2021年7月、アメリカ海兵隊は普天間基地で保管している有機フッ素化合物・PFOSを含む汚水を、下水道へ流す検討をはじめたことを明らかにした。

2021年7月 普天間基地
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米軍は沖縄県や宜野湾市に対し、2021年6月にうるま市にある貯油施設から汚水が流出した事故を踏まえ「早く処理する必要がある」とする一方、専門業者に委託して焼却処分を進めると”財政的な負担が大きいため”と、下水へ流す理由を説明した。

自然界ではほとんど分解されない“永遠の化学物質“PFOS

宜野湾市議会は「健康被害や環境への影響などが懸念される」として、汚水の適切な処理を求める意見書を可決。

2021年7月 宜野湾市議会

米軍は下水道に汚水を流す際、濃度を2020年に環境省が定めた「暫定指針値」1リットルあたり50ナノグラム以下にすると説明している。

ただ、PFOSは自然界では殆ど分解されず”永遠の化学物質”と呼ばれるもので、濃度を薄めたからといって安全性が担保されるものではないと、沖縄大学の桜井国俊名誉教授は警鐘を鳴らす。

沖縄大学 桜井国俊 名誉教授:
米軍はお金がかかるからやらない。犠牲になるのは誰なのかということですよね。
下水処理場で生まれる汚泥は、これはむしろ肥料として有益なんだっていう形で、農業に利用されているわけですよね

下水にPFOSが流されれば、それを含む汚泥が畑に撒かれ、いずれ人の口に入ることになると危険性を指摘する。
桜井教授は、米軍の対応は国際的に比較しても看過できるものではなく、日本政府はアメリカ軍に汚染浄化を求めるべきだと訴える。

沖縄大学 桜井国俊 名誉教授:
例えばドイツに関して言えば、日本と同じように米軍基地があるわけですが、米軍が汚した地下水、これは汲み上げて浄化処理するということをですね、ドイツではやられているわけですよ。日本では全くされていない

汚染浄化を阻むのは“日米地位協定”

北谷浄水場

2016年、北谷浄水場の水からPFOSが検出され沖縄県は、汚染源とみられる嘉手納基地への立ち入りを求めているが、5年が経った今なお、調査すらできない現状がある。

それを可能にしているのが、米軍に排他的な管理権を認める日米地位協定。
地位協定に環境に関する規定が一切なかったため、2014年に環境補足協定が結ばれたが、加藤裕弁護士は、日本政府や地元自治体の立ち入り権限が認められておらず、実効性に乏しいと指摘する。

加藤裕弁護士:
事故の際、米軍は通報しますよと。立ち入りの要請があった場合には配慮しますよと。
これは米軍のさじ加減で決まるわけです。要するに拘束力がない協定をつくって、やっているような外見しかつくっていない

ドイツでは汚染浄化の費用を米軍が負担…

2018年、ドイツを訪れ地位協定の調査を行った加藤弁護士は、ドイツにある米軍基地内でPFOSの汚染が発覚した際、地元自治体が基地内に立ち入り、汚染源を特定。その浄化費用を米軍が負担するなど、対応には歴然とした差があったと言う。

ドイツのボン補足協定では、米軍にドイツの国内法を適用することを定めていて、そこに日米地位協定との大きな違いがあると強調する。

加藤裕弁護士:
ドイツやイタリアでは、主権が尊重されてその国の法令の下で米軍は運用されている。環境被害があった場合には、被害の回復、清算する処置をとる義務があると書いてある。
そこの根本的な発想の違いが、今の沖縄での環境被害を大きくする原因になっている

汚染源を明らかにしなければ、当然のことながら浄化はできないため、主権国家としての日本政府のあり方が問われている。

(沖縄テレビ)