使いにくくない?線が「ふにゃふにゃ」なノート

自由帳のような真っ白なページのもの以外、多くのノートには罫線やマス目が印刷されている。
綺麗な文字や図形を書くために役立つはずのそれらが、全く“あてにならない”ノートがあるという。

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それが、静岡市にある総合企画印刷会社・ナガハシ印刷が販売している「いいかげんノート」

一見普通のノートだが、表紙をめくってみると、そこにはぐにゃぐにゃ曲がった罫線が!
引かれた罫線の幅は「だいたい7mm」となっていて、線に沿って文字を書こうとすると上下にガタガタとぶれてしまうのは、試してみなくても分かるだろう。

この「いいかげんノート・よこ罫線」は2020年8月7日に発売されると、たちまち反響が寄せられたとのことで、続く第二弾の「いいかげんノート・方眼罫」も11月に発売を開始。

こちらも同じように、ひとつひとつのマス目がぐにゃぐにゃ曲がって「だいたい5mm」サイズと、“いいかげん”な仕上がりとなっている。どちらもA5サイズ・64ページの中綴じで1冊330円(税込)。

こちらは「だいたい5mm」の方眼タイプ

その後も、小さな「micro5サイズ」のリフィルや、専用のハードカバーなどが続々登場。
2021年7月には罫線が「なつみかん色」になったものが発売されるなど、第一弾の発売から1年以内に、シリーズは16種類にも増えることとなった。

こちらは「なつみかん・方眼罫」タイプのもの

きっちりとした図形を書きたい場合などには使わない方がよさそうだが、なんとなくほっとするようなかわいらしさがある、人気のこのノート。
一体、この“ゆるさ”はどんなアイデアから生まれたのだろうか。「いいかげんノート」を発案した、ナガハシ印刷の担当者にお話を聞いた。

ノートの罫線に「窮屈さ」感じたのがきっかけ

――「いいかげんノート」を作ったきっかけは?

普段ポスターやチラシなどのデザイン制作を業務としてるため、アイデア出しでノートをよく使用しているのですが、その際にノートの罫線に窮屈感を感じることがよくありました。

線を気にして描いているうちにアイデアが小さいものなっている気がしたので、白紙のノートに描いてみたのですが、今度は逆に自由に広がりすぎて考えがまとまらず、なんとかならないかなと思ったのがきっかけです。その時に「白紙」と「罫線」のちょうどいいかげんの線があったら使いやすいのではないかと思いつきました。

もともと、新しいノートの使い始めの1ページ目は「うまく書こう」とか「きれいに使おう」などと考えて変に気合いが入って緊張してしまうし、うまく書けないとそのノートを使い続けるのが嫌になってしまう性格だったこともあり、いいかげんな線ならうまくいかなくても気にならないかもしれないと思ったのもこの線の由来です。


――ぐにゃぐにゃの罫線はどうやって作ったもの?

実際に1本1本手書きしたものを使用しています。実寸の白紙の端に目安のしるしをつけて線を引きました。よこ罫線は一方向のみに線を引くので間違っても消してやり直せるのですが、方眼罫は間違えると消すのがとても大変だったので、こちらの方は何度かやり直しをしました。

また、実際に書いた線の太さが商品に反映されるので、シャープペンの芯の太さを変えてちょうどいい罫線になるように社内でチェックしてもらいました。

 

――「いいかげん」という名前がインパクト大。どう付けた?

社内の女子企画チームで話し合ったのですが、とにかく思ったことを口にしてその場が「おもしろいね!」と盛り上がればそのアイデアを詰めていくという方法をとっていました。

キャッチコピーの「わたし的には、だいたい完璧。」も雑談の延長線のような感じでぽろっと出てきたのですが、そのときはとても盛り上がりお気に入りのコピーになりました。メンバーが同世代ということもあり、ひらめいたアイデアを言いやすい環境だったこともあるかと思います。


――こだわったポイントは?

印刷の際、このふにゃふにゃの線に思ったように色がのらなかったため、現場と相談してインクの度合いやデータを調整したことが特に大変でした。普段の業務から、色の出方など現場と話し合いながら進行しているのですが、このノートの刷り出しの時に内心では「こんなふにゃふにゃな線に手間をかけていただいて申し訳ない…」と恐縮していました。

通常の印刷とは違った難しさもありましたが、紙にもこだわって書き心地のよい紙を使用して作ることができました。


「いいかげんノート」が生まれたきっかけは、ノートの罫線に感じた「窮屈さ」。
しかし反対に、罫線のない白紙のノートでは、自由に書けすぎてしまう……そんな時に思いついたのが、ピシッと整ってはいないけれど、きちんと存在感はある「ちょうどいい加減」の線が入ったノートだという。

ノートの最初の方のページは綺麗な字で書けていても、使い終わるころには乱れた文字ばかりが並んでいる……そんな経験をしたことのある人も多いだろうが、表紙をめくればすぐにふにゃふにゃの線が登場。「最初の1ページ」に書き込むときの「綺麗に書かなくちゃ!」という緊張感からも解放してくれるのが、このひとつひとつ手書きで引かれた“いいかげん”な線の効果なのだ。

「何気ないメモ帳に」 SNSでは意外な使い方も

肩に力を入れずに使える「いいかげんノート」だが、おすすめの使い方以外にも、ユーザーから寄せられた使い方があるという。


――どんな使い方がおすすめ?

たくさんのきまりやルールの中で生活していると、ふいに息苦しく感じることがあると思うのですが、そんな時に、自分で使っているノートくらいはいいかげんに使えてほっとしてもらえたらと思っています。アイデアノートだけではなく日記や何気ないメモ帳など、暮らしによりそうような使い方をしていただけるとうれしいです。

線を引くときも「フリーハンドでOK」な気分になれる

――実際に使ったユーザーの感想は?

「新しいノートの1ページ目が緊張する」という方に共感していただけたのはもちろんですが、インクを好きな方が、方眼罫の線がインクをはじくというところに注目してくださってインク帳として使っていただけたことがとても印象に残っています。インクをはじいてしまうことはデメリットのようにとられてしまうかなと思ったのですが、そこを面白いと反応してくださったのは安心しましたし、シリーズを通して商品の強みになりました。

他にも、はじいたインクの模様が綺麗にでているノートを切り抜いて折り紙のようにして使ってくださるなど、ノートとしてだけではない色々な使い方もできることに気づかせていただきました。

インクを弾くと味のある模様が浮き出てくる

方眼罫の「いいかげんノート」に水性インクを使って書くと、罫線を印刷しているインクの油分が水性インクを弾いて濃淡ができ、ふにゃふにゃのマス目と相まってなんとも味のある模様が完成。

この特性を生かして、インクの色を記録する「インク帳」としていいかげんノートを使用する人がいるということで、実際にSNSには「書きやすいしインクの発色も良い」「なんとも言えないラインが浮き出てくるのが可愛い」など、カラーインクを愛用する人たちの投稿が多数あり、ユーザーも自由な発想で「いいかげんノート」を活用しているようだ。

画像:kuma(@ku_ma0ku_ma)さん

「いいかげん」シリーズは、ナガハシ印刷の公式オンラインショッピングサイトなどから購入できる。

何かとストレスが溜まりがちな生活の中、ちょっとほっとできるこんなメモを生活のお供にしてみるのはいかがだろうか。
 

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