リモートワーカーの実態とは

新型コロナウイルスの影響もあり、リモートワーク(テレワーク)の普及が進んでいる。ここで浮上しているのが、管理職は部下をどうマネジメントすればいいのか?という問題だろう。

組織人事を研究する「カオナビHRテクノロジー総研」は5月、「毎日リモートワーク」もしくは「週に2~3日出社、その他はリモートワーク」をしている、20~60代の300人に実態調査を行った。(調査形式:インターネット調査。複数の選択肢から、当てはまるものを選択)

そうしたところ、リモートワーカーは通勤時間の削減などをメリットに感じている反面、社内コミュニケーションなどでは不満も感じていたという。

調査結果を見ると、メリットとしては「通勤時間がなくなり、時間のゆとりが持てるようになった」(58.7%)、「通勤や移動が減り、疲労が減った」(48.7%)、「会議などの無駄なコミュニケーションが減った、もしくは減りそう」(31.0%)などと答える人が多かった。
※かっこ内はその選択肢が選ばれた割合

その一方で、不満点としては「社内の人とのちょっとした相談・雑談がしづらい」(43.3%)がトップに。このほかにも「社内の人と会議やディスカッションがしづらい」(30.0%)、「業務や仕事の進捗がわかりづらい」(29.3%)などを指摘する意見が目立った。
※かっこ内はその選択肢が選ばれた割合

「時間的な余裕は生まれたが、業務上の相談などはしづらくなった」「出社しなくても仕事ができる」という、リモートワークの特徴が良くも悪くも反映されていると言えるだろう。

部下がいると苦労を感じやすい

そして、部下がいる人は苦労を感じやすい傾向にもあったという。今回の調査では、リモートワークが働きやすさや生産性にどう影響したかも聞いているが、この回答結果を部下がいる人・いない人で比べると、このような違いが出た。

【Q.リモートワークで働きやすさは変わった?】
・部下あり
働きやすい(40.7%)
どちらでもない(25.3%)
働きづらい(34.0%)

・部下なし
働きやすい(49.3%)
どちらでもない(33.3%)
働きづらい(17.3%)

【Q.リモートワークで生産性は変わった?】
・部下あり
上がった(19.3%)
特に変わらない(36.0%)
下がった(44.7%)

・部下なし
上がった(17.3%)
特に変わらない(51.3%)
下がった(31.3%)

(※数字は小数点第2位以下を四捨五入して計算)

部下がいる人はいない人よりも働きづらく、生産性も下がっていると感じていたのだ。

在宅・遠隔業務の普及により、世間ではリモハラ(リモートハラスメント)という言葉も聞かれるようになった。調査結果を見ると、管理職はリモートワークでの苦労も大きいようだが、その分だけハラスメントをしてしまうリスクがあるのだろうか。

ハラスメント対策の専門企業である「クオレ・シー・キューブ」に聞いた。

過干渉と放任はどちらも危険

――管理職がリモートワークでしてしまう、ハラスメントのリスクは?

物理的な目が届かない場所での業務となるため、個々のマネジメントスタイルがよりストレートに反映されます。マイクロマネジメント(部下に強い監督・干渉をすること)な上司は、電話やメール、ラインなどで細かく指示・確認をしたり、即時の返信を要求するなど、部下をがんじがらめにしてしまう可能性があるでしょう。

一方で放任主義の上司は、連絡や情報共有をせずに業務を丸投げして、部下を放置に近い状態とする可能性があります。過干渉と放任主義、どちらにしても、部下は拘束されて過度な緊張を強いられたり、不安や混乱、孤立感を引き起こすかもしれません。


――なぜ、そのようなトラブルが起きてしまう?

ハラスメントなどのトラブルがいきなり勃発することは考えにくく、相手への配慮の欠如や一方的な思いこみの積み重ねが徐々に関係悪化を招き、我慢の限界を超えて、訴えにつながると考えられます。リモートワークでも日頃の上司-部下の関係は大きく影響するため、この機会を利用してコミュニケーションの基本を見直すことが重要でしょう。

互いの姿が画面上に見えても、リモートワークと直接会うのとでは、全体の空気感や言葉のニュアンスなど、受け取る情報量も違います。思うようにコミュニケーションできずイライラしたり、ストレスを抱えることもあると、自覚することが大切です。
 

対面でないからこそ、ストレスを抱えることもある(画像はイメージ)

管理職は部下をどうマネジメントする?

――管理職は部下をどうマネジメントすればいい?

部下たちの健康状態、業務の進捗を管理することは必要ですが、過干渉になりすぎないように気を付けるべきでしょう。一人一人に業務目標と評価をきちんと説明すること、定例会議で情報共有の時間を設けて、業務が属人化しないようにすることも必要です。いわゆる「報・連・相」についても、どう連絡するかなどのルールを決めておくといいかもしれませんね。


――リモートワークはいつでも業務連絡できるが、そこはどう考えればいい?

リモートワークでも、通常業務時と同じように考えていただいて問題ありません。深夜や早朝、休日といった業務時間外は、メールの開封や返信などの対応を、上司は部下に強制することはできません。上司が連絡を取ること自体、控えるべきだと思われます。ここはルールを明文化して周知徹底するなど、全社員の共通認識にする必要があると思います。
 

業務連絡の共通認識が必要なのかもしれない(画像はイメージ)

みんなに最適な働き方を話し合うべき

――社内コミュニケーションでの注意点は?

リモートワークでは、職場の心理的距離を縮めるのに重要な役割をになっていた“雑談”をすることが難しく、空気を読むことも困難だと思います。そのため、通常業務時よりも上司-部下間の心理的距離が開いていると思われます。

リモートワークの使い方に絶対の正解はなく、先例の蓄積などない現状では、上司は部下と「自分たちにとってどういうリモートワークが最適なのか」ということについて、オープンに話し合うことが求められるのではないでしょうか。

上司が自らの行為を「これはハラスメントになるのだろうか?」とびくびくしながらハラスメント度をはかることに腐心することは、部下との関係性や職場環境にプラスにはならないでしょう。


――実際のリモートワークではどう考えればいい?

例えば、オンライン会議でも、テーマや時間を決めて進める会議と自由に発言する会議を意識的に区別してみる。顔が見えているので、話す前に手をあげる、自分の話が終わったら「~以上です」や「どうぞ!」など、お互いの声が重ならないように配慮することなどができます。

これらを決まりとしてではなく、自分たちのやり方として作っていくことではないでしょうか。全員が工夫しながら経験を積むことで、だんだんとマナー化していくものだと思います。
 

これからの働き方について、話し合う場を設けてみては?(画像はイメージ)

リモートワークの環境下では、管理職が部下に過干渉になってしまったり、逆に放置してしまうこともあるようだ。これまでの関係性を見直し、誰もが能力を発揮できる働き方を編み出すことが求められているのだろう。

顔の見えない状態での業務管理は、管理職にとって簡単ではないだろうが、働きやすい職場とは全員で作り上げるもの。新たな働き方にシフトするチャンスが到来していると捉え、意見を出し合ってみてはいかがだろうか。
 

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