東日本大震災の被災地、岩手・陸前高田市の夏を熱く盛り上げる「けんか七夕」。
コロナ禍により山車をぶつけ合う「けんか」は2年連続で中止されたが、2021年は1台だけ山車が作られ、住民が集った。

住民が愛する「けんか七夕」2年連続で中止に

8月7日、陸前高田市気仙町の今泉地区には、祭りのはやしが響き渡っていた。

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住民が愛する夏の風物詩。

今泉地区の住民:
楽しいどころの騒ぎではない。昔からこれが一番好きなの

しかし例年と違い、行列の中に大きな山車の姿は見当たらない。

もとは4つの地区がそれぞれ力を競って作り上げる山車だが、2021年は1台だけ、地区の公民館に展示されていた。

山車に飾り付けられた短冊には、子どもたちの夢や、新型コロナウイルスが収束してほしいという願いが並んでいる。

「けんか七夕」は、3トンを超える山車をぶつけ合う、約900年の歴史がある祭り。
その熱気と迫力に毎年大勢の観客が足を運んでいた。

津波で壊滅的な被害を受けた2011年も、1台だけ山車が作られ、バラバラになった地区をつないだ。

しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響により、震災後初めて山車づくりを断念した。

けんか七夕祭りを取りまとめるのは、佐々木冨壽夫さん(68)。

気仙町けんか七夕祭り保存連合会 佐々木冨壽夫会長:
今年は大々的にやる予定だったんですよね。見えない敵にはかなわないんですよね

2021年も当初は中止が決まっていた「けんか七夕」。
しかし佐々木さんは、メンバーとの話し合いの末、「山車」だけは作ろうと決めた。山車を作る技術を継承し、伝統を絶やさないためだ。

設計図のない山車づくり…作り方を若い世代へ

8月はじめ、山車の組み立てが始まった。
山車は、釘を使わず木材をはめ込んで組み立てる。設計図はなく、ベテランから若い世代へと経験を通して作り方が伝えられる。

作業の途中には、山車の模型で「けんか七夕」を行う場面もあった。
街の人たちは根っからの祭り好きだ。

準備を進める人たちの中に、強い思いを持って参加した若者がいた。
小野田美樹さん(23)。

小野田美樹さん:
いずれは僕ら若い人たちで、もう1台(山車を)作れるくらいの技術を習得したいですね

幼い頃から祭りを見て育ってきた小野田さん。太鼓が大好きで、その音を絶やしてはいけないと、同世代の仲間と準備に参加した。
佐々木さんたち先輩から太鼓の設置の仕方を教わる。
山車は1週間かけて太鼓の演奏ができる状態になり、住民にお披露目することになった。

体験を通して次の世代へと伝統は繋がれていく

迎えた当日(8月7日)、子どもたちの演奏で幕を開けた。
子どもたちの中には、初めて山車の上で演奏する子もいた。

一方、大人たちは「けんか七夕」の雰囲気を少しでも味わってもらおうと、力を合わせて山車を前後に動かした。

演奏した小学生:
(山車に乗って)怖い気持ちや緊張感もあったけど、楽しかった

演奏した小学生:
今は祭りができないけれど、(実際の祭りで)自分もやってみたいと思った

準備をしてきた小野田さんも、大好きな太鼓を子どもたちに教える。

小野田美樹さん:
ぶつかる衝撃とかも味わってもらいたい。やっぱり去年と違うのは、今年は山車がある。山車に初めて乗った時の気持ちを、もう1回取り戻せる。青春感じてます

祭りの楽しさを覚える人、思い出す人…体験を通して次の世代へと伝統は繋がれていく。

気仙町けんか七夕祭り保存連合会 佐々木冨壽夫会長:
後継者をいっぱいつくらないと廃れてしまいますので、今日は本当にいい機会になったんじゃないでしょうか。(若い世代には)期待しています

陸前高田市を代表する祭り「けんか七夕」。
2022年こそはという願いを込めた音色は、住民の心を熱くし、復興を続ける街に鳴り響いていた。

(岩手めんこいテレビ)