新型コロナウイルスの感染終息が見通せない中、病院の医師よりも前に患者と対峙するのが救急隊。
感染のリスクと闘いながら人の命を救おうと奮闘する姿に密着した。
医師と共に出動する精鋭部隊「高度救急隊」
高度な医療を担う新潟市中央区の新潟市民病院。
その敷地内で病院から飛び出した医師を乗せ、走り出す救急車。

新潟市消防局 高度救急隊・浅井久寿隊長:
1分1秒でも早く、患者さんのもとに到着して、観察・必要な処置をして、病院に搬送する
ここに活動拠点を構えるのは、新潟市消防局の「高度救急隊」。
高度救急隊は一般的な救急搬送に加え、重症が疑われる事案などで医師と出動する精鋭部隊だ。

3隊・24時間体制で活動していて、浅井久寿隊長は、そのうち1つの隊の統率を任されている。
新潟市消防局 高度救急隊・浅井久寿隊長:
アドレナリンの使用期限って大丈夫?
隊員:
使用期限、大丈夫です
新潟市消防局 高度救急隊・浅井久寿隊長:
心肺停止の方には、アドレナリンといった薬を使う。これがすぐ投与できたりというところにつながると思うので、資機材の点検というのは欠かせない

感染リスクと隣り合わせ… 厳戒態勢で臨む救助活動
人命救助のために、1分1秒を争う救急隊。
一方、その活動内容には、変化が見られていた。
指令課から入った出動指令。すると、隊員たちは白い防護服を身につけ始めた。
新潟市消防局 高度救急隊・浅井久寿隊長:
われわれが感染するわけにはいかないので

搬送するのは、新型コロナウイルスの感染者。5月19日時点で、約1,200人の感染者が確認されている新潟市。
新潟市消防局では、これまでに50人以上の感染者を搬送したほか、すべての出動で感染対策を強化している。
しかし、県内のほかの自治体では、消防職員が感染した例もあり、感染リスクとは常に隣合わせだ。
新潟市消防局 高度救急隊統括・渋谷吉克消防司令:
敵が見えない“ウイルス”だということが、一番大きいと思う。隊員の精神的・肉体的な負担が、ちょっと高くなっている状態

今回の出動は、市内の医療機関で入院していた感染者の容体が変わり、市民病院へ搬送するというもの。
隊員:
ここね、苦しくなるよ。ゴーグルの上に貼る
防護服のつなぎ目には、ビニールテープも貼る最大級の警戒体制。

一方、そのころ指令を出した消防局で用意されていたのは、新型コロナウイルス患者専用の救急車。
消防局職員:
こんな感じで、飛沫しないようにしている。感染者専用の車両

消防局では、2020年から救急車3台のうち1台を感染者の搬送専用として用意。
浅井隊長たちは、準備を終えると本部で救急車を乗り換え、指定された医療機関へと急ぐ。
新潟市消防局 高度救急隊・浅井久寿隊長:
今まで何人か、不安そうな表情の人とかもいた。マスク・ゴーグル越しで目しか見えないが、その分、明るい声で「こんにちは、よろしくお願いします」と声かけをするということは、自分自身の中で気をつけている
搬送が終わったあとは、庁舎の前で念入りに消毒。
浅井隊長の顔には、ゴーグルやマスクの痕がくっきりと残っていた。

すると、まだ作業を終えないうちに、別の指令が。
時間と労力がかかる新型コロナウイルス患者への対応。その間に発生した事案は、ほかの部隊が対応しなければならない。

この日の消毒作業は、約2時間かかった。
独り立ちするための最後の試験
雨の日も、風の日も、出動する体力勝負の現場。
そんな隊員の緊張のほぐれる時間が昼食だ。
隊員:
これは、キャベツ・めかぶ・納豆、キムチと鶏肉(を混ぜた)。ちょっとでも筋肉にいい飯を食べたいなと

まさにスタミナ飯!
一方、浅井隊長の昼食は愛妻弁当。
新潟市消防局 高度救急隊・浅井久寿隊長:
現場が入ったりすると、その分(朝食が)遅くなったりとかよくある。やっぱり食べないと、現場で中々、力が出なかったりということもある
こうした忙しい日々の中、浅井隊長から指導を受けていたのは、2020年に救急隊に入った上田菜摘さん。
新潟市消防局・上田菜摘さん:
すごく緊張している
イレギュラーだらけのウイルス禍で、この日、一人前の救急救命士として活動するための最後の試験を迎えた。

試験では、救急搬送における隊長役を実践する。
新潟市消防局・上田菜摘さん:
今ちょっと新型コロナの関係で、皆さんに聞いているんですけど、最近、大勢の方と集まったり…えーっと…発熱があったり、発熱・風邪の初期症状、そういったことはありませんか
戸惑いながらも確実に作業をこなし、試験は合格。
新潟市消防局・上田菜摘さん:
視野を広げて、色んな現場を広く、しっかり見れる救急救命士になりたい

感染症と闘いながら救助にあたる、高度救急隊。
新潟市消防局 高度救急隊・浅井久寿隊長:
早くコロナ禍が収束して、皆さんが元気に生活できる、そんな世の中がまた近いうちに来てほしい
多くの命を救うため、きょうも現場へと向かう。
(NST新潟総合テレビ)