本来は、新型コロナ軽症者を受け入れるはずの宿泊療養施設。
しかし、北海道で新規感染者が過去最多を記録した5月中旬には、酸素投与を行うなど病院並みの対応を求められた。
最前線で治療にあたった医師が証言する。

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
このままでは救急車の中で亡くなってしまうという事態が発生しそうだった

この記事の画像(12枚)

「入院」が必要な人が「宿泊療養施設」から移動できない危機が…

札幌市内の宿泊療養施設で治療にあたる札幌医科大学附属病院の水野浩利医師が、ひっ迫した医療について語った。5月中旬のピーク時には、入院が必要な人が宿泊療養施設にとどまらざるを得なかったという。

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
体の中の酸素が足りなくなって、すぐに酸素投与しなければいけない人が増加。ピーク時には、入院できなくて宿泊療養施設にとどまる人に酸素を投与したり、点滴をしたりして、医療提供をしていた

本来は軽症者や無症状の患者を受け入れる宿泊療養施設だが、宴会場として使われていた部屋にベッドを入れ、病院で行われるような治療を行ったのだ。

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
息苦しくない?

宿泊療養施設の患者:
息苦しいです

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
この91%という数字は非常に低い値で、酸素を吸わないといけない状態です

患者と緊迫したやりとりが行われた。

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
なかなか『呼吸が苦しい』と訴えるのが難しいのがこの病気の特徴。客観的に数字で苦しくなっていないか、体の中の酸素が足りているかを把握する必要があった

多い時には300人以上を受け入れていた。
日中は医師1人と7人ほどの看護師が常駐するが、常に患者の様子を観察しなければならないため、医療従事者の負担は深刻だった。

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
マンパワーの拡充が急激なピークに追いついていかなかった。重症度が高い人に酸素投与することを余儀なくされたので、受け入れをどんどん拡大するわけにはいかなかった

さらに事態は深刻化する。宿泊療養施設の枠を超える対応を迫られた、緊迫の瞬間が訪れたのだ。

「宿泊療養施設」の枠を超えた対応をする事態に…

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
入院待機ステーションの業務を、この宿泊療養施設で臨時で代行した。救急車もここで受け入れた

札幌市は患者の受け入れ先病院が決まるまで一時的に治療にあたる、「入院待機ステーション」を5月16日に開設した。

しかし、そこまで待っている余裕がなく、宿泊療養施設がその役割を担うことになったのだ。札幌市内の病院から医療チームが派遣され、臨時で対応した。

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
宿泊療養施設からの入院も進まないし、自宅からの入院も進まなく、救急車が立ち往生しかけている状況。このままでは、救急車の中で亡くなってしまうという事態が発生しそうだった。二度とこのような事態を起こしてはならない

水野医師は、この1年治療にあたってきた中で5月中旬が最も深刻だったという。現在は患者数や入所者の重症度もピーク時より下がってきたが、まだ安心はできないと指摘する。

危機を乗り越えても漂う"緊張感"

札幌医科大学附属病院 水野 浩利 医師:
リバウンドが心配。インド株(デルタ)の発生が確認されていて、それが北海道に入ってくると再び急激に患者数が増えるということが危惧される。そういった事態にならないように、今一度気を引き締めていかないといけない

6月20日に期限を迎えた緊急事態宣言。「まん延防止等重点措置」の適用後も感染対策が欠かせない。

北海道文化放送
北海道文化放送

北海道の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。