鹿児島県内では、新型コロナウイルスの感染者が増加傾向にあり、医療体制のひっ迫が懸念されている。
その医療現場で、医師らとともに24時間体制で重症患者に向き合う「医療チーム」を取材した。

ECMOを管理する「臨床工学技士」 医師とペアで現場にも

多くの医療機器や医師らに囲まれる男性。重症化した新型コロナの患者だ。男性には今、「ECMO」がつながれようとしている。

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「ECMO(エクモ)」とは、患者の血液を一時的に体の外に出して、人工肺で二酸化炭素と酸素を交換して体内に戻す。
こうすることで、機能が低下した肺を休ませて回復を促すことができる。新型コロナ重症患者の最後のとりでと言われている。

このエクモを操作するのが、医療機器のスペシャリスト「臨床工学技士」。

鹿児島大学病院 臨床工学技士 早崎裕登さん:
患者によって設定や管理基準があるので、それに合わせて我々も確認しながら、先生の指示のもと行う

鹿児島大学病院では、これまでに4人の新型コロナ患者にECMOを使用し、うち3人はECMOを外すまでに回復したという。

このECMOをはじめ、患者の命を預かる全ての医療機器を管理するのが「臨床工学技士」。鹿児島大学病院では22人の臨床工学技士が、約2,000台の機器の保守・点検を行っている。

鹿児島大学病院 臨床工学技士 早崎裕登さん:
(鹿大病院にあるECMOは)3種類ほど。種類が必要になってくるのも、特徴が異なっているので、適材適所で機械を選択するのも我々の役割の1つ

離島の新型コロナ患者が重症化した際には、医師とペアで現場に向かい、3人の命を救ってきた。

この日、鹿児島大学病院ではECMOの研修会が行われた。
医師が、太ももと首の血管に親指ほどの太さの管を挿入し、管がからまっていないかなど看護師が確認したうえで、臨床工学技士がECMOを起動する。

鹿児島大学病院 臨床工学技士 早崎裕登さん:
チーム医療というところで、先生や看護師と我々の役割をしっかり全うしていかなければ

退院後の生活を考えて患者に向き合う「理学療法士」

実際の患者はECMOを2週間以上使い続けることになり、この期間は24時間体制で常に10人ほどがチームを組んで患者を見守る。
このチームの中で、退院後を見据えて患者に向き合うのが「理学療法士」。

鹿児島大学病院 理学療法士 野島丈史さん:
歩けない、立てない、座れないとなる患者を減らす。せっかく助かった命なので、できるだけ元の生活に近い状態に戻って家に帰っていただく

ECMOをつけた段階から退院後の生活を考えて、患者の体の向きを変えたり、手足を動かしたりとリハビリをはじめる。

研修会でも、ECMOなど4本の管がつながった患者の体勢を、細心の注意を払いながら、あおむけからうつぶせへと変える。

医師:
ECMOのカテーテル(管)は一緒にこっちでいいんですか

理学療法士:
そうですね。全部真ん中に寄せる形になります

医師や看護師、臨床工学技士らが協力して体勢を変えるが、中心となるのが理学療法士。

鹿児島大学病院 理学療法士 野島丈史さん:
できるだけ元気に、身体的能力もQOL(生活の質)も高い状態で家に帰ってもらえるように対応し続けていく

個々の能力高め、チームの熟練度上げることが重要

研修に参加した医師は、チーム医療の重要性を実感している。

鹿児島大学病院 救命救急センター 政所祐太郎 医師:
自分たちと看護師だけがいれば助けられる患者ではない。救命だけでなくて、その後の生活も考えた治療をするには、このチームでやらないといけない

理学療法士:
安全に治療していくためには、チームの熟練度が重要。自分たちの能力知識をあげて、高い治療ができるように準備していきたい

臨床工学技士:
チーム医療というところでチームで行うので、われわれの役割として全うしていかなければ。的確な医療技術を提供するのが、我々の使命

第5波が迫る中、1人でも多くの患者を救うため、そして元気に退院してもらうため、医療の現場には、研さんを積み続けるスペシャリストの存在があった。

(鹿児島テレビ)

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