生活が苦しい人たちに食べ物を支給するなどの取り組みを行う団体・「フードバンク」。
このフードバンクが最近、支援活動の範囲を広げ、存在感を示している。背景には長引くコロナ禍の影響があった。

延べ6400人以上に食料支援「フードバンク仙台」

仙台市青葉区八幡にあるフードバンク仙台。
この日、事務所には支援を求める電話が相次いでいた。

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電話の男性:
何とか食うことはできるんだけど、ちょっと難しいなと思って

電話の主は仙台市内に住む60代の男性。コロナ禍でアルバイト先が休業し、収入がゼロになったと窮状を訴える。

フードバンク仙台 川久保尭弘さん:
きょう、食料を発送して、あした宅配便で届くようにしますので

電話の男性:
わかりました

記者:
こういう電話が増えた?

フードバンク仙台 川久保尭弘さん:
そうですね。きょうはむしろ少ないほうで、1日に3、4人から電話が来るときもあります

2020年5月、宮城県内の有志たちが中心となって発足したフードバンク仙台。本来は食べられるのに廃棄されてしまう食品などを企業や個人から募り、必要としている人たちに無償で提供している。

活動開始から間もなく1年。これまでに延べ6400人以上に食べ物を届けてきた。
依頼は増える一方で、ひと月あたり200人ほどだった支援の対象は、長引くコロナ禍の影響で、2021年2月には900人を超えた。

長引くコロナ禍で仕事失い、生活困窮する外国人が急増

こうしたなか、最近とくに増えているのが外国人からの相談。
当初、全体の1割ほどだった外国人からの相談は、2020年秋ごろから急増し、いまでは全体のほぼ半分近くを占めている。コロナによって外国人の労働環境が悪化したためとみられる。

フードバンク仙台 川久保尭弘さん:
日本人より職場での立場が弱く解雇されやすかったり、休業手当を違法に払われないトラブルにも遭いやすいからでは

このような現状を踏まえ、フードバンク仙台では「食料支援にとどまらない」支援活動を新たに始めた。NPO団体と連携し、外国人を公的支援につなげるサポートである。
その活動に協力するのが仙台POSSE。ここではおもに外国人労働者の問題を扱っている。
「日本語がうまくない」、「法律を知らない」などの悩みを持つ外国人をサポートし、休業手当の申請などを紹介している。

POSSE 森進生さん:
解雇をしなくても、給料を支払いながら休ませる仕組みも日本には整っているんですけど、それは労働者側が言って初めて機能するものに近いんですよね。企業側がちゃんと先にやってくれることはないんです

留学のため2019年に来日したネパール人の男性。専門学校で学びながら食品工場でアルバイトをしていたが、2020年10月、新型コロナの影響で仕事を失った。生活に困窮し、フードバンク仙台を頼った。

ネパール人 男性:
コロナのせいで、私だけでなくて、ほかの留学生も困ったんですけど、私はそのあとほかの仕事を探したほうがいいかなと思って、探したけど見つけられなかった

サポートを受けた男性は会社に休業手当を請求。数十万円の手当が入り、滞納していた家賃や学費を支払うことができた

記者:
休業手当が入った?

ネパール人 男性:
よかったね

記者:
休業手当を知らない人も多い?

ネパール人 男性:
知らないと思います

こうした労働面の問題を抱える外国人のために、宮城労働局では中国語やベトナム語など多言語に対応した相談ダイヤルを案内している。

しかし、そうした情報を多くの外国人が知らないため、支援にたどり着けるのはごく一部なのが現実。

ネパール人 男性:
コロナのせいでもっと困った人がいるから、もっと支援は欲しいと思う

記者:
日本で生きるのは大変ですか

ネパール人 男性:
大変ですね

2021年、宮城県内で働く外国人労働者は約1万4000人。
コロナ禍で注目を集めるフードバンク仙台の取り組みは、私たちに新たな支援のあり方を問い掛けている。

(仙台放送)

仙台放送
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