自民党の総裁選挙に立候補した、河野太郎規制改革担当相(58)、岸田文雄前政調会長(64)、高市早苗元総務相(60)、野田聖子幹事長代行(61)の4人が19日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分から8時55分)にそろって生出演し、北朝鮮や中国に対する防衛や賃上げ、年金などのテーマで激論を繰り広げた。

このうち、北朝鮮が15日に弾道ミサイルを発射し、日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下させたと推定されることをめぐり、「北朝鮮にミサイルを打たせないために必要な抑止力」について議論。

高市氏は「精密誘導ミサイルの配備は絶対だ」と強調し、「偵察などに必要な無人機の導入」や「電磁波を使った防衛力強化」を訴えた。また「敵基地の無力化をいかに早くするか。人工衛星への妨害は技術的にはできる。これを自衛隊の任務として認めるかどうか」と提起した。

岸田氏は「ミサイル迎撃態勢、イージス態勢を絶えずブラッシュアップさせることが重要」と指摘。「第1撃のみならず、第2撃に備え、敵基地攻撃能力を含む抑止力」の必要性を強調した。河野氏と野田氏は「情報収集能力の強化」を訴えた。

番組では、軍事力を増強させる中国に対する抑止力についても議論。米国が、沖縄や台湾を結ぶ第1列島線への中距離ミサイル配備を検討していることを取り上げ、専門家の「日本などへの配備を想定している」との見解を紹介した。これを受け、4候補が首相になった時に、米国からの正式要請があれば、中距離ミサイルの日本配備を受け入れるかどうか尋ね、受け入れる判断をする候補者に挙手を求めた。

この質問に4人の中でただ1人、高市氏だけが手を挙げた。高市氏は「この中距離ミサイルは必ず必要だ。日本を守るために必要だ。むしろ積極的にお願いしたい話だ」と述べた。

岸田氏は「全く否定するものではない」と述べる一方で、「日本に対する具体的な提案を聞かずに賛成か反対かを言うのは控える」とした。

野田氏は「前のめりの話、結論ありきの議論は極めて危険だ。抑止力の前にあるのは最善の外交だ。軍備の話から始める抑止力は考えられない」と表明した。

河野氏は「日本と米国の役割分担が決まらないうちに受け入れる、受け入れない、の議論をしても無意味だ。それは勇ましく『やれ、やれ』と言うような人が喜ぶだけで、日米と中国の安定につながる議論ではない」と指摘した。これに対し、高市氏は「勇ましく『やれ、やれ』という話ではない。日本国民の命と領土を守るために絶対に必要なことだ」と反論した。

米国が配備を検討する中距離ミサイルには、核が搭載される可能性も指摘されている。非核三原則の「持ち込ませず」を見直すかどうかについては、4候補とも検討しない考えを示した。

ただ、河野氏は、自民党国際局長だった2010年に日米討論会に出席した際に、有事の際に米国の核兵器を日米で共同運用する「核共有」も選択肢の1つだとの認識を示し、その前提として「非核三原則を変えればいい」と発言したと報道されている。

番組キャスターが「考えが変わったのか」と尋ねると、河野氏は質問には直接答えず、中国の軍拡に触れたうえで「日本と中国の2国間で何かできるという状況ではない。国際社会がどう中国と向き合っていくかを議論していかなければならない」と述べた。

以下、番組での主なやりとり。

松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
北朝鮮が次々と巡航ミサイルや変則的な軌道を描く弾道ミサイルなどを打ち上げている状況で北朝鮮のミサイルをどう防御するか、ということに加えて、どう打たせないか、の抑止力の問題も焦点だ。北朝鮮にミサイルを撃たせないために必要な抑止力とは何か。

河野氏:
いま日本に必要なのは情報収集能力の強化だ。北朝鮮で何が起きているかを常時監視できる能力を持つこと。北朝鮮に対する抑止というものを日米同盟できちんと整備して、相手側にそういう能力を持っていることをしっかり伝えることだ。

岸田氏:
情報収集能力の向上は当然だ。わが国のミサイル迎撃態勢、イージス態勢を絶えずブラッシュアップしていくことも重要だ。北朝鮮は、日本に届くミサイルを500~600発持っていると言われている。第1撃のみならず、第2撃に対する備え、いわゆる敵基地攻撃能力を含めて、抑止力として用意しておくことも考えられる。

高市氏:
やられてもやり返さないということは、どうしようもないことだから、精密誘導ミサイルの配備は絶対だ。敵基地無力化をいかに早くするか。(人工)衛星への妨害は技術的にはできる。これを自衛隊の任務として認めるかどうか。また、無人機も必要だ。特に偵察などに必要な無人機の導入。電磁波も防衛に使えるが、大学によって防衛の研究として認めない風潮がある。これを変えていくことも非常に重要だ。

野田氏:
当日(15日)、党本部で緊急役員会があった。巡航ミサイル、トマホーク級(飛翔距離)1,500km。極めてゆゆしき問題だ。残念ながら北朝鮮の(発表)情報がベースで、米国と韓国から情報をもらって精査すると。日本に情報収集能力がないことが一番の問題で、抑止力以前の問題だ。そこはしっかり取り組んでいく。

梅津弥栄子キャスター(フジテレビアナウンサー):
北朝鮮の脅威に加えて、中国の軍事力増強に危機感を募らせている米国は今年3月、インド太平洋軍の予算要望書で、沖縄と台湾などを結ぶ第1列島線に地上配備のミサイル網を構築すべきだと記した。元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は「米軍は日本などを念頭に中距離ミサイル配備を想定している」という。

松山キャスター:
米軍が配備を検討しているとされる中距離ミサイルについて、今後米国から正式な要請があった場合、日本が受け入れるかどうか。皆さんが首相になったときに、それを受け入れる判断をする方は挙手してほしい。高市さん、真っ先に手を挙げたが、どういう趣旨で手を挙げたのか。

高市氏:
この中距離ミサイルは必ず必要だ。これは日本国を守るために必要だ。おととしエスパー米国防長官が、アジア地域に配備すると言った。むしろ積極的にお願いしたい話だ。ただ、今、米国で長距離ミサイルも開発中で、それがあれば、中国ほぼ全土の航空基地をカバーできるので、これも含めて考えていく必要がある。国産化できれば最もよい。JAXA(宇宙航空研究開発機構)などとの連携も必要になってくると思う。

松山キャスター:
空母キラー、グアムキラーという(中国の)中距離ミサイルに対抗するものとして、米国が中距離ミサイルを開発していると思う。防衛相も務めた河野さんは、中距離ミサイル配備を求められた場合、どう対処するか。

河野氏:
抑止力を考えたときに、必要なのは日本が自分の指で引き金を引けるかどうか、ということも考えなければいけない。日米同盟全体で抑止力をどう高めていくか、国際社会で中国の一方的な現状変更にどう圧力をかけていくかを考えなければいけない。米国だけが引き金に指をかけているミサイルを日本に置いたからといって、日本の抑止力が高まるわけではない。中国に対してどのような抑止力を想定していくのか。これは、もう少し慎重にしっかりと議論し、日米同盟で何をやる、日本が何をやる、この役割分担をしっかり決めないと議論はスタートしない。日本がやらなければいけないのは、このミサイルだけではない。南西諸島防衛、あるいは、中国が南西諸島を通過しようとする時に、日本として何をするのか。それを中国に日本の能力をどうメッセージとして伝えるのか。これは勇ましい掛け声をかければいいというものではない。抑止力というのは日米同盟と中国の間でしっかりとメッセージを送りながら、安定させるということが大事で、敵基地なんとか能力みたいなものは、結局こちらが打つ前に相手が打たなければ、相手の能力が無力化されるわけで、かえって不安定化させる要因になる。そういうことまで考えて、抑止力をどう築いていくかを日米でしっかり議論していく必要がある。

橋下徹氏(レギュラーコメンテーター、元大阪市長、弁護士):
高市氏は、米国に全部引き金の権利を渡すことを前提にしているわけではなく、当然それはいろいろなプロセスを踏むことが前提になっていると思う。引き金を引く権利を日本が確保するという協議をするとしても中距離ミサイルの受け入れは絶対拒否なのか。

河野氏:
米国の中距離ミサイルを日本に置いて、それではどういう役割分担になるのかが決まらないうちに入れる、入れない、という議論をしても無意味だ。勇ましく「やれ、やれ」と言うような人が喜ぶだけで、日中関係、あるいは日米と中国の安定につながる議論ではまったくない。

高市氏:
勇ましく「やれ、やれ」という話ではない。日本国民の命と領土を守るために絶対にこれは必要なことだ。日本は文民統制で、引き金を米国に引かせるということではない。導入することが決まった時点で、ルールはしっかりと話し合っておくべきだ。

橋下氏:
岸田氏もこの中距離ミサイルについては、引き金の権利を(日米の)どちらが持つか、どう進めていくかを含めて検討するという話もしないのか。

岸田氏:
全く否定するものではないが、中距離ミサイルといっても、どんな搭載能力を持っているのか、どこに配備するのか、これによって国民の理解は、ずいぶん変わってくる。第1列島線に配備ということだが、日本にどんな具体的な提案があるのかを聞かないうちから賛成か反対かを言うのは控えなければならない。

野田氏:
北朝鮮や中国が行動を起こすたびに前のめりの話、結論ありきの議論をするのは極めて危険だ。抑止力は、単に軍の話ではなくて、むしろその前にあるのは最善の外交だ。日本は終戦後不戦を誓い、平和主義だ。軍備の話から始める抑止力は考えられない。仮定の話はしてはだめだ。

梅津キャスター:
中距離ミサイルについて、香田氏によると、核が搭載される可能性もあるという。非核三原則の「持ち込ませず」に抵触することになる。

松山キャスター:
非核三原則の「持ち込ませず」の見直しを検討すべきかどうか。首相になったら見直しを検討するという人は挙手してほしい。皆さん、そこまでは考えていないということか。

高市氏:
基本的に米国の戦略として、核を持ってきているか、持っていないかは明らかにしないというのが原則だ。国会決議の問題もあり、なかなか難しいが、日本は米国の核の傘の下にあり、実際に危機が迫った時に、これを全く活用せずに討ち死にすることはありえない。

橋下氏:
米国が核を搭載するかどうかわからないという日本政治の、ある意味ごまかしでずっときた。わからないといえば、わからないうちに持ち込まれる可能性もある。ここは、はっきり1967年の非核三原則が行われた当時と状況が違うということで、ごまかさずに、中距離ミサイル配備するのであれば、見直しを検討すると言わないと矛盾する。

高市氏:
核弾頭を積む、積まないも含めて、これはミサイルを配備する時にしっかり詰めるべき話だ。米国の戦略として結局それは表には出さない話だと思う。

松山キャスター:
河野氏は2010年の日米討論会の場で、非核三原則の見直しについても「議論すべきだ」と発言した。日米での「核共有」との概念も言っていたようだが、考えが変わったのか。

河野氏:
中国のこれだけの軍事拡大の中で、日米同盟、国際社会でどう連携して中国に圧力をかけていくか、一方的な現状変更をさせないかということにしないと、中国が一方的に軍事能力を拡大するだけで、日本と中国の2国間で何かできるという状況ではない。日本の軍事予算5兆円に対して中国は20兆円。少なくとも公表分だけで毎年それだけの軍事予算を使っている。これはもう国際社会でどう中国と向き合っていくかという議論をしていかなければならない。

松山キャスター:
岸田さんは地元が広島。核に対しては非常に敏感だと思う。非核三原則の見直しについてはどういうスタンスか。

岸田氏:
非核三原則の見直しは考えない。その下で安全保障環境を考えなければいけない。非核三原則の見直しは、国民の理解という点で、なかなか難しいと思う。北朝鮮に対して大量破壊兵器の放棄を訴えている中で、これを日本が議論することは間違ったメッセージを与えることになる。

橋下氏:
米ソ冷戦時代に中距離弾道ミサイルをソ連がヨーロッパに配備して、それにヨーロッパがやり返して、ソ連に向けてミサイルを配備した。お互いに軍拡競争した最後の段階で中距離核戦力(INF)全廃条約に移っていった。北朝鮮、中国、ロシアが核兵器を持って軍拡している中で、日本は中距離ミサイル、核というものを全く検討せずに、本当にこの極東地域の安定が守られるのか。

岸田氏:
核は力の均衡によって平和状態を作り上げた。そういう歴史はあるが、アジアはその当時とは全く状況が違う。日本は日本独自の非核、核廃絶の道を探る。それが唯一の戦争被爆国、日本の立場だと思っている。

松山キャスター:
野田さんも三原則見直しには慎重か。

野田氏:
(見直しは)しない。今、岸田氏が言った通りだ。広島、長崎、日本は世界で唯一の被爆国だ。そこはしっかりと守っていかなければならない。それに尽きる。

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