鉄道ファンには人気だが…利用低迷のJR芸備線“廃線”の危機 山奥の「秘境駅」が歩んだ歴史【広島発】
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鉄道ファンには人気だが…利用低迷のJR芸備線“廃線”の危機 山奥の「秘境駅」が歩んだ歴史【広島発】

テレビ新広島
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6月8日  JR西日本は、利用者が低迷する芸備線の一部区間について、沿線自治体と今後の運行の在り方を協議したい考えを示した。
ローカル線の今、そしてこれからを考える。

無人駅・備後落合駅を見守り続ける元国鉄マン

山間を進む列車。ワンマンのディーゼルカーだ。
梅雨を迎え、うっそうと伸びる草木を分け入るように進んでいく。

山間を進むディーゼルカー
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男性は、毎日決まった時間に家を出る。
歩くこと約2分、到着したのはJR備後落合駅。
無人駅のため、駅員は誰もいない。

男性:
ずっと年間通じて見とっても、月曜日はお客さんが少ないですね

始めたのは掃除。4年前からボランティアで行っている。

無人駅の掃除を4年前から行う

男性の名は永橋則夫さん(78)。
備後落合駅がある庄原市西城町で生まれ育った。

永橋則夫さん:
これも寒い日以外は素手でやります。汚いもんと思ったら汚い、自分の心次第

永橋さんは国鉄時代、大阪などで機関士として働き、1987年に民営化した後は家庭の事情などで退職、地元に戻った。

駅のトイレも、時間をかけて掃除する。
夏の暑い日、そして雪深くなる冬も欠かしたことはない。

広島県の「三次駅」と、島根県の「江津駅」を結ぶ三江線の廃線(2018年3月)を機に、掃除などのボランティアを始めた。

永橋則夫さん:
小さい時から、家で汽笛を聞きながら大きくなって、寝ても覚めてもポッポポッポいうね。命の次に大事な存在です

無人の駅に鉄道ファンが集う

山々に囲まれた場所に位置する備後落合駅。
JR芸備線とJR木次線の接続駅で、広島・岡山・島根を結んでいる。

備後落合駅 広島・岡山・島根を結ぶ

広島市と岡山・新見市を結ぶ芸備線は、全長159kmと中国地方で一番長いローカル線。

自然に囲まれた線路

芸備線は、沿線地域の過疎化などで利用客の減少が続き、利用客は1日1kmあたり1323人と、約30年前に比べ半数になっている。中でも備後落合駅と東城駅の区間は11人と、JR西日本の管内で最も少ない区間。

芸備線と木次線が接続する午後2時過ぎ、無人駅は少し賑やかになる。
降りてきたのは鉄道ファンの人たち。
わずかな乗り換え時間を利用して、列車やホームなどを撮影する。

鉄道ファンが集う

兵庫から来た人・A:
本数が少ないんですけど、この時間帯だけは3つの列車が集まるって話を伺ってますので。それが楽しみでというのもあって来ました

兵庫から来た人・B:
率直のところ、すごく山奥と思いましたね。こういった良い所があるよと勧めていきたいかなと思いますね

1日の発車本数が少なく、鉄道遺構が多く残るこの駅は、いつしか鉄道ファンの間で「秘境の駅」と呼ばれ、週末になると県内外の鉄道ファンで賑わう。

駅舎にはノートが置かれていて、訪れた人たちは旅の記念に思い出をしたためる。
そのノートも、今では7冊まで増えた。

ノートには駅舎の絵も

戦後、賑わうホームに売り子や名物うどんの姿

芸備線の歴史は古く、1915年(大正4年)に志和地駅-東広島駅間が開通した。
戦時中は家族を戦地へ見送る光景が各駅で見られたという。

家族を戦地へ見送る光景

戦後、人々の暮らしにゆとりができると、備後落合駅は仕事や観光で出かける人で賑わい、特に冬はスキー客が多く訪れた。

かつて民宿を経営・大原チヨコさん:
鉄道関係の仕事をする人が泊まったり、スキーする人が毎年たくさん来た。30人ぐらい(泊まる)時もありました。上の部屋も下の部屋も使っていました

1960年代 スキー客で賑わうように

寿司80円、キャラメル20円、コーヒー30円。
ホームには、食べ物や立ち売りする男性の姿があったほか、冷えた体を温める一風変わった「うどん」も売られていた。

寿司80円、キャラメル20円、コーヒー30円

駅近くにある飲食店「ドライブインおちあい」で、その名物を今も味わうことができる。
その名も「おでんうどん」。具だくさんで腹持ちがいいことから人気だったという。

具だくさんの「おでんうどん」

ドライブインおちあい・兼本孝子さん:
(出していた時期は)年中です。お正月の2日間だけお休みで、あとはずっと開いていた。駅に駅長さんもいらっしゃったし、従業員の方もいらっしゃったし。今は無人ですからね、(無人駅に)なったからやめたんですよ

1960年代には多くの国鉄職員が働き、職員用の宿舎などもあった。
駅前には民宿、魚屋、酒屋、そしてパチンコ店もあったという。
しかし、自動車の普及、高速道路の整備、そして過疎高齢化もあり、利用する人は年を追うごとに減少した。
1985年には、国鉄が芸備線を廃止対象として検討したことで、国鉄労働組合が反対運動を活発化。広島市まで70kmの距離を自転車に乗り、廃止の中止を広く呼びかけた。

自転車に乗り、芸備線の廃止の中止を呼びかけた

この時は廃止を免れたが、その後 広島-米子間の高速バス開通などにより芸備線の長距離客は激減。
山陰へ抜ける急行が廃止され、備後落合駅は1998年に無人駅となった。

「維持難しく…」芸備線に廃線の可能性

2021年2月 沿線自治体を驚かせる、ある出来事があった。

JR西日本・長谷川一明社長:
これまで内部補助によって成立してきたローカル線の維持が非常に難しくなってきていると。関係自治体と一緒になって、持続可能な地域交通を実現できるように取り組んでいきたい

JR西日本の会見

会見で具体的な路線名は明らかにしていないが、かなりの線区で廃線となる可能性が指摘されている。

備後落合駅周辺の人・A:
備後落合もダメかという気がするのは、せんでもありません。ここまで昔からあった芸備線ですからね、なくなるのはちょっと嫌ですよね

備後落合駅周辺の人・B:
ほとんどワンマン(列車)。お客さんもほとんどいない。自分らばっかりで存続存続ばかり言うのも、なかなか難しいんじゃないかと思うんですけどね

5月 芸備線の存続に向けて、沿線の三次市、広島市など4つの市で作る協議会がJR西日本の広島支社長とオンラインで会談した。
路線の存続に向け、駅舎の活用や特別車両による貸し切り列車の運行など、沿線施設などと関連づけた利用促進策を策定したいとして要請書を渡した。
それに対し、JR西日本広島支社の藏原支社長は…

JR西日本広島支社・藏原潮支社長:
芸備線というのは、なかなか一つの線区と捉えるより、エリアごとなり、色々な形で捉えていかないといけない線区と思っております。今日のトップレベルはもちろんですが、実務レベルの検討の場を早急に作っていただきたい。草案だけでなく、具体論、各論に落とし込んで、少しでも早く実行していければなと思っております

芸備線“廃線”視野に? JR西日本「現時点では…」

JR西日本の発言についてどう感じたのか。
芸備線対策協議会の会長で、三次市の福岡市長に聞いた。

芸備線対策協議会会長・福岡誠志三次市長:
危機感というのは芽生えています。JRの収益に直結して、生活に結びつくような利活用というのは見込めないかもしれないけど、その中でも存続させる糸口とか切り口とか手段があれば、我々としては、それを可能な限りやっていくということに尽きるんじゃないかなと思います

そして6月8日。
JR西日本は会見を開き、利用が低迷する庄原市と岡山県の新見市の区間について、沿線の自治体と今後の運行の在り方などを協議したい考えを明らかにした。

しかし報道陣からは、区間の廃止を視野に入れたものではないかと質問が相次いだ。

ーー廃線も選択肢に含めて検討するのか?

JR西日本広島支社・藏原潮支社長:
特段そういったことは、先ほども申し上げておりません

ーー廃線は選択肢に入っているのか、いないのか?

JR西日本広島支社・藏原潮支社長:
現時点で決まったものはございません

会見では「現時点」という言葉を加えたJR西日本。
芸備線の今後が不安視される。

備後落合駅を見守り続ける元国鉄マン・永橋則夫さん:
私の考えとして、この駅を中心として、三方方向の線路も、おそらく途中まででなくなると思います。(JR西日本は)代行バスにね、そういうふうに持っていくんじゃなかろうかと。特にコロナでね、これだけJR西日本が大赤字を抱えてきたときに、そこが大きな分岐点だと思います

戦前、戦後、そしてきょうも走る芸備線。
そのローカル線の行く末は…
今、重大な分岐点に差し掛かっていることは間違いない。

(テレビ新広島)

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