観光客は半分以下に…御手洗地区の新戦略

広島のがんばる人たちをご紹介するコーナー。今回は故郷の宝で地域おこし。
舞台は、瀬戸内に浮かぶ島。歴史とアニメとアイデアで、新たな観光振興につなげる。

呉市豊町、大崎下島の御手洗地区は、かつて潮待ちの港として栄え、現在も数多くの歴史的建造物が残る町。

歴史ある町並みが観光客に人気の御手洗地区
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しかし、新型コロナウイルスの影響は、この歴史ある町並みにも無関係ではなかった。

一般社団法人 御手洗デザイン工房 代表・尾藤慶さん:
今まで観光客が土日含め、平日もたくさん来てもらっていたが、新型コロナの影響で訪れる人が格段に減っている現状ですね。半分以下に減っていますね。

そうした状況を受け、御手洗の歴史文化の保存活動を行っている「御手洗デザイン工房」がクラウドファンディングを実施。ここで集めた資金をもとに登場したのが「観光音声ガイド」だ。

一般社団法人 御手洗デザイン工房・井上明さん:
このコロナになって、ガイドさん1人に対して大人数で、密になってガイドするというスタイルも、ちょっと難しくなってくるかなと。

こうして、3月20日にスタートした観光音声ガイド。
一緒に渡される地図を参考に、気になる建物の前で該当する番号を押せば、その歴史などを教えてくれる。

音声ガイド:
旧金子家住宅。町年寄や庄屋を務めた金子家。屋号「三笠屋」の屋敷跡です。江戸時代末期に建てられた母屋は呉市有形文化財に指定され、土日祝日は有料で見学することができます。

屋号「三笠屋」の屋敷跡。観光音声ガイドで歴史を学ぶことができる

アニメ「たまゆら」の声優・儀武ゆう子さんが町を案内

このナレーションを担当したのが、儀武ゆう子さん。

竹原市に住む女子高校生たちの姿を描いたアニメ「たまゆら」で、主人公の1人、桜田麻音を演じた声優だ。

音声ガイドのナレーションを担当した声優・儀武ゆう子さん

この桜田麻音が御手洗出身ということで、今回、この音声ガイドのナレーションをお願いしたところ、快諾。しかも、ただナレーションを付けただけではない。例えばこんな趣向も…

音声ガイド:
私、桜田麻音は、ここから見る御手洗の風景が本当に大好きです。特に島が金色に輝く黄昏時がおすすめです。

アニメの場面を思い出しながら楽しめるガイドにもなっている。

こちらの「若胡子屋跡」は、江戸時代には100人を超す遊女や芸妓がいたという待合茶屋だが、この場所に伝わる伝説も紹介している。

若胡子屋跡には古くから伝わる伝説があるとか

一般社団法人 御手洗デザイン工房・井上明さん:
ちょっと怖い話なので、おどろおどろしく声優さんに声を入れてもらったり、BGMで演出をしていたり。これはちょっと普通の音声ガイドでは聞けないような話も収録しています。

音声ガイド:
「もーし、おいらんえ、お歯黒をつけなんせ」と言葉優しく、かわいい“かむろ”(遊郭に住む童女)がお歯黒壺を差し出した。遊女は、羽筆にお歯黒をたっぷり含ませて、鏡に向かって付け始めたが、どうしたことか、この日に限ってよくつかない。ほかのお歯黒壺を取り換えさせたが、これもまた思うようにつかない。「えー、口惜しい」

お歯黒壺を差し出す“かむろ”

音声ガイド:
絹を裂くような叫び声をあげて、花魁は煮えたぎったお歯黒をそばにおった“かむろ”の口にいきなり注ぎ込んだ。唇を食いしばり、虚空をつかんでのけぞった“かむろ”の口からは、お歯黒混じりの黒い血が流れた。

音声ガイド:
1人鏡に向かって化粧していた花魁の目に、死んだ“かむろ”の姿がぼんやりと映った。かすかなめいるような声で、「もーし、おいらんえ、お歯黒つきなんしたか」

恐怖心をあおるBGMと儀武さんの迫真の演技で聞く人を引き込む

これが若胡子屋に伝わる「お歯黒伝説」。今もこの2階の壁には、“かむろ”が残した手形が残っているとか…。

実際に伝説の舞台で聞く怪談は、迫真の演技と相まって背筋が寒くなること間違いなし。このような音声ガイドが約1時間も収録されている。

島のお年寄りに聞いた御手洗の歴史や文化の話も

一般社団法人 御手洗デザイン工房・井上明さん:
2本目として、御手洗の昔を知っている住民にインタビューをしていて、それも収録しているという2本立てです。

声優による史跡の説明と、島のお年寄りが語る歴史と文化。ただの解説にとどまらない、新しい観光ガイドの形。御手洗の歴史をより深く感じることができる。

町民の声をもとに御手洗の歴史を学ぶことができる

一般社団法人 御手洗デザイン工房 代表・尾藤慶さん:
古き良き話を想像しながら、歴史の景観や文化に触れていただければと思います。

(テレビ新広島)