男性が育児休業を取りやすくする育児・介護休業法改正案が今国会で提出されている。

そのような中、厚生労働省の調査で育休制度などを利用しようとした男性の26.2%が職場で「パタハラ」(パタニティハラスメント=育児休業などを理由にした男性への嫌がらせ)を受けていたことが分かった。

出典:厚生労働省(以下図表すべて)
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調査は昨年10月にインターネットで行われ、過去5年間に勤務先で育児に関わる制度を利用しようとした男性労働者(公務員や経営者は除く)500人が回答。

パタハラを受けたと答えた人の割合は企業の規模で開きがあり、最も高かったのが99人以下の企業で31.1%。逆に最も低かったのは1000人以上の企業で21.7%だった。

パタハラされた相手は「上司」が最多

また誰からパタハラを受けたのかという質問では、最も多かった答えが「上司(役員以外)」の66.4%で、幹部(34.4%)、同僚(23.7%)、部下(13.0%)と続いた。

どんなパタハラを受けたのかについては、半数以上が「上司による、制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」と回答。中には少数ながら、降格や解雇・雇い止めされたケースもあった。

パタハラされても「何もしない」理由とは?

そして、パタハラされた後の対応については、「社内の同僚に相談した」「何もしなかった」が同率トップで、「何もしなかった」理由で最も多かった回答は「何をしても解決にならないと思ったから」となった。

なお政府は2015年、20年度までに男性の育児休業取得率を13%とする目標を掲げたが、19年度の調査ではわずか7.48%にとどまっている。

近年は上昇傾向にあるものの、なぜ男性の育休取得率はこんなに低いのだろうか? また実際にパタハラを受けたらどうすればいいのか?

厚生労働省の雇用機会均等課と職業生活両立課の担当者に聞いてみた。

日本ではまだ男性の育児休業が理解されていない

――なぜ男性の育児休業の取得率は低い?

女性は産前・産後休業があるので、育児休業に続く流れが男性に比べてスムーズになっていると思います。男性は、このような意味で女性に比べて休業の機会がありません。

加えて、まだ日本の社会は男性の育児休業に対する職場の理解が少なく、「仕事は男性、家庭は女性」のような性別役割分担意識が残っている部分があり、男性も仕事を家事より優先しているなどの影響があるのでしょう。(職業生活両立課)


――規模が小さな会社でパタハラの割合が高いのはなぜ?

パタハラを含むパワーハラスメントの防止について中小企業は今はまだ努力義務となっております(2022年4月1日から義務化)。ですので、一部の中小企業ではまだ取り組みが進んでいないところもあるのではないでしょうか。(雇用機会均等課)

※労働施策総合推進法で、大企業は2020年6月1日から職場におけるパワハラ対策を義務化。中小企業は2022年3月31日まで努力義務期間とされている。


――ネットでは「育休で突然休まれると困る」「人手に余裕がない」などという声もあるが、どう考えている?

男性の育休だけでなく、男女を問わず病気や交通事故に遭うなど突然仕事を休まざるを得なくなることは、いつ起きてしまうかもしれません。そこで日ごろから業務分担など仕事のやり方を見直して休みやすい環境を作っていくことが必要だと思います。(職業生活両立課)

会社または行政の窓口に相談を

――パタハラで上司や同僚にも相談できないときはどうしたらいい?

パタハラやセクハラ、マタハラなども含めて、会社はハラスメントに対する防止措置をとらなければいけない事になっています。まず事業主はパワハラを行ってはならない方針を明確化して労働者一人一人に周知しなければいけません。

さらに、必ず相談窓口を設けて、これも周知しなければいけません。こうしてハラスメントがあったらすぐ相談できる体制を整備しておかなければいけないことになっています。

ただ、会社の相談窓口にはなかなか相談しにくい場合があるかもしれません。そんな時は、都道府県労働局の雇用環境均等部(室)がハラスメントに関する相談を広く承っていますので、是非ご相談ください。(職業生活両立課)


――どうしたらパタハラが少なくなる?

男性が育休をとることは当然だと思っている人が少ないのかもしれませんが、やはり職場の方々が理解していただくことが必要なのかなと思います。重要なのは、ハラスメントは許されないということです。(職業生活両立課)

画像はイメージ
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当然だが、育児は女性だけがするものではない。今の国会で「男の育休」に関する法改正が可決され、まずは男性の育休取得に対する社会の意識が変わることを期待したい。

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プライムオンライン編集部
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