9日午後に、およそ2年ぶり、そして菅政権では初めてとなる党首討論が行われた。日本が直面する課題である東京オリンピック・パラリンピックの開催、そして新型コロナ対策をめぐって菅首相と野党各党の党首が論戦を繰り広げた。
今回の放送では、次期衆議院議員選挙に向けた与野党の戦略を徹底分析した。

野党が不信任案を出さない選択肢はない

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新美有加キャスター:
立憲民主党の枝野代表は内閣不信任決議案の提出について、党首討論を踏まえて判断するとしていました。党首討論後「オリンピックの安全性、補正予算、会期の延長について3つのゼロが明らかになった。政権を変えるしかないと確信した」と発言。決議案は出るのでしょうか。

長妻昭 立憲民主党 副代表:
段取りのモードに入っており、着々と進んでいくのでは。一党だけで出すわけではなく、野党でできる限り広範に足並みを揃える必要がある。また選挙で訴えるテーマとも直結するのでその点を整えていく。

山口二郎 法政大学 教授:
出さない選択肢はないが、総選挙の戦い方について野党間でしっかり合意を作るためにはある程度の調整・準備が必要。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授:
野党にとっても難しい局面。コロナ禍の中政争をやっている場合か、という批判も出かねない。今回の党首討論を布石に世論に対する雰囲気作りをしている。

長妻昭 立憲民主党 副代表:
総理はサミットで、日本でオリンピックをやるのでよろしくと言う可能性が高い。尾身先生らの提言案を見る前に国際的にアナウンスすることがあればひどい。

反町理キャスター:
サミットでG7各国から賛意を集めるプロセス、帰国後の尾身さんらの提言との向き合い方も含めて判断材料にしていくと。一方、野党が不信任案を出せば解散を進言すると二階幹事長は言ってきた。総理が解散する選択肢はありますか。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
絶対とは言わないが、たぶん解散はしない。

反町理キャスター:
するとこの一連の「不信任案を出すぞ」「解散するぞ」のやりとりは、解散しない前提だった。誰が得をするのか。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
二階幹事長。実際、解散しないことは二階さんもわかっている。その中で枝野代表も不信任案を提出しないと言っていた時期もあった。二階さんに振り回された。

党首討論で「質問に関わらず紙を読んでいた」?

菅義偉 首相(左)、枝野幸男 立憲民主党 代表(右)

反町理キャスター:
今回、総理はなぜ党首討論を受けたのでしょう。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
立憲民主党の安住淳国対委員長から党首討論の話が出て、自民党の森山裕国対委員長は他の法案の審議の兼ね合いもあり、それを受けた。森山さんが言えば総理はOKと言う。うまくいったという認識だと思います。

山口二郎 法政大学 教授

山口二郎 法政大学 教授:
党首討論は時間も短く、関係ない話をするとか、自分のペースに引っ張り込むことをしやすい。

反町理キャスター:
コロナの影響で議員の入場数に制限もかかり、野次についても自粛ムードがあった。首相としては御しやすい環境だったと。

長妻昭 立憲民主党 副代表:
紙を2〜3枚用意して、質問にかかわらずこの紙を全部読むんだと思っていたのかも。しかし、長く時間を稼いだからラッキーだというのはよくない。総理に情熱があまり感じられないので、国民も心がなかなか動かないのでは

首相はあくまで「ワクチン1本足」

新美有加キャスター:
党首討論の主なテーマは、経済対策も含めた新型コロナ対策、そして東京オリンピック・パラリンピックへの対応の二つ。まずは新型コロナ対策をめぐる論戦について。

長妻昭 立憲民主党 副代表:
今年3月の緊急事態宣言の解除が早すぎたことへの反省について、一切お答えがなかった。今月20日にはまた緊急事態宣言の期限が来る。

新美有加キャスター:
10月から11月にかけて、必要な国民・希望する方すべてにワクチン接種を終えるという発言については。

長妻昭 立憲民主党 副代表

長妻昭 立憲民主党 副代表:
目標値が出たのはよかった。ただ、1回の接種が全国民の4割に行き渡るとある程度抑えられるという他国の例があるが、オリンピックには間に合わない。

反町理キャスター:
総理は長妻さんご指摘の部分には答えず、新たなファクトを出してワクチン接種の順調さをアピールする作戦。田﨑さんはどうご覧に。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
総理としては、緊急事態宣言ではなくワクチンで勝負という判断。質問に答えないのはお互い様の部分もある。

菅義偉 内閣総理大臣

反町理キャスター:
この総理の「ワクチン1本足」作戦、どうご覧に。

山口二郎 法政大学 教授:
国民の気持ちを切り替える意味では効果的。だが10月〜11月までにというのはある種の希望的観測。私の立場からはずるいとも言える。

菅義偉 首相

反町理キャスター:
ぶら下がり会見の様子。総理は1日あたり100万人の接種に達したと述べたが、これから職域企業単位の接種が始まるにあたり新たな目標を設定するかという質問に笑顔を見せた。ごまかしの笑いではないですよね。

山口二郎 法政大学 教授:
ごまかしではないでしょうね。これから接種が順調に進むということに、手応えを感じているように見えた。

枝野代表は五輪延期・中止の言葉を口にしなかった

新美有加キャスター:
党首討論のもう一つのテーマは、東京オリンピック・パラリンピックへの対応。

反町理キャスター:
共産党の志位委員長は、尾身氏の発言を引きながら、オリンピックはやるべきではないと述べた。

長妻昭 立憲民主党 副代表:
専門家の意見はほぼ一致しており、オリンピックをやる場合は亡くなる方が増える可能性が非常に高い。それにもかかわらずやる理由、命を上回る大義は何か。あるのなら教えてほしい。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト 駿河台大学客員教授

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
立憲民主党の東京都連が延期あるいは中止と言ったが、枝野代表は今日の党首討論で延期や中止と言わなかった。

長妻昭 立憲民主党 副代表:
先日の予算委員会でも、枝野代表の方から医療体制の負荷がかかるリスクを排除できない限りオリンピックは中止・延期だと言っている。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
リスクがあればできないと言っているが、中止・延期を求めると言ってはいないのでは。

長妻昭 立憲民主党 副代表:
基本的には趣旨は同じ。

反町理キャスター:
枝野代表が延期・中止とあえて口にしない理由は。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
世論が少しずつ変化してきている。開催を容認する声が増えてきた。空気が変わりつつあることを心配しているのでは。

コロナ経済政策の背後に総選挙を見据えた計算

新美由加キャスター:
党首討論では、新型コロナ対策に関して経済対策についての論戦もありました。30兆円規模の補正予算を速やかに編成させるべきだという枝野代表に対し、総理は今年度の補正予算や新型コロナの予備費の繰り越し金額がおよそ30兆円あり、まずはこれを執行すると返答。

反町理キャスター:
総選挙を前にした政府与党としては、野党の要求に応じる形ではなく、秋の臨時国会などで出す景気対策パッケージとしての補正予算を総選挙の公約に示す、という選挙戦略があるのでは。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
そのような感じがする。かねてからの自民党のやり方。

反町理キャスター:
長妻さん、そうなれば悔しい展開となるのでは。

長妻昭 立憲民主党 副代表:
国家の危機に国民を弄んでいるとしか思えない。我々も格差を是正し生活崩壊を防ぐ政策パッケージを持っており、それを出して堂々と戦っていく。

総選挙は10月3日、10日、17日のいずれか

新美由加キャスター:
今後の主な政治日程。オリンピック・パラリンピック後の9月末に自民党総裁の任期が満了、10月21日には衆議院議員の任期満了。この秋までには衆院選が行われます。解散の時期は。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
投票日は10月3日、10日、17日のいずれかと見ています。

反町理キャスター:
その場合、自民党の総裁選は先送り?

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
一時凍結になると思います。

反町理キャスター:
総理はワクチン一本足でここまで対応を進めてきた。感染を抑え込めば支持率が上がり、選挙が有利に、という思惑は当然あるでしょう。だが、それでも支持率は上がらないかもしれないという指摘もある。

田﨑史郎 政治ジャーナリスト:
菅政権は決して人気が高まる政権ではない。総理自身もいわゆる人気取り、世論へのアピールはあまりしない。ただ、それでも自民党支持率は崩れていない。次の総選挙で自民党は議席を減らすが、233という単独過半数を維持できるかどうかが焦点。

BSフジLIVE「プライムニュース」6月9日放送