長崎県内では、いま医療スタッフや高齢者などから優先的に新型コロナワクチンの接種が進められている。

一方で、優先の対象となっていないのが「訪問介護スタッフ」=「介護ヘルパー」だ。訪問介護の現状を取材した。

介護で「密接」は避けられない

健友会ヘルパーステーション・滝川奈津美さん:
介護の仕事は認知(症)のある利用者もいるので、その方にいくらマスクをしてとお願いしてもしていただけない現状がある。今後、早急にワクチンをヘルパーにも打たせてもらいたいというのが本心です。

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2021年5月、県内の介護事業所などでつくる連合会が開いた会見で、滝川奈津美さんは介護現場が抱える新型コロナウイルス感染への不安や危機感を訴えた。

滝川さんは、訪問介護を行う現役のヘルパー。この日は、病気のため自分で歩くことができない60代男性の介護に訪れた。

消毒に加えて、使い捨てのエプロンを使うなど、新型コロナの感染防止対策を徹底した上で、洗顔やトイレ、着替えなど朝の支度をサポートする。

健友会ヘルパーステーション・滝川奈津美さん:
準備、消毒、検温に時間を取られる。そこまで入れて決められた時間で仕事をこなさないといけないのでバタバタです。

――何分で全部終わらせる?

健友会ヘルパーステーション・滝川奈津美さん:
身体介護の全部で30分。

体が不自由な場合、利用者を抱える必要があり「密接」は避けられない。また、歯磨きなどマスクを外さざるを得ない場面もある。

しかし、県内の介護ヘルパーは医療スタッフなどと違い、ワクチンの優先接種の対象にはなっていない。

健友会ヘルパーステーション・滝川奈津美さん:
施設(介護)系もあちこちでクラスターを起こしているので不安かと思うんですけど、私たちヘルパーも普通の生活環境をまわるので、日々不安を感じながらうつさないように、もらわないように対応していかないといけない。

利用者の生活に欠かせない介護ヘルパーの存在

――優先接種がもしあれば、状況は変わる?

健友会ヘルパーステーション・滝川奈津美さん:
変わりますね。

利用者は介護ヘルパーについて、生きていくために欠かせない存在だと話す。

利用者:
ヘルパーさんがいないと家がまわっていかない。妻も子どもたちも仕事に行ってるし、1人だとできないことが多い。どうしてもヘルパーさんが必要。

健友会ヘルパーステーション・滝川奈津美さん:
もし私たちが陽性になって支援が滞ったとき、誰に負担が来るのかということを考えてもらいたい。ほかのヘルパーや家族、本人もそう。考えるきっかけになれば。

県内の医療機関や介護事業所でつくる連合会が2021年に行った調査によると、新型コロナの感染拡大以降、多くの事業所で介護スタッフが辞めるなど、人材不足が深刻化しているほか、スタッフの精神面にも影響が出ているという。

理由の多くは「自分が新型コロナに感染してしまうのではないか」、また「利用者に感染させてしまうのではないか」という不安だという。

現状を受け、連合会は県などに対して「介護ヘルパーへのワクチンの優先接種」を訴えているほか、医療や介護崩壊を防ぐための財政支援を求めている。

(テレビ長崎)

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