“消費者の目線”でアドバイスする新谷さん(右)
“消費者の目線”でアドバイスする新谷さん(右)

越後魚沼 農家松兵衛・山口小百合さん:
新しいことに挑戦してみようかなという気持ちになるし、ちょっとしたことを改めて聞くのはハードルが高いけど、新谷さんには聞きやすい

6次産業化プランナーとして生産者の背中を押す新谷さんだが、彼女が大切にするのは、女性ならではの“消費者の目線”だ。

新谷梨恵子さん:
コメ農家は30kgで売りたいけど、お嫁さんや若い人から見たときに、「30kgのコメ袋は持てないし、スーパーでは買わない」という切り口。消費者の購買意欲に対してのアンテナがすごく敏感

農プロデュース リッツ・新谷梨恵子さん
農プロデュース リッツ・新谷梨恵子さん

良い作物を作ることに力を注いできた農家にとって、そこに新たな付加価値を持たせてくれる女性ならではの視点は、貴重なものとなっているようだ。

サツマイモ農家・羽鳥求さん:
(生産者は)焼き芋で販売することしか考えてない。それをいろいろなメニューに加工して、6次産業にも目を向ける新谷さんはすごい

女性に安心して農業体験を…さまざまな気遣いも

そんな新谷さんが9月に本格的に始めたのは、人材育成のための“農業女子”の受け入れだ。

新谷梨恵子さん:
(自分が)学生時代、研修に行きたいと思っても、“女の子お断り”というところがあった。うちが窓口になって、「受け入れ大歓迎だよ」と。まず小千谷に来る機会をつくりたい

「まず小千谷に」 “農業女子”の受け入れを始めた新谷さん
「まず小千谷に」 “農業女子”の受け入れを始めた新谷さん

この日は、関東の大学で農業を学ぶ女子大生が農業体験に訪れていた。

農業体験をした女子大生:
新谷さんのように、女性でも農業ができると発信してくれる人が増えて、より女性に農業という選択肢が増えてきていると思う

多くの女性に安心して農業を体験してもらおうと、気遣った工夫も。

長谷川珠子アナウンサー:
サツマイモの加工食品工場の2階。実は昔、ここには大きなエレベーターがありました。しかし、今はベッドや仕切りとなる棚を置き、農場女子が過ごしやすい環境の宿泊施設へと姿を変えています

自身は、農家の自宅に泊めてもらいながら農業体験をしていたという新谷さん。女性が気軽に体験するために、プライベートな空間づくりにも気を配ったという。

新谷梨恵子さん:
大自然の中、目の前が田んぼというのが気に入っている。「こういう所に住みたかった」という都会の子が来て、研修して、ここでゆったりしてもらったらいいなと

また、この時期に農業女子の受け入れを本格化したのにも理由があった。

新谷梨恵子さん:
新型コロナウイルスの先には、絶対に楽しいことが待っていると思う。今のうちに種をまいておいて、宿泊施設を作っておけば、いろいろな子が「来たい」と言ったときに、「うち来られるよ!」とか、海外の子なども、もっと受け入れたいなと思った

「絶対に楽しいことが待つ」と語る新谷さん
「絶対に楽しいことが待つ」と語る新谷さん

消費者目線のアイデアを武器に人と人をつなぐ

そして、農業の未来への種まきは中学生にも…

新谷梨恵子さん:
なぜパフェの上には、チョコレート・バナナ・イチゴがのるのでしょうか? イモでもいいじゃないか。そういうことなのです。自分の脳みそを転換する。新しく転換するときには、「これだから、こうじゃなきゃいけない」ということはないと思う

新谷さんの話を聞いた生徒:
農業に興味があったので、話を聞けて勉強になった。農業一筋ではなくて、新谷さんみたいにスイーツや規格外のものを受け取るとか、そういうものにも挑戦できたら

女性として、6次産業化プランナーとして、新谷さんは、農業の新たな未来を語った。

新谷梨恵子さん:
やっているのは人をつなげるという仕事で、農家と福祉施設だったり、農家と飲食店だったり、そういう点だったものをつなげると形になって面白いものになっていく

ーー芋づる式に?

新谷梨恵子さん:
芋づる式に!(笑)

1人ではできないことも、誰かと手をつなげば輪は広がり続ける。
消費者目線のアイデアを武器に人と人をつなぎ、農業の未来を耕す。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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