自民党の高市早苗前総務相が16日午後、FNNの単独インタビューに応じ、菅首相の任期満了(9月30日)に伴う総裁選について「実施されたら出馬させていただく」と述べ、立候補への意欲を表明した。
安倍前首相に総裁選再出馬を要請 詳細なやり取り明かす
この記事の画像(6枚)高市氏はインタビューの中で安倍前首相に「安倍内閣でやり残したことがいくつかあるので、7月まで再出馬をずっとお願いしていた」と明らかにした。再出馬要請の理由について「アベノミクスのバージョンアップ。危機管理投資、成長投資をしっかりやらなければコロナで傷んだ日本経済は立て直せないという危機感があった」と語った。
再出馬の要請に対し安倍氏が難色を示したため、高市氏は「0.1%も出ないですか、100%出ないんですか。これまで一緒に勉強してきたのにそれらの政策はどうなっちゃうんですか」と詰め寄ったものの、安倍氏は「去年辞めて今年出るわけがないだろ」と断ったという。安倍氏の固辞を受け高市氏は「では私が(出馬します)」と切り出した。安倍氏は止めることはなく、社交辞令的に「頑張ってね」という感じで笑っていたという。
一方で高市氏は「安倍前首相は基本的に菅首相の続投を支持されると聞いているので無理なお願いは申し上げない」と振り返る。
安倍再登板要請の背景には中国への技術流出の危機感
さらに高市氏は安倍氏と話した際の詳細なエピソードも明らかにした。
「日本の学術・研究機関に中国に近い研究者が入っていて機微技術が流出している問題がある。何が怖いかというと、極超音速ミサイルがマッハ5以上で飛んでくる。それが軌道を描いて落ちてくるのではなく、レーダーでは捉えられないような低い高度で変則的に飛んでくる。そうしたミサイルの開発が進んでいる。基盤技術である耐熱素材とエンジンは日本の研究・学術機関から持ち出されているという目の前に迫った危機がある中で、海外のように人民解放軍と関係のある研究者に一定の入国制約を設けるとか、学術・研究機関に入っていただく場合にスクリーニングするこういうことを可能にしないといけない。そのためには法整備が必要だ。日本では特許を取ると公開されることになるので、日本の技術が海外の軍に使われることもある。なので、一定の分野に関しては“秘密特許”を作りたい。『スパイ防止法』というよりは『経済安全保障包括法』を作らないといけない。そこで『もう一度、安倍前首相やりましょうよ』と話を続けてきたが、7月末に断られた。それで『じゃあ私が』ということになった」
高市氏語る「国の究極の使命は国民の生命、領土・領海・領空、資源を守ること」
高市氏は「国の究極の使命は国民の生命を守ること、領土・領海・領空、国家の資源を守ること。先のリスクを最小化していくための投資を行うことはものすごく大事だ」と指摘した上で「想定される問題が様々あるが、備えをやらないと日本は大変なことになる」と述べた。その上で、一つの例として、「サイバー攻撃が増えている。もし民間のインフラが攻撃を受けて、ブラックアウトした場合、分析し反撃するための法律がない。放送分野へのサイバー攻撃もあるし、航空機や鉄道や自動車がハッキングされたら命にかかわるのでサイバー対策を徹底したい」と強調した。
また気候変動に伴う防災対策についても「リスクの最小化」が必要と強調。「気象庁の地球温暖化予測や環境省の100年後の天気予報を見ると風速70mの台風が来るとか、1時間に100ミリレベルの雨などの劇的な変化に耐える防災をしないといけない。建築も農業も根底から変わっていくので、農地や牧場だけでなく河川流域全体などしっかり防災対策に耐える設計をしていく。生態系を大事にしながら防災・減災していく技術も、日本独自のものを作り、アジアの国々にも輸出する。それが危機管理投資・成長投資にもなるので力強く進めたい」と語った。
菅政権の新型コロナ対策「少し備えが遅かった」
高市氏は菅政権の新型コロナ対策について次のように指摘する。「一生懸命やっているが少し備えが遅かった気がしている。一刻も早く補正予算を編成していただきたいと菅首相宛にお願いしたが、補正予算が編成されなかった。お金が動き出すのが遅くなるのではと心配している」
さらに「大規模災害や感染症のリスクはなくなるものではない」とした上で、医薬品やワクチンの国産化に向けた体制整備の必要性を強調した。
一方、9月下旬に出版予定の政策集については「総裁選が行われたら出馬する意思を表明した以上は、トータルな政策をまとめるべきだと思った。成長戦略については、何でも国債発行で賄えるわけではないし、新しい税制についても書いた」と明かした。また「アベノミクス路線」を継承するかについては「ニューアベノミクスということ。金融政策をしっかりと機能させる。アベノミクスの成長戦略を投資にかえる」と強調した。
自民党の総裁選は8月26日の選挙管理委員会で正式に日程が決定する。立候補するには党所属の国会議員20人の推薦が必要で「正式に日程が決定したらしっかりと政策を訴えながらお願いに回る」と語る。派閥に属さない高市氏にとって、推薦人の確保が最初の課題となりそうだ。