新型コロナウイルスの影響で2年連続で中止となった静岡市の「清水七夕まつり」。
しかし2021年は、この祭りに代わる新たなイベントを開催しようと、商店街の有志が立ち上がった。
まん延防止措置から緊急事態宣言と感染状況が悪化する中、様々な葛藤を抱えながら商店街の未来のために前を向く男性の思いに迫った。

清水の夏の風物詩、清水七夕まつり。例年約60万人が訪れる一大イベントだ。
しかし新型コロナの影響で、2021年も2年連続で中止となった。
市民:
自分も清水で育って親に連れてきてもらったので、そういうのを子供にどんどん還元したいという気持ちはある。中止というのは残念な気持ち
商店街の店主:
お店側もその時期はすごく賑わうが、(中止で)街の賑わいが全然なくなっている。それはすごく寂しいと思っています

失われていく賑わいに、新型コロナが追い打ちをかけている。
立ち上がった商店街の弁当店の店主
この事態に、清水駅前銀座商店街の有志が立ち上がった。その一人が、宅配弁当店の店主・松岡夏樹さん。同じ商店街で居酒屋も経営している。
松岡さん:
切ないですね…
この夏も、まん延防止措置、そして緊急事態宣言で休業を余儀なくされた。

松岡夏樹さん:
お酒を出す飲食店がよくない場だという認識が生まれてしまった中では、なかなか価値観を共有することが難しかったんです。心はもちろん折れそうになりますし、ビジネスもどうしようかと考えこんでしまう時はありました
都内出身で、11年前この商店街に初めて店を構えた松岡さん。
松岡さん:
おはようございます。大丈夫ですか?
男性:
きょうなに?
松岡さん:
いま中澤さんのところにお弁当届けに行くんですけど

他の店や市民の温かさに助けられてきたからこそ、年に一度、この商店街に最大の賑わいが生まれる「まつり」を何とか開催したい。
集まった1万2000枚の「願い事」
この日、松岡さんは商店街から近くの高校に向かった。
教頭:
生徒がいろいろ書いたので、中には『修学旅行に行けますように』と。コロナ禍でなかなか修学旅行に行けなかったものですから
松岡夏樹さん:
切実ですし、希望に満ちあふれていますね
周辺の学校に協力を依頼し、さまざまな願いを短冊に書いてもらった。
松岡夏樹さん:
高校3年間の中で、2年間がコロナに振り回されているのもあり、願いというより決意みたいな意思を強く感じます。ぜひかなってほしいと心から思います

企画したのは、市民の願いが込められた短冊をつなぎ、天の川に見立ててアーケードに飾る「天の川祭り」。
9月9日からの開催に向けて短冊を募り、約1万2000枚が集まった。

緊急事態宣言の影響で、予定していた露店などは急きょ中止に。たくさんの人に見てほしくても、集客しづらい葛藤もあった。
松岡さん:
いいですか?上げます!

ーー短冊に書かれた言葉ーー
「元気な赤ちゃんが産まれますように」
「赤点回避」
「ウルトラマンZになりたいな」
「早くマスクなしの生活ができますように」
「早く七夕に行けますように」

松岡夏樹さん:
多くの人に来てもらいたいというジレンマはあるんです。でも実際に来られなくても短冊で参加できるという、本来の目的に近づいているのではないかと思う
コロナ禍を乗り越えて、賑わいのある商店街を取り戻したい。
松岡夏樹さん:
みんな上を向いて笑顔になっているのが、すごい嬉しい。未来を見据えて上を向いて歩こうというのが、体現できていると感じました。
みんなの思いで出来上がったことに、すごい意義があり、こういうことがずっと続けられる商店街でありたいと思います
市民の思いを背負い、手作りの天の川に願いを込めて。商店街の取り組み、そして挑戦は続く。
(テレビ静岡)