島根県の会社が制作した障害児のための育児ノート

島根・松江市のデザイン・印刷会社が制作した、障害児用の“育児ノート”。

そのノートの帯につづられた、「幸せな記録で悲しまないために。」というメッセージ。発案した女性は、「少しずつでも子どもの成長を感じてもらいたい」と思いを語った。

育児ノートとは、検診や予防接種の時期などが記された市町村が交付する母子手帳とは別に、親が子どもの成長の記録をつづるためのノート。身長や体重の推移をはじめ、日々の記録なども書き込める。

一般的な育児ノート
一般的な育児ノート
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松江市のデザイン印刷会社が完成させた、一般のものとは違う「育児ノート」。血中酸素濃度や輸血歴のほか、病院やサポート施設の記入欄、また体重グラフの縦軸横軸には基準となる値がない。自由に数字を決めて書き込むことができるのだ。

さまざまな工夫が施された育児ノート
さまざまな工夫が施された育児ノート
体重のグラフも、縦軸横軸ともに自由に書き込むことができる
体重のグラフも、縦軸横軸ともに自由に書き込むことができる

このノートは「障がい児・医療的ケア児のための育児ノート」で、5月から主にネットで販売を始めた。

「障がい児・医療的ケア児のための育児ノート」
「障がい児・医療的ケア児のための育児ノート」

ノートの発案者は株式会社トレンドに勤める山崎さん。

株式会社トレンド・山崎絵美さん:
障害児用の育児ノートをネットで探したが全然なくて、あったらいいなとその当時思っていました。

記録で悲しんでほしくない…母としての思いをノートに

山崎さんは6年前、体重700グラムで次男・生翔くんを出産した。超低出生体重児だったことが原因で、脳に重い障害が残った。

山崎さんが子育ての中で感じたのは、母子手帳や一般的な育児ノートに書かれていることが、自分の子どもに当てはまらないということ。手帳やノートを開ける度に、ほかの子と同じではないという悲しみが襲ったという。

一般的な育児ノート
一般的な育児ノート
基準値が書き込まれた育児ノートでは、「あてはまらない」ことが多くて悲しくが襲う
基準値が書き込まれた育児ノートでは、「あてはまらない」ことが多くて悲しくが襲う

株式会社トレンド・山崎絵美さん:
生まれてきてくれたことに感謝しています。できない部分を見て悲しむのではなくて、少しずつでも、ゆっくりでも成長しているというところを、お母さんたちには感じてもらいたいと思います。記録で悲しんでほしくないんです。

子どもの成長を感じてほしいという山崎さん
子どもの成長を感じてほしいという山崎さん

縦にも横にも基準の値のない自由な体重グラフは、そんな思いをもとに障害のある子を持つ母親約70人の意見を聞き取り、形にしたもの。

基準の値のない自由な体重グラフ
基準の値のない自由な体重グラフ

「幸せな記録で悲しまないために」。
ノートの帯には、山崎さんの経験に基づく気持ちが記されている。

株式会社トレンド・山崎絵美さん:
このノート1冊で救えるとは思わないですが、家族に寄り添う商品はそんなにないので、そんなアイテムの1つになればいいと思っています。

コロナ禍で売り上げの落ち込む会社に、何か貢献できないかと提案した「障がい児・医療的ケア児のための育児ノート」。

子どもそれぞれの歩み、成長を喜びたいという気持ちが詰まった育児ノートだ。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

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