鹿児島県内の空き家の増加ペースは、全国と比べても大きくなっている。
そうした中、熊本との県境にある伊佐市では、空き家の持ち主と空き家の利用を希望する人をつなぐ「空き家バンク」の取り組みが好調だという。その秘密とは。
「古さ」も売り…移住希望者に話題の空き家バンク
伊佐市のとある集落の中にある、深いやぶに覆われた古い家。一見、廃屋にしか見えない。

案内してくれるのは、伊佐市の職員・河野英二さんだ。
伊佐市企画政策課・河野英二さん:
味があって、レトロでかわいい。外側の窓がアルミサッシじゃない、木のままというのが、なかなかなくて

一時は、解体される予定もあったという築50年以上のこの空き家は、「空き家バンク」の登録物件の1つ。
「空き家バンク」とは、空き家の持ち主と、空き家を利用したいと希望する人をつなぐ、地方自治体が運営するサービスだ。

伊佐市では、コロナ禍以降のリモートワークの需要を追い風に、「空き家バンク」の成約率が約7割にまで高まっている。
好調の裏には、一見敬遠されがちな「空き家」であっても、逆にその「古さ」を売りにするといった独自の取り組みがあるという。

さらに…
伊佐市企画政策課・河野英二さん:
廊下の先に白い壁があるが、壁の奥が五右衛門風呂だったらしい

かつての改築で風呂場への出入り口がなくなってしまったものの、これが欠点ではなく、セールスポイントになるという。
伊佐市企画政策課・河野英二さん:
誰かがこれを復活させてくれないかな
空き家バンクに登録された100件近い物件の中には、古さや傷みが目立つものも少なくない。
それを逆手にとり、物件ごとにタイトルを付けて、DIYや田舎暮らしの楽しみ方などをあわせて提案することで、移住を希望する人たちの間で話題を集めているという。
空き家バンクで実現した“理想の田舎暮らし”
また、空き家バンクを利用して、理想の田舎暮らしを実現できたと喜ぶ声も。
伊佐市に3人で移住してきた佐藤さん一家の家。

佐藤さんがこの家と出会ったきっかけは…
佐藤誠一さん:
埼玉県で仕事をしていたが、隣の席の人が伊佐市出身だった。隣の人が昼休みに空き家バンクを見ていた。私もたまたま脇で見ていて、「アッ、この家がいいな」というので気に入った
大きな納屋に広い庭。そこには、佐藤さんがまさに追い求めていた理想の田舎暮らしがあった。

単身赴任をしていた佐藤さんは、元々3~4年のうちには仕事をやめて、一家で暮らそうと考えていたが、それを前倒しして、2020年の秋に引っ越してきた。
佐藤誠一さん:
目の前は公園だし、山があり、田んぼがあり。一番気に入ったのがお米。伊佐市って住みやすいなあって感じがしますね。実は、毎晩2人で「いいところ来たね」って

DIYで家の魅力を最大限引き出す
そしてまさに今、生まれ変わろうとしてる物件がある。
仲間とともに古民家のリフォームに取り組んでいるのは、空き家バンクの担当者・河野さん自身だ。

伊佐市企画政策課・河野英二さん:
DIY大好きなメンバーに集まってもらって。古民家の良さを生かしたいのがあり、この梁(はり)を見せたくて、天井を取って、新たに勾配天井を作って、そこにしっくい壁を作りたいと思って

実はこの家は、不動産の手続き上の問題で空き家バンクには登録できなかった。

そこで河野さんは、自身でこの家を購入。古い建築様式を残しながらも、住みやすい家を目指している。
伊佐市企画政策課・河野英二さん:
空き家は宝だと思って、これをチャンスに、良い人たちにたくさん届いてほしい

好調の伊佐市の空き家バンク。
その陰には、家の歴史や文化に愛情を注ぎ、その家の魅力を最大限発信しようとする人たちの努力があった。
(鹿児島テレビ)