新型コロナウイルスのワクチン接種を加速させるため、河野太郎規制改革相は、職場や大学での接種が本格化した6月21日前後から、テレビ番組に相次ぎ出演した。

フジテレビ系列では、21日に「イット!」、24日に「めざまし8」に出演し、ワクチン接種への理解を求めた。こうした連日にわたるテレビ番組出演の中で河野氏がとりわけ強調したのが、自治体への感謝と“ワクチンデマ”の払拭だった。

「相当頑張っている」自治体への謝意 政府も実績に自信

「今自治体が相当頑張って、1日の接種回数、100万回をかなり超えてきているんじゃないかというような数字になっています」

「自治体が本当に頑張って、スピードをどんどん上げてくれていますので、どこかでワクチンの供給が追いつかなくて限界になるというところまで来ちゃうんじゃないかと」

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河野氏は、職場や自治体の大規模接種の新規受付を一時休止すると表明した翌日の24日に出演した「めざまし8」でこのように語り、目標としていた1日100万回の接種達成に関する自治体の努力に謝意を示した。その上で、「自治体による接種と職場接種で今後、1日約150万回ペースになる」との見通しを示した上で、接種可能数の「限界に近づいている」として、今後は接種が進んでいる自治体にワクチンの供給がいくよう、適正に供給していくという綱渡り的な作業をやっていくと今後の課題を語った。

このように河野氏が自治体に謝意を示したワケは、政府が自治体に対し高いハードルを課し、目標達成に向けてハッパをかけてきたためだ。菅首相が、「7月末までの高齢者への接種完了(4月23日)」、「1日100万回接種(5月7日)」、そして「10月~11月での全接種対象者の完了(6月7日)」と次々に大号令をかけたことを受け、河野氏はワクチン接種の総合調整役として、自治体に様々な要請・要求を行った。自治体でワクチンが廃棄された際には「極めて許しがたい」と述べるなど、誤った認識で対応にあたる自治体に対し激高する場面もあった。

ただ、大規模接種センターが開設され、ワクチン接種が加速化した6月上旬以降、1日あたりの接種実績は実力値で50-60万を超え、集計における前日比の「増分」は100万回を超えるようになり24日には、1日あたりの接種回数が6月の複数の日で100万回を超えたことが正式に確認された。河野氏は周辺に「これが実現できたのは、ひとえに自治体のおかげだ」と語っており、連日のテレビ番組の出演で、こうした自治体への謝意を強調したのだ。

「1つ1つ潰していく」デマの払拭を重視 マスクなしの日常は?

自治体への謝意のほかに河野氏が連日強調したのが、コロナワクチンに関するデマの払拭だ。河野氏は、不妊や流産、遺伝子の変異が起こるといったデマを取り上げ、明確に否定した。24日に出演した「めざまし8」では、こうしたデマについて、「1つ1つ潰していく」と語り、早速、出演の2時間後、自身のブログを更新し「実験用のネズミが2年で全て死んだ」「不妊が起きる」といった7つのデマを否定した。

また、テレビ番組の出演で際立ったのは、ワクチン接種後の日常についての疑問だ。21日に出演した「イット!」では、ワクチン接種を終え、運動をして汗を流す高齢女性を取材したVTRを受け、河野氏は、ワクチンを打った事による日々の過ごし方について「安心感という意味では非常に大きい」としつつも「今の時点ではマスクとかアルコール消毒とかというのは続けていただきたい」と述べ、ワクチン接種後にマスクをいつ外せるのかについての具体的な言及は避けた。加藤綾子キャスターが最低でも国内の接種率が60~70%くらいか?と質したのに対し、河野氏はそれ以上の割合が望ましいとの意向を示唆しつつも、「私は運び屋でございますので」と明言を避けた。専門家による研究結果が出るまでは、ワクチンを接種してもマスクの着用が求められるということだ。

テレビラッシュ終え 河野氏の前には「若者への呼びかけの“山”」 

テレビ出演のラッシュを終えた河野氏が次に着手するのが、若い世代への接種の啓蒙活動だ。河野氏は、23日の会見で「若い世代にどう働きかけをして、若い世代の皆さんにも積極的に打っていただくかという次の山に移行しているという状況だ」と述べた。

ワクチン接種の意向調査で、若い世代になるほど割合が低い傾向となっていることなどを踏まえ、今後、SNSをフル活用して発信を強化していく方針だ。関係者によると、人気ユーチューバーとやお笑い芸人との対談などが予定されているという。

河野氏は、2021年2月末に開かれたファッションイベント「東京ガールズコレクション(TGC)」にビデオメッセージを寄せ、若い世代に対しワクチン接種を呼びかけ、6月上旬には、「LINE NEWS」の動画コンテンツ「VISION」で若者の政治関心を高めるネット番組にも出演した。ツイッターのフォロワー数が政治家トップを誇り、発信力を買われワクチン接種担当に任命されただけに、今後も型破りなスタイルで発信を展開しいく方針だ。

菅首相の掲げた“1日100万回”は無事達成し、高齢者接種の完了の目標も「実現できるだろう」と自信をちらつかせる河野氏だが、若者への呼びかけという“山”を無事に越えられるのか、引き続き注目が集まりそうだ。

(フジテレビ政治部 阿部桃子)

阿部桃子
阿部桃子

ニュース総局政治部 平河クラブ 自民党茂木幹事長担当。1994年福岡県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、2017年フジテレビ入社。安倍元首相番や河野規制改革相など経て現職。