菅首相の不出馬表明で急展開した自民党総裁選。4日連続で官邸を訪れ首相と会談した小泉進次郎環境相は、菅首相に不出馬も選択肢だと進言していた。決断の裏にいったい何があったのか。

BSフジLIVE「プライムニュース」では識者をゲストに招き、その背景を探った。

菅首相の決断の背後に、小泉進次郎環境相との議論あり

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学教授・常務理事
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新美有加キャスター:
菅首相の総裁選不出馬と小泉進次郎環境大臣が果たした役割について、飯島さん。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学教授・常務理事:
まず、今日は参与ではなく個人の見解としてお願いします。今年の選挙をどうするかというだけではなく、最低でも3年以上のスパンで国家国民のために頑張るエネルギーが菅さんにあるかどうか。その点から出るべきか出ないかについて、2人は毎日議論していたと思う。想像ですが。進次郎氏の場合、何かポストを狙ってというのではなく、本当に内閣の一閣僚として、とことんお仕えするという姿勢だったと思う。

反町理キャスター:
竹中さんの受け止めは。

竹中治堅 政策研究大学院大学 教授

竹中治堅 政策研究大学院大学 教授:
これだけ内閣支持率がずっと下がり続けてきた。GoToトラベルがいい例だが、コロナの感染拡大が深刻になってから、ことごとく世論が求めている政策と逆の方向の政策を実施してきて内閣支持率が下がったので、もう仕方ないという気がします。

反町理キャスター:
世論調査と政治が100%連動、とは当然いかない。例えば、消費税の引き上げや社会保障の制度強化なら、国民から見れば当然負担増になる。菅首相はその意味では、日本のためになると思ってやってきた政治について国民の支持が得られなかったのでは。

竹中治堅 政策研究大学院大学 教授:
安倍内閣ではそれを非常にうまくやった。安全保障法制では10%ほどの支持率を吐き出したが、その前に内閣支持率をちゃんと上げていた。菅さんもそこをもう少し計算してやるべきだった。

「名誉ある撤退」をただ一人進言した進次郎氏に菅首相は感謝

反町理キャスター:
田崎さん、不出馬表明後の菅首相をどうご覧に?

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
無念な気持ちはあるが、進次郎氏のことについては感謝しているでしょう。

反町理キャスター:
感謝とはどういう意味ですか?

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
今回の総理の不出馬は、8月28日(土)から考え始めたと見ています。菅さんを支持してきたベテラン議員は中央突破、やれば勝てるに違いないという姿勢。おそらくたった一人、進次郎氏が名誉ある撤退も考えた方がいいと進言した。菅さんは、まだやりたい気持ちとの間で揺れ続けた1週間だったのでは。進次郎さんとしては、その中で結果的に自分の進言が通ってしまった。

反町理キャスター:
予想外だったという意味ですか。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
予想外ではなく、それによって生ずる責任。自分の進言の結果、本当に総理が事実上の退陣表明をした。正しかったのだろうかという思いはあったと思います。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学教授・常務理事:
たった1年間だが、菅さんの実績はうまくいっている。年金積立金の累積運用収益は100兆円を超えている。日経平均も2万9000円に伸びている。新型コロナでの死亡率も0.12%と低い。ダメなところはない。だが、国民はみんな知らない。この状態をベースにまだやるべきという気持ちはあったと思う。

反町理キャスター:
議論の中で、菅首相に対して小泉氏がもっとも言いたかったことは何でしょう。その1年間の成果を大切にすべきだ、晩節を汚すべきじゃない、ということ? それでも出るのなら菅さんを支えるとも言っていたんですか。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学教授・常務理事:
そういうことでしょう。

反町理キャスター:
両方を合わせて提案をしていたのかどうか、田﨑さんは。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
あくまで支えるということを言った上で、しかし、中央突破した場合はボロボロになりますと。だから名誉ある撤退という論理構成ですよ。

反町理キャスター:
竹中さん、この経緯についてはどうご覧になりますか。

竹中治堅 政策研究大学院大学 教授:
こう言っちゃ申し訳ないけど、要は相談相手がやっぱり官邸など周りにいらっしゃらなかったんだなと思います。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
進次郎さんは今回、政権を支えるというのはどういうことなのか、それを真剣に考えたといいます。菅政権を支えるために自分がすべきことを真剣に考えた結果、そういう行動に出られている。でもベテランの人たちからは「進次郎め、出過ぎだ」となる。そういう中で叩かれつつ、進言し続けた。菅首相は「成長したな」という話をされていましたよ。

「成長した」涙の進次郎氏、菅首相には他に相談相手がいなかった

新美有加キャスター:
菅首相が不出馬を表明した後、小泉氏が取材に応じました。その際に目を潤ませるような場面もありました。

小泉進次郎 環境相(9月3日):
総理が批判されてばかりでしたけれども、こんなに仕事をした政権はないと思います。1年間でこんなに結果を出した総理はいないと思います。現職の総理総裁が、総裁選に突っ込んでボロボロになってしまったら、やってきたいいことすら正当な評価が得られない環境に総理を置いてしまうんじゃないか。本当にそのことが総理を支えるということなんだろうか。そういう思いを持っていたので、総理にあらゆる選択肢を含めてご意見をしました。
悔しいのは、総理が人間味のない方だと思われている節がある、そういうイメージが持たれていることです。全く逆で、温かい方ですね。懐深い方で。息子みたいな歳の私に、引くという選択肢まで含めて話をする時間を常に作ってくれて。感謝しかないですね。

新美有加キャスター:
田崎さんからは、この進言が通った責任もあるのではという発言もありました。飯島さん、この涙をどう解釈すればよいでしょうか。

飯島勲 内閣官房参与 松本歯科大学教授・常務理事:
ずっと、とことん真剣勝負で議論した結果、答えは出た。それは感極まってもおかしくない。私はそう見た。

反町理キャスター:
田崎さん、菅首相と小泉環境相の関係はどうご覧になりますか。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
先ほど竹中先生が指摘された通り、ある意味で菅さんの弱点。本来なら官房長官や長年の盟友とか、そういう方が相談相手になって不思議じゃない。しかし、それがまだ40歳ちょっとの進次郎さんだったというのは、菅さんのある種非常に孤独な政治家としての歩みの象徴でもある。
一方、進次郎さんにとっては、一国の総理大臣の進退に関わった。政治にとって一番重要な最高権力者が去っていく場面に立ち会った。これが非常に大きな経験になるだろうと思う。政治家として。今後生かされると思います。

反町理キャスター:
お父さんの小泉純一郎さんは全然こんな終わり方ではなく、大勝利してはい次どうぞ、という感じだった。かなり雰囲気の違う辞め方を導いた進次郎さんに対して、菅さんは「成長したな」と。これはどういうことですか。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
進次郎さんを見直したんでしょう。非常に若い政治家に対して、今までいろいろポストをつけてあげてきたが、それが自分の進退に関わるところまで来た。それがやっぱり政治家として成長したという表現になったんだと思います。

反町理キャスター:
竹中さんはどうご覧に?

二階俊博 自民党幹事長

竹中治堅 政策研究大学院大学 教授:
去り際のところで小泉進次郎氏の話ばかりが注目されていますが、重要なターニングポイントはもうひとつあって、やっぱり菅さんが二階さんに辞めろと言ったこと。これは仁義に反するんじゃないかなと思います。人間味があるという話がありましたが…。二階さんは政権をつくる最大の立役者だった。いろいろ批判はありますが、今回も一番最初に支持を表明してくれたわけです。そこが僕はちょっと気になります。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
竹中さんの見方は成り立つと思います。だが、その後の菅首相と二階さんとの関係は非常に密接になっているんです。先週から2人で何度も会っている。この政局を乗り切るのにお互い協力し合う信頼関係はまだ生きている。

BSフジLIVE「プライムニュース」9月7日放送