増加の一途をたどり全国的に問題となっている「空き家」。この空き家について楽しみながら考えようというユニークなゲームが誕生した。制作したのは鹿児島・種子島の中種子町で町おこしに取り組む一般社団法人だ。

全国の空き家数は約900万戸  

「コミンカ!?」「あがり!?」「これであがれます」                         

種子島中央部にある中種子町の施設から、一風変わったカードゲームに熱中する人々の声が聞こえてきた。その名も「コミンカ」。ゲームでは“DIY”や“古民家”、“集落長”といった、一見カードゲームとは無縁の言葉が飛び交う。 

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このユニークなゲームは、全国的に深刻化する空き家問題を受け、少しでも関心を高めるためてもらおうと国土交通省の空き家対策事業を活用して作られ、2025年2月26日に発売された。総務省の調査によると、2023年10月1日現在、全国の空き家数は約900万戸と過去最多を記録していて、老朽化による倒壊や景観・治安の悪化など、空き家がもたらす近隣への悪影響は看過できない問題となっている。 

空き家問題を楽しく学ぶ「コミンカ」 

カードゲーム「コミンカ」の全72枚のカードには、DIYの道具や街、海、山の古民家など、空き家に関連したものが親しみやすいデザインで描かれている。  

 ルールはマージャンに似ており、プレイヤーは1人8枚の手札を持ち、同じカードを3枚集めて1セットとして3セット作ることを目指す。役がそろったら「コミンカ」と宣言し、点数を獲得する。 

一度ルールを覚えると一気に楽しくなるようで、「難しい、奥が深い」「あっ、コミンカ!」「2種だ!すごい!」「リーチ、リーチ」「コミンカ」「すごい」とゲームに夢中で興じる声が飛び交う。  

参加者からは、「ルールが分かったら結構楽しくなる」「絵柄が面白い」「思ったより作り込まれていて、楽しかった」といった感想が聞かれた。

地域づくりから生まれた空き家への取り組み

このカードゲームを制作したのは、中種子町の一般社団法人LOCAL-HOODだ。代表理事の湯目由華さんと夫の知史さんは、2020年4月に中種子町の地域おこし協力隊として着任し、協力隊の任期を終えた後も中種子町に定住、商店街の町おこしイベントなど地域づくり活動に取り組んでいる。

湯目さんによると、LOCAL-HOODの活動の拠点となっている「チャレンジ拠点YOKANA」は商店街の中で空き店舗になっていた場所を約10カ月かけてリノベーションし完成させた施設だという。 

湯目さんはこのリノベーションによって「『商店街自体がすごく明るくなったよ』と町の人たちから言ってもらえたことがうれしくて、空き家が活用されることで地域が明るくなるってことを体感することができた」と語る。空き家問題の取り組みはこの経験がスタートだった。  

「ネガティブな問題としてではなく、ポジティブに考えたとき、ゲームとして皆さんに空き家という話題を提供することで、もっと身近に簡単に楽しく考えてもらえるんじゃないか」。湯目さんはゲーム制作への思いを打ち明けた。

LINEを活用した空き家マッチングツール 

LOCAL-HOODの空き家問題へのアプローチは、カードゲームだけにとどまらない。県熊毛支庁と連携して開発した無料通話アプリLINEを使ったマッチングツール「ieno-osagari」は、空き家の所有者と移住希望者を直接つなぐ innovative な取り組みだ。

県熊毛支庁総務企画課の徳田洋課長は、「行政の人間は考えつかないようなアプリ、こういう方法は非常に面白い取り組みだ。少しでも種子島の住宅不足の解消と人材確保につながっていくことを期待している」と評価している。3月24日時点で、種子島の空き家所有者約40人と移住希望者約50人が登録しているという。

空き家問題を“自分ごと”に 

湯目さんは、空き家問題を自分ごととして考えることの重要性を強調する。「空き家問題っていうと、自分には関係ないんじゃないかと思う人が多いが、相続や親戚から相談を受けるケースが最近すごく増えているので、自分は空き家興味ないとか関係ないなと思ってる人こそ、まずはゲームとして遊んでほしい」と夫・知史さんは語る。

カードゲームやマッチングツールを通じて、空き家問題への関心を高め、積極的な活用につなげていく。この取り組みが、地域の活性化のきっかけとなることが期待される。中種子町発の新しいアプローチが、全国の空き家問題解決の一助となるかもしれない。

(鹿児島テレビ)

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