本格的な夏を迎えるにあたって気を付けたいのが“熱中症”だ。

熱中症は、高温多湿な環境に長くいることで体温調節する機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態になることだ。めまいや頭痛、吐き気、けいれんなどの症状が現れ、場合によっては救急搬送されたり、死亡することもあるという。

熱中症予備軍の隠れ脱水症の見つけ方

危険な状態になる前にいち早く気付き、重症化しないよう対応することも重要となる。そのような中で今、厚生労働省で公開している「熱中症予備軍の隠れ脱水症の見つけ方」を、あるTwitterユーザーが紹介したことで注目を集めているのだ。

セルフチェックの方法は、片方の親指の爪を反対の指でつまむだけ。つまんだ指を離し、白くなった爪の色が元の色に戻るのに3秒以上かかる場合は、脱水症を起こしている可能性があるという。

爪を押すだけのセルフチェック(厚生労働省「あんぜんプロジェクト」より)
爪を押すだけのセルフチェック(厚生労働省「あんぜんプロジェクト」より)
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爪でのセルフチェックだけでなく、尿の色を確認して脱水症状を判定する方法もある。色が濃くなるほど体内の水分が足りず、「隠れ脱水症」が疑われるという。

判定チャートは、水分を十分に摂取している「1」から、コップ一杯の摂取を勧める「2」、1時間以内に250ミリリットルをとってほしい「3」、今すぐ250ミリリットルの摂取を促す「4」、今すぐ1000ミリリットルの摂取を促す「5」までの5段階。

なお「5」より濃かったり赤や茶色が混じっている場合は、脱水症以外の可能性もあるため、すぐ病院に行くように促している。

尿の色で確認するセルフチェック(厚生労働省「あんぜんプロジェクト」より)
尿の色で確認するセルフチェック(厚生労働省「あんぜんプロジェクト」より)

重症化する前に対応・対策をし、自分の身を守ることは大切なことだ。特に、さらに暑くなっていく夏に向けては、ふとした際に手軽に体調を確認しておくことを習慣にしておくのもいいかもしれない。

しかし新型コロナウイルスの影響で、まだまだマスク着用が続く今、「マスク着用での熱中症」もより心配になってくる。

コロナ禍だからこそ気を付けるべき熱中症への対策はあるのだろうか? 厚生労働省健康局健康課地域保健室の担当者に話を聞いてみた。

職場に潜む危険性、有害性を“見える化”

ーー「熱中症予備軍の隠れ脱水症の見つけ方」はどういう経緯で公開された?

御指摘の資料は、平成27年度、平成28年度「見える」安全活動コンクールへ応募があった作品です。

「見える」安全活動コンクールとは、職場に潜む危険性、有害性を可視化(見える化)し、労働災害防止のために創意工夫している事例を広く募集するものです。応募いただいた事例の中から、一般投票及び外部有識者からの意見を基に、優良事例を選考しております。同コンクールは、平成23年以降毎年実施しております。


ーーSNSをもとに話題になっていることに対してはどう思う?

「見える」安全活動コンクールへの応募作品であり、お答えする立場にありませんが、熱中症予防に対する意識が高まっていることについては非常に良いことだと考えています。

「見える」安全活動コンクール 優良事例が掲載されているHP画面(厚生労働省「あんぜんプロジェクト」より)
「見える」安全活動コンクール 優良事例が掲載されているHP画面(厚生労働省「あんぜんプロジェクト」より)

なお「爪の色でチェック!熱中症予備軍の見える化」は、平成28年度の「見える」安全活動コンクールの“熱中症を予防するための「見える化」”で優良な活動事例として、そして「尿の色で脱水症状チェック」は平成27年度の優良な活動事例として、厚生労働省の「あんぜんプロジェクト」公式ホームページに掲載されている。

他にもさまざまな応募による安全の見える化作品があるので、気になる人は見てみるといいかもしれない。

マスク着用で熱中症リスク高まる

ーー毎年、どれくらいの人が熱中症になっているの?コロナの影響は?

令和2年6~9月の全国における熱中症による救急搬送人員の累計は6万4869人となっています。また、令和元年の熱中症による死亡者数は1224人となっています。現時点では熱中症に対する新型コロナウイルス感染症の影響は、明らかにはなっておりません。


ーー熱中症予防には、どのような方法がいいの?

暑さを避けるため、室内では扇風機やエアコンで温度を調節する。遮光カーテン、すだれ、打ち水を利用する。室温をこまめに確認する。WBGT値(気温、湿度、輻射(放射)熱から算出される暑さの指数)も参考にする。等の対策を取ってください。

屋外では、日傘や帽子を着用する。日陰の利用、こまめな休憩を心がける。天気のよい日は、日中の外出をできるだけ控える。等の対策を取ってください。

熱中症への対策(厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」より)
熱中症への対策(厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」より)

また、「からだの蓄熱を避けるために、通気性のよい、吸湿性・速乾性のある衣服を着用する」「保冷剤、氷、冷たいタオルなどで、からだを冷やす」ことも有効です。

更に、室内でも、屋外でも、のどの渇きを感じなくても、こまめに水分・塩分、スポーツドリンクなどを補給してください。

こまめに水分をとることも大切(厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」より)
こまめに水分をとることも大切(厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」より)

ーーコロナ禍だからこそ気を付けるべきことはある?

新型コロナウイルス感染症予防のため、マスク着用の機会が多くなっていますが、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高まるので、屋外で人と十分な距離(2メートル以上)が確保できる場合には、マスクをはずすようにしましょう。

また、マスクを着用している間は、以下の点にご注意ください。

・強い負荷の運動、または長時間(目安として1時間以上)の運動は避けてください。
・水分を摂る回数が、気づかないうちに減ることがあります。のどが渇いていなくても、こまめな水分補給を心がけましょう。
・周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要です。


室内冷房中に、窓開けによる換気を組み合わせる場合は、外気温の低い朝や夕方以降などに、窓開けを行い、換気時間を多く取るなど、室温が上がらないよう工夫いただくことを推奨します。

マスク着用時に気を付けるべきこと(厚生労働省「令和3年度の熱中症予防行動(リーフレット)」)
マスク着用時に気を付けるべきこと(厚生労働省「令和3年度の熱中症予防行動(リーフレット)」)

厚生労働省でも熱中症予防の普及啓発・注意喚起

ーー熱中症になってしまった時の対応は?

エアコンが効いている室内や風通しのよい日陰など、涼しい場所へ避難するとともに、からだを冷やし、水分・塩分を補給してください。自力で水が飲めない、意識がない場合は、すぐに救急車を呼んでください。

熱中症の疑いがある人がいたら…(厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」より)
熱中症の疑いがある人がいたら…(厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」より)

ーー厚労省ではどのような熱中症予防の活動を行っている?

厚生労働省では熱中症予防を呼びかけるため、各種リーフレットを作成し、例年、各地方自治体・各都道府県労働局等に送付するほか、HPに掲載して熱中症予防の普及啓発・注意喚起を行っています。

リーフレットのほか、「熱中症診療ガイドライン」もHPに掲載し、熱中症の診断基準、予防や治療法などの周知を図っています。

また、職場における熱中症に関して、全ての職場において熱中症予防対策の徹底を図っていただくことを目的として、5月1日~9月30日までの期間に「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しております。

「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(厚生労働省 令和3年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(リーフレット))
「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(厚生労働省 令和3年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(リーフレット))

また、場所を問わずアクセスして学べる、熱中症予防のためのオンライン教育用ツールをポータルサイトに掲載しています。職場における熱中症対策については、今年度から登場したマスコットキャラクター「チューイ カン吉」とともに周知しています。

マスコットキャラクター「チューイ カン吉」(厚生労働省HP)
マスコットキャラクター「チューイ カン吉」(厚生労働省HP)

厚労省によると、新型コロナウイルスによる熱中症への影響は分かっていないとのことだが、“マスク着用”は熱中症のリスクが高まるとのことだ。たしかに顔の半分を覆うマスクは、着用すると呼吸がしづらく、蒸し暑くなってくる。

マスクを着用しながらでも楽しい夏を過ごせるよう、自分自身で体調管理をしっかり整えてほしい。

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プライムオンライン編集部
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