“はしか並み”デルタ株の感染力

新型コロナウイルス第5波の勢いが止まらない。新規感染者数は、各地で過去最多を更新。全国的に増加の一途をたどっている。

福岡県内の感染拡大も歯止めがかからない。感染拡大の要因は、感染力がより強いインド由来の変異ウイルス・デルタ株とみられ、福岡県内では、陽性者の半数以上がこのデルタ株に置き換わっている。

この記事の画像(15枚)

「はしか」並みの感染力があると言われ、デルタ株の感染者が会食の席に1人いた場合、参加したほとんどの人が感染する恐れもあると専門家は警鐘を鳴らす。

“はしか並み”の感染力というデルタ株
“はしか並み”の感染力というデルタ株

九州医療センター・野田英一郎医師:
(2021年1月の)第3波までであれば、10人会食して、隣同士や向かい合う人など3人程度の感染波及だった。(5月の)第4波のアルファ株(英国型)、第5波のデルタ株(インド型)においては、10人で会食したら10人が感染するクラスターも発生した。(2週間後の県内は)2000人を超えるかもしれない

九州医療センターの野田英一郎医師
九州医療センターの野田英一郎医師

高熱、めまい、首の痛み、せき、味覚障害…日によって様々な症状

中等症とされ、7月25日まで約10日間、病院に入院していた福岡県筑紫野市の男性に発症当時の様子を聞くことができた。

中等症とされた筑紫野市の男性:
39度近い熱が出て、歩くこともできないし。トイレに行くのさえ、はって行くような状況だった

男性は7月11日に陽性が発覚した後、当初、福岡市内の宿泊療養用のホテルに入った。しかし、高熱が続くなど症状は一向に改善しなかった。

中等症とされた筑紫野市の男性:
(ホテル常駐の医療関係者に)電話で「今日の熱は何度でした」と報告するだけで、回復する感じがしなかった。(食欲がなくて)食事もとれないし、点滴をホテルで打てないと言われたので、病院に移動させてくれとお願いをした

その後、男性は病院でCTスキャンの検査を受け、肺炎の疑いもみられたため、すぐに入院。新型コロナ治療薬のレムデシビルの投与など、本格的な治療を受けることができた。

中等症とされた筑紫野市の男性:
高熱、めまい、首の痛み、せき、味覚障害。その日によって、いろんな症状が出る。(これが中等症と)ひとくくりには言えないと感じた。(ホテルに)そのままいたら、どうなったのだろうと。今考えると怖い

増加する自宅療養者 クリニックがオンラインなどで診察へ

感染拡大はいつ落ち着くのか。福岡市医師会の平田泰彦会長は、自宅療養者が増加することへの懸念を示した。

福岡市医師会・平田泰彦会長:
在宅療養の患者さんが、どんどん増えていくということで、その中から急変をしていく人がいる

福岡市では現在、感染者約2000人が入院せずに自宅で待機していて、福岡市医師会は地域のクリニック180カ所ほどの協力を得て、自宅にいる感染者を電話やオンラインで診察する取り組みを始める方針を明らかにした。

福岡市中央区のクリニックも、自宅にいる感染者の診察を受け持つことを決めた。

とみた内科クリニック・富田直史院長:
午前中の診療、午後1時~午後3時は訪問診療をして、(それ以降の)午後は発熱外来をしているので、なかなか時間を作ることは難しいですけど、しかし、これは誰かがやらないといけない

とみた内科クリニックの富田直史院長
とみた内科クリニックの富田直史院長

クリニックでは通常の診療に加え、毎日30人程度の新型コロナワクチンの接種を実施。さらに日曜日も含めて発熱外来も設けるなど、すでに手いっぱいの状況だが、医療崩壊を防ぎたいという一心で協力することにしたのだ。

とみた内科クリニック・富田直史院長:
今回、明らかに患者数が増えているので、必然と病床使用率は上がってきて、恐らくまわらなくなるだろうと。そういった意味では、こういったことをせざるを得ない。微力ながらではありますけど、積極的に援助できればいいかなと

自宅療養者への対応は、地域医療を守るために避けては通れない。

第4波踏まえ…自宅療養者の体調変化を見逃さないシステムを

福岡県内では、さらなる取り組みも進んでいる。

8月5日、久留米市新型コロナ対策本部。引っ切りなしに陽性確認の連絡が入り、患者の情報がFAXで次々と送られてきていた。

職員:
8月になって増えた。なかなか大変な状況です

久留米市では、通常の倍の40人体制で新型コロナの対応にあたっている。市内の医療機関から応援の医療スタッフを招き、事務スタッフには民間企業の社員も加わっている。

民間企業から出向しているスタッフ:
旅行会社から来ました。(患者の)データを入力しています。少しでもお役に立てるように頑張っていきたい

久留米市ではこの日、新たに27人の新規感染者が確認された。年代はほとんどが40代以下で、20代が7人と最も多い。

壁一面に貼られた入院患者リスト。現在入院している患者の多くが、若い世代だ。

入院患者は若い世代が多い
入院患者は若い世代が多い

久留米市保健福祉課・田中浩之課長:
第4波のときは、高齢者が病床に入っていたケースが多かったが、最近では40代とか50代が入院するケースが増えている

久留米市では宿泊療養施設に空きはあるが、家庭の事情などでやむを得えず自宅にとどまる人も多く、8月5日時点で自宅療養者は84人に上っている。

久留米市保健福祉課・田中浩之課長:
こちらが自宅療養者に対して、あらかじめお配りするもので、パルスオキシメーターも貸与している

自宅療養者には、体温計や血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターを貸し出し、毎日、保健師が測定結果を電話で聞き取っている。

保健師:
パルスオキシメーターの酸素の方はどうですか? 99%ですね。他に症状とかはどうですか?

中には自宅療養中に突然、容体が急変し、入院となるケースもあるという。

保健師:
軽症で特に症状はなかったが、きのうの夜間に熱が38度まで上がって、SpO2(血中酸素濃度)も90%前半まで落ちてしまったと、朝方、家族から連絡が来た

40代の男性は陽性判明から6日後に突然高熱が出て、血中酸素濃度も酸素投与の必要とされる93%を下回った。

保健師:
医師と相談して、入院した方がいいだろうということで入院してもらっています

久留米市では第4波の経験を踏まえ、今回、独自で自宅療養者のフォロー体制を構築した。

久留米市保健福祉課・田中浩之課長:
第4波の時にかなり自宅療養者が増えて、一時的に(自宅から)救急搬送されるケースもあった。ですから、医者にご自宅に行っていただいて診療していただくと

久留米市保健福祉課の田中浩之課長
久留米市保健福祉課の田中浩之課長

市内13の医療機関と協力し、陽性者が自宅にいても診察を受けられるシステムを作ったのだ。医療機関のリストには、点滴や酸素投与、子どもへの対応など、病院ごとにできることが記されている。

久留米市保健福祉課・田中浩之課長:
自宅療養せざるを得ず、どうしても悪化するケースもある。こういう形で往診医が直接自宅に出向き、点滴をしたり、状況によっては酸素投与をしたりして対応したい

久留米市ではこうした取り組みをさらに進め、自宅療養のリスクを少しでも減らしていきたいとしている。

突然、重症化する事もある新型コロナ。変化の兆候を見落とさないためには、どうしたらいいのか。

終わりが見えないまま走るマラソンが続く。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
テレビ西日本

山口・福岡の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。