サンダルを拾おうと・・・痛ましい夏の事故
4月。
取材のきっかけは、東京・板橋区の川で起きた水難事故だった。

小学2年生の男の子と、助けようと飛び込んだ男性が、ともに死亡。
男の子は、友人のサンダルを拾おうとして川に落ちたという。
サンダルなんかのために、なぜ。
ニュースに向けて急いで編集をしながら、胸が詰まった。
Twitterで拡散 “サンダルバイバイおやこ条約”
6月頭。
Twitterのタイムラインで目を引いたのは、一見ポップな動画だった。
「ぼくは サンダルやぼうしやおもちゃが流されたら
自分の命を守るため 追いかけずにバイバイします
なくしたからって叱らないでください」

無邪気な子どもの声で再生された"サンダルバイバイおやこ条約"。
物を追いかけて子どもが流されてしまわないよう、親子で約束する。前述のような事故をなくすための取り組みだ。
「なんで子どもたちはサンダルを追いかけてしまうのか」
発案者である、2児の母で水泳インストラクターのすがわらえみさんに話を聞いた。

すがわらえみさん:
去年も今年も、流されたサンダルを追いかけた子が溺れて亡くなる事故が起こりました。
何で子どもたちは追いかけてしまうんだろう、何があれば追いかけなくてすむんだろうと思ったんですね。
去年7月には、埼玉県日高市で9歳の女の子がサンダルを追いかけて亡くなった。
「友達が川で溺れている。はやくきて。死んじゃうよ」
痛ましい119番通報は、一緒にいた友達からだった。
ちょっとした水遊びのつもりでも事故に
警察庁によると、昨夏(7-8月)子どもが犠牲になった水難のうち、最も多かったのは水遊び中の事故だ。

水泳とまでいかない、ちょっとした水遊びのつもりでも、ふとした拍子で、深みや急な流れに足を踏み入れて、思いがけない結果につながってしまう。
すがわらえみさん:
サンダルバイバイっていう言葉だったり、今回の条約が子どもたちが追いかけないきっかけになればなと。
大人が伝えてあげないことには子どもではなかなか判断できない。
「条約」の最後には「叱らないことを約束します」という親からの約束がある。

すがわらえみさん:
叱らないことを約束しますって、けっこう親としてはプレッシャーじゃないですか。
書こうかすごく迷ったところでもあるんですけど、この一文があれば子どもたちはすごく安心というか、(流されたものを)見送れると思うんですよね。
「ものを大切に」という日頃の教育を真摯に受け止める子どもたちは、とっさの時にサンダル「なんか」とは、なかなか思えないのだ。
「泳げるように」だけではダメ
すがわらさんは、水の事故防止のため、ライフジャケットやアクアシューズの選び方、水遊びの際の注意といったことを、オンライン教室などを通じて伝えている。

「溺れる前」「溺れかけている時」「溺れてしまってから」
当然ながら、時が経つほど、できることは減る。そして、「泳げること」と「おぼれないこと」は別、ともすがわらさんは語る。
だから、泳げるようになるだけではなく、事前に学ぶことが重要な事故防止だ。
6月末。教室に参加した母親の中には、こんな声も。
オンライン教室の参加者:
小学生のとき、自分の同級生をサンダルを追いかけたっていう例で亡くしたことがあって。
一番身近にできることから、知ってるか知らないかだけで変わることは、伝えていきたいです。
「サンダルバイバイおやこ条約」は、日本ライフセービング協会のe-Lifesavingというサイトにも掲載されている。
このサイトは文部科学省のホームページにも掲載されており、水辺の安全について、スマホなどを通じて、誰でも無料で、簡単に学ぶことができる。
夏休みも後半戦。
天気に恵まれない日は水辺には近づかず、家でお子さんと注意を学んで、晴れた日にはその知識を携えて、水辺で楽しい思い出を作って欲しい。
サンダルバイバイおやこ条約のダウンロード▼
https://aquaproject721.wixsite.com/website
(フジテレビ「Live News days」 市原璃音)