2021年8月。停滞する前線の影響で九州を中心に記録的な雨が続いた。特に九州北部では降り始めの8月11日からの総雨量が、1,000mmを超えるエリアもあった。

総務省消防庁によると、少なくとも死者は8人、行方不明者は3人にのぼっている。また福岡県や佐賀県を中心に床上浸水が879棟、床下浸水が3,760棟にのぼるなど、住宅被害も相次ぎ、多くの人が避難を余儀なくされている。

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発達した雨雲が次々と流れ込む線状降水帯の発生を知らせる「顕著な大雨に関する情報」が、福岡県と熊本県に出されたのが8月12日になるので、1週間以上にわたり雨が続いた。

ーー今回の大雨はどのように捉えている?

東京大学大学院客員教授・防災マイスター 松尾一郎さん:
まだ梅雨明けしてなかったんじゃないかと。なんかそういう梅雨末期、「まだ7月じゃないの」ってぐらいの大雨じゃないかなと思いますね。
こういうふうに毎年記録的な大雨というのは続くんですよ。確実に、地球規模的な地球温暖化は進んでると思います。自然の変化が起こってるんですよ。その中で私達は生きてるということを、考えなきゃいけないんですね

東京大学大学院客員教授・防災マイスター 松尾一郎さん:
今までのやり方じゃいけないんじゃないかなと。自然に対してや、避難・行動も含めて変えていかなきゃいけない時代なのかなと思います

ーー大雨を正しく予測する技術の発展も大事なことだが、私たちが生活レベルで真剣に向き合う局面になっている?

東京大学大学院客員教授・防災マイスター 松尾一郎さん:
行動変容とよく言うじゃないですか。避難の仕方・災害に対する考え方も変えていかなきゃいけない。これがね、多分もう一度重要な話かなというふうに思います

コロナ禍で避難所への避難も難しくなる中、“福島発”の技術が広まりつつある。防災マイスターの松尾一郎さんが最前線を取材した。

抗ウイルス効果も…進化する段ボール

段ボールの製造を行う福島・須賀川市の「神田産業」。

神田産業・石澤秀忠さん:
これがパネル組み立て型ERになります。災害時の避難所用で使う設備になっていまして、組み立てに道具を使うことなく15分で組み立てができるものです

東日本大震災・原発事故の教訓から、避難所などで使用できる組み立て型の段ボール製品に力を入れてきた。特に「ハチの巣」を意味する“ハニカム段ボール”は、六角形が密集する構造により高い強度を実現。組み立ては大人3人で15分ほど、特別な工具は必要ない。

2016年の熊本地震。避難生活が長引いていた熊本県の避難所に設置され、診察室や授乳室、更衣室として活用された。

そして今、コロナ禍に対応するため新たに開発した製品が使われているのが、ワクチンの接種会場。

福島テレビ・丹野裕之記者:
こちらの接種会場にあるパーティション、他の会場の物と同じような物に見えますが、実は違うんです。触ってみると感触でわかるんですが、段ボールに漆喰の特別なコーティングをしたシートを貼っていて、最先端のパーティションになっています

段ボールに漆喰をコーティングさせることにより、高い“抗ウイルス”効果を発揮。感染拡大を防ぐ切り札・ワクチンの円滑な接種を後押ししている。

ウイルス5分で99.9%不活性化

漆喰塗料の技術を開発した「関西ペイント」の担当者に仕組みを聞くと…

関西ペイント販売・岩崎浩行さん:
この漆喰塗膜にウイルスを接触させますと、約5分で感染力を失うという実験が完了しております

この漆喰が持つ高い“抗ウイルス“効果を生み出しているのは、消石灰を主成分とする強いアルカリ性。

関西ペイント販売・岩崎浩行さん:
ウイルスまわりにはスパイクという突起物みたいなものがございます。あれが先っぽのほうだけでもアルカリで変形してしまいやすい性質を持っていますので。あれが変形すると次の細胞に増殖ができなくなる。それがアルカリの効果になります

東京大学大学院客員教授・防災マイスター 松尾一郎さん:
強いアルカリ性になったことによって、ウイルスがそれで死滅する。不活性化するということですね

関西ペイントが行った実験では、漆喰塗料に付着したウイルスが接触から5分で99.9%不活性化した。神田産業と関西ペイントは今後、パーティションだけでなく段ボールトイレなどコロナ禍に対応した避難所の製品開発を進めていく計画。

神田産業・石澤秀忠さん:
漆喰塗料で抗ウイルスという対策もとれますし、今後そういったもので災害対策製品をどんどん増やしていって、世の中に貢献したいと思っています

東京大学大学院客員教授・防災マイスター 松尾一郎さん:
世の中でどんどん避難所の感染対策に活用していただきたいし、そういう技術であろうと思います。それが福島で生まれたということなので、これはぜひ私はいろんな展開をしていっていただきたい

コロナ禍の災害から命を守るために、“福島発”の技術が広まりつつある。

すぐに調達できる"地産"技術が重要

新型コロナウイルスの全国の感染者は1日に2万人を超え、感染が爆発的に拡大しているという状況。避難所を必要とする人がきちんと避難できる体制を整えるという意味でも、こういった製品の開発が大切になる。

東京大学大学院客員教授・防災マイスター 松尾一郎さん:
避難所に行くまでの自然災害のリスク。それと避難所に行ってから含めての感染症のリスクという、ダブルリスクが今目の前にあると思うんですよ。
それぞれのリスクについて、その影響を下げなきゃいけない。その意味では神田産業・関西ペイントがやっている漆喰ボードというのは、素晴らしい技術だと思いますね。私は実際に物を触りましたし、意外とダンボールといっても強いんですよ。軽くて強いんです。こういう技術が福島にあるということを、やっぱり大事に育てていくべき

東京大学大学院客員教授・防災マイスター 松尾一郎さん:
防災というのはね、地産地消なんですよ。災害が発生してすぐ調達できるようなところにそういう技術があるということが重要かなと、私は思いますね

(福島テレビ)