4月から新年度が始まり、心機一転、身のまわりを一新した人も多いだろうが、逆に「変わらない」ことでTwitterの注目を集めたものがある。

お客様各位
拝啓 平素は格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
創業より変わらぬ、ツバメノートの意匠ですが、来年度もデザイン変更しないこととなりましたので、ここにお知らせいたします。
来年度も何卒よろしくお願い申し上げます。
               敬具

3月27日にこう投稿したのは、昭和22年(1947年)に創業した、東京・台東区の老舗文具メーカー、ツバメノート。

昭和40年(1965年)と令和5年(2023年)のノートがそっくりな比較画像とともに、創業時から使ってきたデザインを2023年度も変えないとツイートしたところ、4.6万件の「いいね」が集まった。(4月12日時点)

令和5年モデル(出典:ツバメノート)
令和5年モデル(出典:ツバメノート)
この記事の画像(7枚)

ツバメノートといえばデザインだけでなく品質へのこだわりも有名だ。
フールス紙という最高級の紙に、日本最後の1台だという約60年前の印刷機と水性インクで罫線を引いた同社のノートは、油性と違いわずかなペンの引っ掛かりもないという。

(参考記事:ノートに線を引く「罫引き印刷機」が最後の1台に…壊れたらどうなる?ツバメノートに聞いてみた

紙の端までしっかり罫線が引かれていることも特徴
紙の端までしっかり罫線が引かれていることも特徴

今回話題になった表紙のデザインは、創業当時に会社の前を通りがかった占い師が手書きでデザインしたものだという。ノートの表紙を拡大してよく見てみると確かに手で書いたように左右で形が違うことが分かる。

ノートの上部中央、真円ではなく左右も非対称になっている
ノートの上部中央、真円ではなく左右も非対称になっている
ノートの下部左右、形状も若干違う
ノートの下部左右、形状も若干違う

実は去年も同じような投稿をしていたが…

このデザインは今も全く同じだというが、逆に進化したところはないのか?4.6万「いいね」の影響で売れ行きも上がったのだろうか?
ツバメノート代表取締役の渡邉一弘さんに聞いた。
 

――「デザインを変更しない」という投稿は毎年やっている?

去年も同じような投稿をしたのですが、それが始めだったと思います。
ちょうど年度末、新年度4月に向けてノートを新調するお客様もいると思いますので、告知の意味も込めてツイートさせていただきました。

ツバメノートのツイッターとしても、無事一年過ごし、新たな一年、心機一転頑張ろうという気持ちもありました。年を重ねるごとに昔のノートの魅力も増すと思いますので、来年も投稿したいと思っています。
 

去年に投稿した画像は963件いいねだった(4月12日時点  出典:ツバメノート)
去年に投稿した画像は963件いいねだった(4月12日時点  出典:ツバメノート)

――去年の投稿は「いいね」が1000弱で、今年は4.6万となったのはなぜ?

去年の1000弱の「いいね」も弊社の中では伸びたツイートなのですが、今年は本当に想定外でした。

少し文章を変えただけなのですが、要因が全く分かりません。なぜでしょう?去年より、文章を企業の形式的な感じにしたのが良かったのでしょうか?
ただ、ゆるくつぶやくツイートの中では異彩を放っていた文章だと思います。


――ツイッターで話題になると売り上げも伸びる?

ここ1週間ぐらいはとても忙しくさせていただいています。
ちょうど繁忙期ということもあり、ツイッターの効果かどうかはわかりませんがありがたいと思っています。また、ツバメノート買ってみようかなというリプライもたくさんあったので、今後もお客様に期待しています!

過去に期間限定でオンラインショップを開設して、福袋などを販売したのですが、ツイッターで告知した際は、弊社としては信じられない量の御注文がありました。ツイッター(フォロワーさんやツイッターユーザー)の力は偉大だと思います。

紙質は良くなっているかもしれません

――ツバメノートのデザインが誕生した経緯は?手書きというのは本当?

当時のことを知る人は社内にもういませんが、間違いなく手書きで描かれたと思います。パソコンなどがなく、細かいところに手書きの要素がたくさん見られます。

ただ、原本の紙の版下はすでに消失しており、時代とともに形を変えています。創業当時は原本の紙の版下を使っていて、昭和中期~後期、紙の原本は劣化するので、フィルムに置き換わったと思います。

最近ですと、印刷の際データにする必要があるので、そのフィルムを高画質スキャンする形で元のデザインとして守られています。デザインの修正加工は一切行っていません。


――創業時からノートの中身も全く同じなの?

印刷の過程、デザインの線の太さなどに若干の違いなどがありますが、デザイン自体は全く変わっていません。

中身の罫線はほんの少し違います。昭和40年のノートは均一に横線なのに対して、令和5年モデルは一番上と下が太い罫線になっています。手法としてはどちらも、前に取材していただいた、最後の罫引き印刷機を使って印刷しています。創業当時から変わらない技術で、頑張って残したいと思っています。


――実は進化している部分はある?

ご存じの方もいると思いますが、昔の弊社の紙にはツバメのマークの透かしがありました。
現在は抄造(紙の製造)の都合で、ツバメの透かしはなく、フールス紙の特徴である、簀の目(すのめ)が入っています。光にかざすと細かい横線とちょっと太めの縦線が見えると思います。

他にも、表紙のデザインの下に昔は十条製紙抄造と書いてありましたが、現在、十条製紙はありませんので、ツバメ中性紙フールス使用と書いてあり、そのようなマイナーチェンジはありますが表紙のデザインは変えていません。

紙質に関してはできるだけ安定したものをご提供しようと努力しています。製紙技術などは昭和22年よりはるかに良くなっているので、もしかしたら、紙質も昭和22年より良くなっているかもしれません。

(出典:ツバメノート)
(出典:ツバメノート)

――ツバメノートにとって新年度の目標は?

時代に合わせてネットショップなども開設しようと頑張っています。
ツバメノートが欲しいけど売っていないというお声もたくさんいただいており、お客様に恙なくお届けできるように頑張りたいです。

また、新商品開発にも力を入れています。ノート会社なので、紙に偏りがちですが、それが弊社のいい所でもあるので、ノートなどの紙製品でお客様に面白がっていただけるような商品提供に力を入れたいです。
 

変わらないことがツバメノートの利用者に喜ばれ、話題になった今回の投稿。
ちなみに、以前取材した最後の1台だという印刷機について改めて質問したところ、今現在も現役で使用中だが、やはり修理できる職人は見つかっていないという。印刷機の構造を把握するためには分解しなければならないが、分解したら元に戻せる保証はできないと言われているそうだ。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。