交差点で、椅子に座って人や車の数をカチカチと数えている人を見かけることはないだろうか?これは、道路交通量調査と呼ばれるもので、道路の整備計画を策定するための基礎資料を得る目的で行っている調査だ。
定番のアルバイトであるため、経験したことがあるという人もいるかもしれないが、実は、この調査員を廃止する動きが進んでいる。

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国土交通省が原則5年に1度行っている「全国道路・街路交通情勢調査」で、今年度秋季に実施する調査から、国が担当する区間の人手による観測を廃止する予定なのだ。人に代わり、交通監視カメラの映像を人工知能、AIで解析する手法を導入することで、業務の効率化やコスト削減を狙うという。

人の仕事がAIに奪われるということで、SNSでは悲しむ声も出ているが、なぜ国土交通省は人手による調査を廃止するのか?またAI観測の精度は人よりすごいのか?
国土交通省道路局、企画課道路経済調査室の担当者に詳しく話を聞いてみた。

業務の効率化・高度化

――これまでどれくらいの調査員の数で調査していた?

「全国道路・街路交通情勢調査」で実施する交通量調査の調査区間は全部で約44,000区間あります。このうち、国が調査する約7,600区間については、今年度調査から、全面的に人手観測を廃止することとしました。調査員の数は、区間ごとに車線数や交通量等に応じて異なっているため、正確には分かりませんが、元々はこの調査区間数以上の調査員が交通量を測っていたものと思います。


――なぜ人手の観測を廃止した?

日々進化するICT技術を活用し、業務の効率化・高度化を図ることが求められています。交通調査の分野においても、ICT技術を活用した常時観測体制を構築することを目指しており、社会情勢の変化に対応すべく、今年度からまずは国が調査する区間において、AI観測を活用し、人手観測を廃止することとしました。

夜間時や悪天候時などの観測精度に課題も

――AIによる観測とは、どのようなもの?

道路上には元々、日常の道路管理用としてCCTVカメラを配備しています。この既設置のCCTVカメラより得られる画像から、車両の特徴を事前に学習したAIにより車両を認識させ、交通量を計測するものです。

CCTVカメラのAI解析(画像提供:国交省)
CCTVカメラのAI解析(画像提供:国交省)

――AI観測のメリットは?

AI観測が普及することで、5年に1回の大規模な調査の時だけでなく、交通量を常時観測できる体制が構築でき、タイムリーにきめ細やかな道路交通対策が実施できます。コスト面に関しては、当初はAIシステムを追加するための費用が必要となりますが、長期的にはコスト縮減も図れるものと思います。


――逆にデメリットは?

夜間時や悪天候時などにおける観測精度に課題があります。短期的には、別の観測値などを用いて補正を行うことで精度を担保いたしますが、今後の技術の進展に伴う精度向上に期待しています。

今後、人手観測の全廃を地方自治体へ働きかける

――調査頻度は今後上がる?

「全国道路・街路交通情勢調査」については、全国的な統計データとして、引き続き5年に1度実施いたします。一方、AI観測などの機械観測を普及することで、常時観測できる範囲を拡大できればと考えています。


――今後、自治体の調査員も廃止する予定?

次回の「全国道路・街路交通情勢調査」に向けては、人手観測を全廃できるよう、地方自治体の方々へも働きかけを行いたいと思います。


――調査員がいなくなってしまうことは、なんだかさみしい気もするが…

私も学生時代には交通量調査のアルバイトをしたことがあるので、さみしい気持ちはあります。一方、人口減少等の社会情勢の変化も踏まえれば、交通調査の分野においても、持続可能な体制を構築するため、そして、データ利活用の更なる高度化を図るため、ICT技術の活用を積極的に行い、便利で使いやすい道路を引き続き提供していければと思います。

 

道路交通量調査は、行政と民間が行っており、今すぐすべての調査員が廃止されるというわけではないものの、人手による調査が減っていく流れなのは間違いない。担当者も交通量調査のバイト経験があり「さみしい気持ちはある」と語っていたが、コスト削減、効率化だけでなく、人口減少などの社会情勢の変化も影響しているようだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。