ロマン感じる…海底に沈む熟成ワイン

東日本大震災後、岩手・盛岡市に移住した宮古市出身の男性が、ワインを洞窟の海底で熟成させる取り組みを始めた。

宮古市浄土ヶ浜で人気の観光スポット「青の洞窟」。

浄土ヶ浜の「青の洞窟」
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5月10日、この海底で山ぶどうワインを5年間熟成させるプロジェクトが進められた。
企画したのは、盛岡市でバーを営む堀内繁喜さん。
このプロジェクトで堀内さんが心に決めていたのが、「宮古の海底に沈める」ことだ。

浄土ヶ浜 岩手・宮古市 5月10日

宮古市出身 堀内繁喜さん:
私が宮古出身で、宮古が大好きだし、青の洞窟というイメージもすごく良くて。なので、この洞窟の下にワインが沈んでいるっていう、どことなくロマンがある

被災乗り越え…故郷・宮古の山ぶどうでワイン造り

堀内さんは宮古市出身で、東日本大震災で市内にあった自宅と経営していたジャズバーが被災。
再建できる店が市内に見つからなかったことから、移住した盛岡市で2011年7月にバーを再開。2014年からは同じ市内でカフェも始めた。

BAR CAFE the S 岩手・盛岡市 菜園

宮古市出身 堀内繁喜さん:
こっちに出てくるときも、何となく離れづらかった面もあるので、ずっと宮古のことで何かできればいいなと思っていたので

今回、海底に沈めるワインは、堀内さん自らが開発したもの。

岩手県が生産量日本一、山ぶどうのワイン

原材料は宮古市の新里地区で獲れた山ぶどう。
岩手県が生産量日本一で、栄養価が非常に優れている山ぶどうについて、堀内さんは震災前から着目していた。

そして、2013年から葛巻町の「くずまきワイン」に委託して、年間約500本生産している。

5月4日、堀内さんはこのワインを広めようと、震災後初めて故郷の宮古で販売会を開き、友人もたくさん買いに来ていた。

買い物客:
甘くておいしかったので。すぐなくなっちゃうので、また買いに来ました

今回、沈める期間は5年と長いうえ、青の洞窟周辺は波が高くなる時期もあり、厳しい自然環境を乗り越えねばならない。
そのための専用ケースを、市内で鉄工所を営む友人の榊昭夫さんと何度も打ち合わせをしながら制作した。

榊鉄工所 岩手県宮古市

ケースは、さびないようにステンレスで作られ、堀内さんがデザインを考えた。

榊鉄工所 榊昭夫代表:
沈める場所が海の底なので、なるだけ波の抵抗がないように

期待と思いが込められたワイン…いよいよ海底へ

そして、ワインを沈める日。
この日は沈めるのを手伝ってくれるダイバーや、ケースを制作した榊さんなど、宮古時代の友人が集まった。

宮古市出身 堀内繁喜さん:
きのうはドキドキして眠れなくて。皆さんにこうやって、すごくいっぱい来てもらって、手伝ってもらって、宮古の方たちと一緒にできることがすごくうれしいです。宮古のためにもなればと思っています

この堀内さんの取り組みは、観光の後押しになると宮古市も注目している。

宮古市 山本正徳市長:
宮古ならではの資源みたいなものになる可能性が高いですからね

この日は、2017年産と2018年産のワイン、約70本を沈める。
水が入らないよう、ろうで密封した。

約2カ月かけて完成したケースは重さが約200kg以上あり、浮袋をつけて浄土ヶ浜マリンハウスのサッパ船で運ぶ。

約200kgのケースをサッパ船で運ぶ

ワインボトルには空気が入っていて、うまく沈まない可能性もあるため、ケースを先に沈め、海底でワインを入れることにした。

海底で1つずつケースへ

堀内さんも一緒に潜って見守る中、1つずつ丁寧にケースに入れていった。
この海底での熟成に、ソムリエも期待を寄せている。

ソムリエ 松田宰さん:
海底だとワインの動きが少ないですから、香気成分が崩れないで、良い熟成の仕方をするという部分ですよね。水温が低いですから、ゆっくり熟成することによって、おおらかな味わいになり、角が取れるような感じになるので、そこに期待したいですね

約3時間かかってワインを全て入れ終えたあと、最後にしっかりとふたを閉め、無事に作業を終えた。

再会は5年後…

宮古市出身 堀内繁喜さん:
こんなに大変だと思わなかったです。もっとスムーズにいくもんだと思っていました。ダイバーの方に感謝しかないです

堀内さんは5年後、この浄土ヶ浜で、海底熟成ワインと沈めていないワインの飲み比べも計画している。

震災から10年、離れていても「ふるさとのために何かがしたい」と思う堀内さんと、それを応援する仲間たちには強い絆が感じられた。

宮古市出身 堀内繁喜さん:
楽しみですね。またここで皆さんにお会いできるのがすごく楽しみですね、5年後。こうやって笑って飲みたいですね。揚げたワインを

(岩手めんこいテレビ)